事業を継続していく中で、設備の老朽化や業務上の必要性などにより、設備の新調が必要になることもあるでしょう。

しかし、設備によっては高額の費用がかかることから、資金の捻出にお悩みの企業の方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では設備投資を行う際にぜひ利用したい助成金・補助金や税制優遇制度と活用事例をまとめました。ぜひ参考にしてください。

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設備投資とは

設備投資とは、企業が事業の維持・発展のために必要な設備の導入や購入に資金を投じることです。ここでは、まず「どのようなモノが設備に含まれるのか」、また「設備投資するメリット」について解説します。

「設備」の対象範囲とは

設備は、有形固定資産と無形固定資産に分類されます。
有形固定資産とは、「機械や備品、車両などの他、事業に必要な土地や車、エアコンなど」です。一方、無形固定資産とは、「ソフトウェアや商標権、特許など」を指します。

基本的に事業活動にプラスの影響を与える設備であれば、設備の対象範囲に含まれます。

設備投資のメリット

設備投資することで、以下の2つの機会拡大と2つのリスク回避が期待できます。

【機会拡大】

  • 利益の向上
  • 事業規模の拡大

現在の設備よりも、性能が優れている設備を導入することで、業務効率化が期待できます。スピーディーで質の高い製品づくりや、無駄な人件費を減らし、適正な人員配置が可能になるでしょう。こういった効果により、生産性が向上し、利益の向上が見込めるのです。

さらに、同じ労力でこれまで以上の生産高につながることで、事業規模の拡大に取り組めるでしょう。

【リスク回避】

  • 故障やシステム障害
  • 業務効率の低下

古い設備の使用を続けることで、老朽化による故障やシステム障害、さらには業務効率の低下といったリスクにつながります。設備投資により、こうしたリスクを回避できるでしょう。

こうしたメリットを受けられるため、設備投資は、事業継続・発展において欠かせない投資といえます。

以下の記事で、リモートワーク導入の場合に利用できる助成金・補助金もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:【2023最新】リモートワーク(テレワーク)向けの助成金・補助金一覧を紹介!

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設備投資の資金調達に活用したい助成金・補助金とは

設備投資には、場合によっては高額な費用がかかります。そのため、費用の問題でなかなか設備投資に踏み切れないという企業もあるかもしれません。
そこで、ここでは資金調達の手段の一つである、助成金・補助金について解説します。

助成金とは

助成金とは、「会社経営者・事業主を支援するために、厚生労働省や地方自治体が助成するお金」のことです。助成金ごとの受給要件を満たし、法令遵守していれば、申請するだけで基本的に受給できます。

補助金とは

補助金とは、「経済産業省や地方自治体が、特定の取り組みにかかる費用を補助するためのお金」のことです。補助金を受給するためには、受給要件を満たすだけでなく、審査を受け、採択されることが必要です。

その他にもさまざまな違いがあるため、詳細については以下の記事をご覧ください。
関連記事助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!
関連記事補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

設備投資に利用できる助成金・補助金一覧

ここでは、設備投資に利用できる助成金を紹介します。最新情報が更新されている場合があるため、申請前には掲載している各ホームページをご覧ください。

業務改善助成金

「業務改善助成金」とは、生産性向上にける設備投資など(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)とともに、基準以上に事業場内最低賃金の引き上げを実施した場合、その設備投資などにかかった費用の一部を支援する制度です。

以下の要件をすべて満たしている事業者が受給対象となります。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

【助成金額・助成率】
助成率は、申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって割合が異なり、以下のようになっています。

900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)
950円以上 3/4(4/5)

以下の場合、助成率を引き上げられる場合があります。

  • 3/4より高い助成率を受けられる場合
    申請事業場の事業場内最低賃金が900円未満、900円以上950円未満のいずれか
  • 生産性要件に該当した場合は、( )内の助成率が適用される

業務改善助成金の詳細は以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:【2023年最新】業務改善助成金とは?概要や目的、助成額を徹底解説

働き方改革推進助成金

「働き方改革推進助成金」とは、生産性を高めつつ、労働時間設定の改善などを実現するために、中小企業・小規模事業者や、傘下企業を支援する事業主団体の取り組みに対する支援制度です。

以下の4つのコースがあり、それぞれ助成金額・助成率は異なります。

  • 業務別課題対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 団体推進コース

ここでは業務別課題対応コースの概要や助成金額・助成率を紹介します。

業務別課題対応コース

2024年4月1日から建設業、運送業、病院など、砂糖製造業に時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。それに伴い、生産性を向上させつつ、働き方改革推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するコースです。

【助成金額・助成率】
取り組みにかかった経費の一部を、成果目標の達成状況に応じて、以下のいずれか低い方の金額が支給します。

  • 成果目標1から6の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4※
  • ※常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取り組みで6~9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

コースの詳細や最新情報については、「厚生労働省:労働時間等の設定の改善」にある「働き方改革推進支援助成金」の項目をご覧ください。また、以下の記事でも詳細について解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:「働き方改革推進支援助成金」とは?基本情報や2023年の実施予定を徹底解説!

