助成金・補助金の利用を検討している企業は、受給要件や申請方法についても検索しているでしょう。しかし、受給できた助成金・補助金が税金の課税対象になるのかどうかはご存じでしょうか。

そこで、この記事では助成金・補助金が税金の課税対象になるのかどうかについてわかりやすく解説します。

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助成金・補助金に税金はかかる?

結論からいうと、助成金や補助金であっても原則、税金はかかります。ただし、課税対象となる税金と非課税の税金があるため、事前に会計処理について理解しておくことが大切です。

税金がかかる理由や課税対象・非課税対象となる税金については、詳しくはのちほど解説します。

所得税・法人税

所得税や法人税は、会計処理で営業外収益扱いされるため、課税対象です。
課税対象となるのは、基本的に「(売上+補助金・助成金)-経費」となる金額です。ただし、個人事業主の場合は非課税扱いとなります。

消費税

助成金・補助金を受給することは、モノやサービスをやり取りするわけではないため、原則として「不課税」です。

ただし経費補填を目的とした助成金・補助金の場合には、消費税分を返還することが必要になることがあります。
例えば、助成金の対象経費を220万円で申請し、助成金が110万円された場合、110万円は消費税の適用外です。しかし110万円のうち10%である10万円は、消費税にあたる部分です。そのため、消費税を返還しなければ助成金・補助金の支給により消費税の還付を受けたと同義になってしまいます。

このように助成金・補助金により消費税を重複支給してしまっていることになるため、消費税の返還が必要になるのです。

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助成金・補助金に税金がかかる理由

助成金・補助金に税金がかかる理由は、「支払った経費や売上の代わり」として支給されるためです。

まず、「支払った経費の代わり」として助成金・補助金を受給した場合です。経費の一部を助成する経費助成の場合に該当します。
本来であれば、支払ったコストは経費となるために利益も減ります。その結果、納める税金も低減します。
もし助成金・補助金に税金がかからなかったら、支払ったコストを経費として計上できず、利益を増加しなければならなくなります。

また、「売上の代わり」として助成金・補助金を受給した場合です。人材雇用・人材育成した場合に助成するなどの場合に該当します。
本来であれば本来の売上と同様に計上する必要があるために税金を支払う必要があるのです。

ただし売上を補填しても利益が出ない場合や、繰越欠損金がある場合には、所得がないために税金はかかりません。

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助成金・補助金が課税対象になる制度

助成金・補助金が課税対象となる制度について解説します。

事業所得などに区分されるもの

事業活動において支給される助成金・補助金は、事業所得に分類されます。
事業者の売上が減少した補填や必要経費の補填を目的とした助成金・補助金が該当します。個人事業主の場合、事業再構築補助金やものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金などが、この区分です。ただし、法人の場合には法人税として課税されます。

ただし、年間の収入よりも経費が上回り、赤字となった場合には課税対象にはなりません。
また、支払賃金などの必要経費を補填する助成金・補助金であれば、支出そのものを必要経費として計上します。

一時所得に区分されるもの

事業活動に関連しない助成金・補助金は、一時所得に区分されます。所得水準が一定以下になった場合に一時的に支給される助成金・補助金が該当します。
現在はすでに終了していますが、持続化給付金やGo Toキャンペーンなどがこの区分です。

ただし、他の一時所得と合算した時に50万円以内であれば、特別控除となり課税対象にはなりません。

雑所得に区分されるもの

事業所得や一時所得に該当しない場合、雑所得に区分されます。
一般的な給与所得者の場合、給与所得以外が年間20万円以下であれば所得税上は確定申告の必要はありません。(ただし、住民税の算出のために確定申告自体は必要です。)

例えば持続化給付金(雑所得者向け)などが挙げられます。

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助成金・補助金が非課税になる制度

助成金・補助金が非課税となる制度について解説します。

支給の根拠となる法令などの規定により、非課税所得とされるもの

支給の根拠となる法令などの規定により、非課税所得とされる助成金・補助金には以下のものがあります。

  • 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金※令和5年5月31日で受付終了
  • 新型コロナウイルス感染症対応休業給付金※令和5年5月31日で受付終了
  • 雇用保険の失業等給付(雇用保険法12条)
  • 生活保護の保護金品(生活保護法57条)
  • 児童(扶養)手当(児童手当法16条、児童扶養手当法25条)
  • 被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法21条)

所得税法の規定により、非課税所得とされるもの

所得税法の規定により、非課税所得とされる助成金・補助金には以下のものがあります。

  • 新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
  • 企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
  • 東京都のベビーシッター利用支援事業の助成
  • 東京都認証保育所の保育料助成金

租税特別措置法が非課税の根拠となるもの

租税特別措置法の規定により、非課税所得とされる助成金・補助金には以下のものがあります。

  • 簡素な給付措置(臨時福祉給付金)(措置法41条の81項1号)
  • 子育て世帯臨時特例給付金(措置法41条の81項2号)※事業終了
  • 年金生活者等支援臨時福祉給付金(措置法41条の81項3号)

助成金・補助金の会計処理方法

助成金・補助金の会計処理方法について解説します。

勘定項目の種類

助成金・補助金は、勘定科目の種類は収益でなく「雑収入」となります。収入の中でも事業活動による売上以外の収益となるためです。

消費税は発生しないため、受給した金額をそのまま帳簿に記入します。

会計処理の具体例

会計処理の具体例として、助成金を100万円受け取った場合には以下の仕訳をします。

借方 金額 貸方 金額
預金 1,000,000円 雑収入 1,000,000円

ただし、助成金・補助金は受給が決定しても、入金されるのは事業実施後でタイムラグがあります。そのため、基本的には以下のように仕訳を2回に分けて行うことが必要です。

まず受給が確定したら「未収入金」として仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額
未収入金 1,000,000円 雑収入 1,000,000円

実際に助成金・補助金が法人口座に振り込まれたら、未収入金を消します。

借方 金額 貸方 金額
預金 1,000,000円 未収入金 1,000,000円

税金の支払いを繰り延べる場合には圧縮記帳がおすすめ

圧縮記帳とは、一定の資産を取得した際に損金計上することで、課税対象の利益にかかる税金の支払いを次年度以降に繰り延べられる制度です。

本来、助成金・補助金の課税額は受給した年度に支払うことが必須です。しかし圧縮記帳により分割して支払えるため、設備投資や人材獲得などを行った年度の税負担を軽減できます。

助成金・補助金の会計処理の方法や注意点は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:助成金・補助金の会計処理とは?勘定科目や会計時の注意点について解説

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まとめ

この記事では、助成金・補助金が税金になるのかどうかや課税・非課税となる制度について解説しました。

助成金・補助金は返済不要で調達できる資金である一方、税金として課税されることが基本です。しかし中には非課税となる制度もあるため、細かな点まで事前に確認するとスムーズな申請につながります。

税金以外にも「自社に適した助成金がどれかわからない」「助成金の要件や申請方法に関するノウハウがない」という企業の方は、プロのコンサルに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料診断を試してみてはいかがでしょうか。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。