国や地方自治体などが実施する助成金・補助金を利用する組織が増えています。しかし、助成金・補助金を申請し、受給が決定したあとの懸念事項に会計処理があるでしょう。通常の会計とは異なる処理が求められるため、経理担当者の方は確認しておくことがおすすめです。

そこで、この記事では助成金・補助金の会計処理方法や注意点について簡単に解説します。

助成金・補助金とは

まず会計処理について解説する前に、助成金・補助金の基本的な概要を理解しましょう。

助成金とは

助成金は、厚生労働省が主導し事業者に対して実施している制度で、原則、返済不要で支給されるお金です。助成金を申請するには、各助成金に設定されている要件を満たす必要があります。

助成金の詳細については以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

補助金とは

補助金は、経済産業省が主導し事業者に対して実施している制度で、原則、返済不要で支給される制度です。助成金のように要件を満たすだけでなく、審査を通過し、採択されることで受給できます。

助成金・補助金は、資金調達として多くの事業主に利用されている制度です。

関連記事:補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

混同しやすい協賛金とは

協賛金とは、企業が展示会、花火大会、スポーツイベントなどのイベントにおいて支払うお金のことです。

協賛金を支払う目的は、広告宣伝や特定の取引先との関係性を保つことなどが挙げられます。そのため、助成金・補助金とはまったく異なるものになります。

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助成金・補助金の会計での勘定科目

助成金・補助金を受け取った法人や個人事業主が行わなければならない会計での処理方法について解説します。

勘定科目の種類

助成金・補助金のどちらも、勘定科目の種類は「雑収入」となります。収入の中でも、事業活動による売上以外の収益となるためです。
また、消費税は発生しないため、受給した金額をそのまま帳簿に記入してください。

具体的な処理方法

例えば、助成金を50万円受け取った場合には以下の仕訳となります。

借方 金額 貸方 金額
預金 500,000円 雑収入 500,000円

しかし、助成金・補助金は受給が決定してもすぐに入金されるわけではありません。基本的には以下のように仕訳を2回に分けて行う必要があるため、先ほどの例で解説します。

まず、受給が確定したら「未収入金」として仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額
未収入金 500,000円 雑収入 500,000円

その後、実際に助成金・補助金が法人口座に振り込まれたら、未収入金を消してください。

借方 金額 貸方 金額
預金 500,000円 未収入金 500,000円

施設補助金に該当した場合には圧縮記帳の活用を

助成金・補助金を利用して生産機械や装置といった固定資産を購入した場合、施設補助金に該当し、圧縮記帳での会計処理が許されています。
「圧縮記帳」とは、課税対象の利益にかかる税金の支払いを、次年度以降に繰り延べられる制度です。
本来であれば、助成金・補助金にかかる課税は、受け取った年度に一度に課税する必要がありますが、圧縮記帳を行うことで、次年度以降に分けた支払いが可能になります。これにより、購入初年度の税負担を抑えられます。

税額の合計額は基本的に変わりませんが、購入初年度にかかる税額を抑えられるため、余裕をもって助成金・補助金を活用できるでしょう。

ただし、上限額が以下のように定められている点は注意してください。
「助成金・補助金で購入した固定資産の本来の購入額」×「(返還不要な)助成金・補助金の金額」÷「実際に固定資産の購入に使った金額」

例えば、以下の場合の圧縮記帳の会計処理についてみていきましょう。

  • 受け取った補助金:100万円
  • 生産機械の本来の金額:200万円

まず、補助金の受給が確定し、法人口座に振り込まれたら、以下のように仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額
預金 1,000,000円 雑収入 1,000,000円

次に、生産機械を購入したら、以下のように仕訳を行います。

借方 金額 貸方 金額
生産機械 2,000,000円 預金 2,000,000円

また、補助金で受給した100万円を圧縮記帳の「圧縮損」として仕訳します。

借方 金額 貸方 金額
圧縮損 1,000,000円 生産機械 1,000,000円

決算処理の際に、機械の耐用年数にあわせて、減価償却費を計上してください。会計処理を適切に行い、助成金・補助金を有効利用しましょう。

Check!

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助成金・補助金の会計処理での注意点

ここからは助成金・補助金を会計処理するうえでの注意点を解説します。

実際の入金まで時間がかかる

助成金・補助金は、受給が確定してから実際に口座に振り込まれるまでに時間がかかります。ほとんどの場合、数ヶ月はかかるため、年度をまたぐ可能性もあるでしょう。会計処理を行う際には、2度にわたり処理を行う必要があることを覚えておいてください。

助成金・補助金を利用する予定の経費の支払いが先になるため、キャッシュフローにおいても注意が必要となります。

法人税の課税対象になるが、消費税の課税対象ではない

助成金・補助金は法人税の課税対象ですが、消費税の課税対象ではないことに注意が必要です。
消費税の仕訳を行う必要がありません。それは、資産の譲渡に該当せず、事業の売上で得たお金とは異なるためです。
一方、法人税の課税対象なのは、法人税法第22条で「原則として資本取引以外のものにかかる収益はすべて益金の額に算入する」とあるように、益金扱いであるためです。

協賛金とは区別が必要

前述したように協賛金は、助成金・補助金とは異なるものであるため、会計処理においても区別する必要があります。

協賛金の勘定科目は、目的に応じて異なる仕訳を行います。基本的に、以下のようになっています。

目的 勘定項目
不特定多数に向けて、自社を宣伝するために協賛金を支払った場合 広告宣伝費
ある特定の取引先との関係性を保つために協賛金を支払った場合 交際費
地域住民との良好な関係性を築くために協賛金を支払った場合 寄付金
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まとめ

助成金・補助金を受け取った際には、適切な会計処理を行い、有効に活用しましょう。そのためには、まず助成金・補助金について理解することが必要です。

せっかく受け取った助成金・補助金が負担にならないよう、圧縮記帳を利用するなど、工夫して対応しましょう。
また、これから助成金の申請を検討される場合には、以下から一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。