ものづくり補助金

この制度は、中小企業・小規模事業者等が、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などの制度変更における対応への支援制度です。中小企業・小規模事業者などが取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善のための設備投資などが支援対象となっています。

以下の3タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。

  • 省力化(オーダーメイド枠)
  • 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型)
  • グローバル枠

ここでは省力化(オーダーメイド枠)の概要と補助金額・補助率を紹介します。

省力化(オーダーメイド枠)枠

人手不足の解消のために、デジタル技術を活用した専用設備(オーダーメイド設備)を導入し、生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資などを支援するコースです。

【補助金額・補助率】

要件
補助金額 従業員数5人以下 :100万円~750万円
6~20人 :100万円~1,500万円
21~50人 :100万円~3,000万円
51~99人 :100万円~5,000万円
100人以上:100万円~8,000万円
補助率 補助金額が1,500万円まで 1,500万円を超える部分
1/2
※小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:2/3
1/3
※小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:1/3

最新情報やより詳細な情報は以下の公式ホームページをご覧ください。
参考:ものづくり補助事業公式ホームページ「ものづくり補助金総合サイト」

IT導入補助金

この制度は、中小企業・小規模事業者等が、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。

以下の5タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

ここでは、通常枠の概要と補助金額・補助率を紹介します。

通常枠

自社の課題にあったITツールを導入し、その経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者などの業務効率化・売上アップのサポートを目指すコースです。

【補助金額・補助率】

補助金額 補助率
1プロセス以上:5万円以上150万円未満
4プロセス以上:150万円以上450万円以下
1/2以内

詳細や最新情報については、「IT導入補助金2024」のホームページをご覧ください。

小規模事業者持続化補助金

この制度は、小規模事業者が作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づき、地道な販路開拓などへの取り組みや、あわせて行う業務効率化・生産性向の実現を支援するための制度です。

以下の5タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なります。

  • 通常枠
  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠

ここでは、通常枠の概要と補助金額・補助率を紹介します。

通常枠

自社の経営を見直す経営計画にもとづき、販路開拓などを行う取り組みを支援するコースです。

【補助金額・補助率】

要件
補助率 2/3
補助上限 50万円
インボイス特例 50万円

詳細や最新情報については、「商工会議所地区小規模事業者持続化補助金(一般型)」をご覧ください。また、以下の記事でも詳細について解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:
小規模事業者持続化補助金で販路を開拓!開業後の広告宣伝費にも

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)

「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」とは、経営者の交代や事業再編・事業統合などによって事業承継を行った中小企業者が、事業承継を契機として経営革新にかかる取り組みを行う場合に、設備投資や販路開拓等にかかる取り組み費用の一部を補助する事業です。

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)には以下の3つの類型があります。

  • 創業支援類型(Ⅰ型)
  • 経営者交代類型(Ⅱ型)
  • M&A類型(Ⅲ型)

ここでは創業支援類型(Ⅰ型)の概要と、それぞれの類型の補助率や補助上限額などを紹介します。

創業支援類型(Ⅰ型)

創業支援類型では、他の事業者から株式譲渡や事業譲渡などにより、経営資源(設備、従業員、顧客など)を引き継いで創業した場合に対象となるコースです。

【補助金額・補助率】

類型 補助率 補助下限額 補助上限額 上乗せ額
(廃業費)
創業支援類型(Ⅰ型) 2/3または1/2 100万円 600万円以内 +150万円以内
経営者交代類型(Ⅱ型)
M&A類型(Ⅲ型)

詳細や最新情報については「事業承継・引継ぎ補助金:経営革新事業とは」をご覧ください。

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地方自治体による助成金・補助金・融資制度

各地方自治体が主導している助成金・補助金の一部を紹介します。

【東京都】躍進的な事業推進のための設備投資支援事業

東京都では、中小企業向けに躍進的な事業推進のための設備投資支援事業を実施しています。
DX・イノベーションの推進、競争力の強化、後継者による新たな取り組みに必要となる機械設備などを導入するための経費の一部を助成する制度です。

助成率や助成限度額は、助成対象となる事業内容により異なります。詳細や最新情報は公益財団法人東京都中小企業振興公社のホームページをご覧ください。

【大阪府】大阪市設備投資応援融資

大阪府大阪市では、大阪市内の中小企業を対象に、大阪市設備投資応援融資を実施しています。
経営基盤の強化に必要な設備を導入するための設備資金を、大阪信用保証協会の保証を付けて、希望する金融機関を通じて融資する制度です。

利用資格や融資条件などの詳細や最新情報は、大阪市の公式ホームページをご覧ください。

【愛知県】小規模企業経営基盤強化設備投資補助金

愛知県名古屋市では、名古屋市内で営利目的の事業を営む小規模企業を対象に、小規模企業経営基盤強化設備投資補助金を実施しています。
市内の事業所に新たに設置する機械設備等を取得する場合に、その経費の一部を助成する制度です。

