日本では少子高齢化や育児、介護の負担による労働人口の減少が問題になっています。そんななか、政府が主導で進めているのが働き方改革です。

働き方改革は、日本の企業の低い労働生産性の是正や固定概念化された労働に対する考え方にメスを入れ、多様な労働形態に国全体として適合していこうと随時改革が進められています。
しかし、この改革を進めるためにはどうしても直接の雇用主である事業主に動いてもらうことが必要です。このため、厚生労働省は働き方改革を促進するために助成金制度を設けています。

働き方改革は進めなければならないのか

多くの事業主は、「働き方改革」と聞いて良いイメージは持たないかもしれません。

  • 多様な労働形態を認めるということは、それだけ管理が煩雑になるのではないか
  • 非正規雇用者の賃金が上がることで人件費が増加するのではないか
  • 残業の規制が厳しくなって、業績が悪化するのではないか

このような漠然とした不安を抱えている事業主の皆様も多いかもしれません。しかしこの働き方改革は良い機会かもしれません。日本の労働者はある研究によると世界第4位の質を持ちます。一方、その労働者を発展途上国以下の最低賃金で残業をさせることができる―—場合によっては、サービス残業を甘んじて受け入れる労働者を使役する企業は、先進国最下位の労働生産性を20年間継続しています。

何が言いたいかというと、今までの管理方法では世界の名だたる企業に勝てず、マイナス成長を続けるだけになってしまうのです。働き方改革は、オールドファッションな日本的経営を是正し、企業が正しく労働者を管理できるように推進するものでもあります。

また、スキルを持つ労働者は「より豊かな生活をするために、労働環境の悪い企業は切り捨てる」といった思考を持つようになってきています。——このような時節ですから、労働者にとってより良い労働環境を整え、いち早く「多様な労働ニーズ」に適合させることで優秀な人材を採用し定着させることができます。労働者にとって働きやすい環境整備こそが企業の業績の発展に繋がると考えることができるでしょう。
つまり「いずれやらなければ生き残れないもの」を政府の支援を受けながら行うことができるのです。さて、以下では政府の支援という名の助成金についていくつか活用できるものをピックアップしてご紹介していきます。

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働き方改革で活用可能な助成金

助成金には、厚生労働省から支給されるものと自治体から支給されるものがありますが、ここでは主に厚生労働省から支給される助成金についてご紹介していきます。各自治体から支給されるものについては、別記事でまとめてご紹介していきますので、是非そちらも合わせてチェックしてみてください。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、働き方改革の目玉である「同一労働同一賃金」を促進する助成金です。日本では正規雇用と非正規雇用の格差が大きく、このため自由な働き方ができないような環境になっています。

どういうことかというと、正規雇用では普通8時間労働が適用されることになります。このため、親の介護をしながら、育児をしながら、病気の治療をしながら労働することがとても難しいのです。また、若者の多くは非正規雇用として不安定な生活を余儀なくされています。

こういった背景を是正するためにあるのがキャリアアップ助成金です。具体的な内容としては、非正規雇用の労働者を無期雇用や正社員に転換することで1名あたり最大72万円の助成金を支給するというものです。キャリアアップ助成金はいくつかのコースに分かれており、契約形態を転換するコース、非正規雇用者にも健康診断を受診させるコース、賃金規定を正規非正規問わずに共通化させる(同一労働同一賃金)コース、非正規雇用者にも時給以外の手当を与えるコースなど様々です。

事業所単位で最大20名まで申請することが可能で、一人あたり最大72万円ですから、1事業所で最大1,440万円という大盤振る舞い。「同一労働同一賃金」を真っ先に進めたいという政府の意向が垣間見えます。

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、労働者に休暇を与えたり女性の活躍を推進するための制度を整えたりした企業に支給される助成金です。

  • 男性が育児休暇を取得できるようにする制度
  • 介護休業や介護時の勤務時間短縮などの制度
  • 育休取得・復帰がしやすいような制度
  • 育児、介護によって退職した者を再雇用する制度
  • 女性が活躍しやすい制度
  • 事業所内に保育施設を設置する制度

上記を導入した企業に助成金が支給されます。少子化への対策、高齢化への適用には育児、介護と仕事の両立が不可欠です。また、女性の社会進出も積極的に取り組んでいこうという考えのようです。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、労働者を研修やセミナーに参加させることで、その経費や研修時の分の時給の一部を助成するというものです。

少子化は年々進んでおり、労働人口の減少からは目をそらすことはできません。このため、働き手を増やすだけでなく、日本の労働者の質を高めることもとても重要なことです。——とはいえ、事業主視点では「勉強なんて勤務時間外にやってほしい。こっちは給料払っているんだ!」なんて考えてしまいがちです。

セミナーへの参加や研修は労働者の生産性を高めるだけでなく、労働者のモチベーションアップにも繋がる経営の有効的な手段です。労働者は仕事を通して自己成長したいと願う人が多い傾向にあります。起業を志した皆さんは、「プライベートなんて捨てて自己投資することは惜しまない!」という気持ちをお持ちかもしれません。かくいう筆者もそうですが、労働者が皆そうかというと、これは間違い。

「近頃の若者は甘い!」などと言いたい気持ちはわかりますが、しかしそういった労働者が多いという現実を知りながらそこに適応していかない企業は無能呼ばわりされます。——ということで少し横道に逸れましたが、セミナーや研修を行うことが負担だと感じる事業主は、人材開発支援等助成金を活用してみましょう!

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「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

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時間外労働等改善助成金

時間外労働等改善助成金は、2019年4月に導入された働き方改革に取り組んだ中小企業にたいして、実施にかかった費用の一部を助成するという制度です。
5つのコースが用意されており、

○勤務間インターバル導入コース
○職場意識改善コース
○テレワークコース
○時間外労働上限設定コース
○団体推進コース

があります。

受給対象は中小企業で、業種・業態は問われないため利用できる事業主の方は多いでしょう。
コースによって、設定された目標や助成額は異なりますがたとえば、残業時間が「月45時間・年360時間以下」の達成や、週休2日制の導入など職場環境の改善を行うと最大で200万円の受給が可能です。

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まとめ

働き方改革で推進されているものと、助成金というのは密接な関係があります。いずれにせよ、助成金というのは「労働環境を改善するため」であったり、「就職を困難とする求職者や人材不足に陥っている企業を救済する」であったりすることが多いです。

冒頭でも申し上げた通り、働き方改革は進めなければ、労働力を他の企業に取られてしまい事業を継続することが困難になってしまうことも考えられます。余裕がないという事業主の皆様も、この機会に助成金を活用して多様な労働ニーズに適合していくことを検討しましょう。

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弊社担当のご紹介
佐藤亜樹
佐藤亜樹(助成金コンサルタント)
入社7年目。採用コンサルティングを担当後、中小企業の助成金申請のサポートに従事する。2018年からは助成金を活用した働き方改革関連法に対応するノウハウを提供するセミナーを開催するなど、精力的に活動中。