要件や補助率・補助限度額などの詳細や最新情報は、名古屋市の公式ホームページをご覧ください。

【中小企業向け】設備投資には税制優遇制度の活用も

中小企業が設備投資をする際に活用できる税制優遇制度もあります。ここでは、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制について解説します。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制とは、中小企業や個人事業主などが機械やソフトウェアを導入した際に、取得価額の30%の特別償却または7%の税制控除の適用を受けられる制度です。
※税額控除は資本金3,000万円以下の法人、個人事業主のみ受けられます。

対象設備には、主に以下のものが挙げられます。

  • 機械及び装置(1台160万円以上)
  • 測定工具及び検査工具(1台120万円以上または1台30万円以上かつ複数合計120万円以上)
  • 一定のソフトウェア(ソフトウェアが70万円以上または複数合計70万円以上)
  • 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
  • 内航船舶(取得価格の75%が対象)

中小企業投資促進税制の詳細は、中小企業庁のホームページをご覧ください。

中小企業経営強化税制

経営力向上計画の認定を受けた事業者は、計画実行のための支援措置の一つとして中小企業経営強化税制を受けられます。
中小企業経営強化税制とは、経営力向上計画に基づいて一定の設備を導入した場合に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用できる制度です。

中小企業経営強化税制の詳細は、中小企業庁のホームページをご覧ください。

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助成金・補助金を利用して設備投資を行った事例

各助成金・補助金を利用して設備投資を行った事例を紹介します。

業務改善助成金

業務改善助成金を使った事例として、茨城県にあるA社の事例を紹介します。A社の概要は以下のようになります。

事業場の業種 プラスチックの加工製造業
事業場の従業員数 10名
助成前の事業場内最低賃金 時給750円
助成後の事業場内最低賃金 時給800円
改善に要した費用 1,400万円
助成額 100万円

【業務改善の計画】

  • 従来の設備の問題点:熟練者でないと機械トラブルが発生しやすく、機械オペレータを熟練者以外に配置できなかった
  • 導入した加工設備・製品空送回収設備:熟練者以外でも操作できるため、人的配置の制約を受けずに一定量を安定的に加工できる

【業務改善の成果】
新しい設備を導入したことで生産性が向上し、一人当たりの売上が増加しました。それにより、賃金の引き上げが可能になり、若い従業員の労働意欲が向上しました。

参考:茨城労働局労働基準部賃金室「業務改善助成金活用事例集」

IT導入補助金

IT導入補助金を使った事例として、山梨県にあるB社の事例を紹介します。B社の概要は以下のようになります。

事業場の業種 林業
事業場の従業員数 13名
導入したツール 3D GISツール
(森林の地理データをカメラドローンにより取得・解析するなどのソフト)

【抱えていた課題】
林業であることから、利益の確保が容易ではないことが課題でした。現状を打破するために先進技術を取り入れたいと考えていたものの、IT投資に踏み切ることができない脆弱な経営状態だったため、補助金を利用しました。

【ツール導入の成果】
森林調査人員が約8割減少し、調査にかかる時間やコストの削減も実現しました。また、視覚的にわかりやすい3Dデータを活用し、魅力的な提案が可能になりました。

参考:IT導入補助金2023「ITツール活用事例」

ものづくり補助金

ものづくり補助金を使った事例として、京都府にあるC社の事例を紹介します。C社は2度ものづくり補助金を申請しており、その概要は以下のようになります。

事業場の業種 印刷業
導入したツール ①4色印刷機
②印刷検査機

【抱えていた課題】
2度目の申請においては、もともと一色・二色刷を得意としており、多色刷は弱点でした。そのため、顧客が決まってしまい、販路開拓できずにいました。

2度目の申請時の課題は、医薬品の効能書印刷において、印刷ミスは人命にかかわり許されないものであるため、印刷物チェック検査に多くの時間と労力負荷がかかっていたことです。

【ツール導入の成果】
1度目の申請では、従来は引き受けられなかった業務の受注、新たな顧客開拓につながりました。また、印刷機導入とともに従来機との間に社内ネットワークを構築したことで、生産性の向上やコストの低減も実現できています。

2度目の申請においては、印刷物検査機によりチェック検査の工程作業が自動化されたことで、かかっていた労力や時間を大幅に改善できました。また、印刷ミスを防ぐという点でも顧客からの信頼向上も得ることにつながっています。

参考:全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス補助金成果活用グッドプラクティス集」

まとめ

設備投資の導入に利用できる助成金・補助金をご紹介しました。
助成金・補助金はどちらも返金不要な資金調達方法になるため、活用することをおすすめします。

そこで、助成金・補助金の申請を検討している企業の方は、一度無料診断を試してみてはいかがでしょうか。自社で受給可能な助成金をすぐに知ることができます。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。