経済損失1.2兆円、何のことかご存じでしょうか?2018年に第一生命経済研究所が発表した資料によると、2017年に生じた出産退職の経済損失は1.2兆円だったそうです。
同データによれば、育休制度を利用して仕事を続けた人は23.7万人。2007年は18.6万人でしたので増えていると考えられます。しかしそれでも大きな経済損失が出ていたことは事実なのです。
育児がしやすい職場環境に整えることで、退職する女性は減り、社内活性化ひいては経済の活発化にもつながるでしょう。では、一体どのように整えればよいのでしょうか?
目次
育児・介護休業法
まず知っておきたいのが育児・介護休業法。育児・介護休業法とは、育児や介護を仕事と両立できるように……つまり、ワークライフバランスにのっとた法のこと。育児に関しては産前産後休業や育児休業などがあり、利用を望む際は雇用者に申し出ることができます。
雇用者は基本、申し出に応じなくてはなりません。またこれら制度利用を理由にした減給や解雇など不利益な扱いをしてはいけないとされています。
この育児・介護休業法は平成29年1月と10月に改正されました。その中から育児に関して抜粋しましょう。
まず、有期契約社員が育児休業を取得する際の条件が緩和されました。これまでは、
- 子どもが1歳になってからも雇用されている
- 過去1年以上働いている
- 雇用契約が休業スタートから9カ月以内に終了しない
という条件だったのです。
しかし緩和により育児休業を取得できる条件が、
- 過去1年以上働いている
- かつ子どもが1歳6カ月になるまで雇用契約がある
といった内容に変わりました。
もう一つは有給と別個取得できる看護休暇の存在。子どもの予防接種や病気などで利用できるものですが、以前は1日単位で年間5日まででした。しかし改正により、半日単位での取得が可能となったのです。
育児がしやすい職場環境はどんなメリットをもたらす?
育児がしやすい職場環境はどんなメリットをもたらすのでしょう?
まずは女性の活躍です。産後復帰もしやすく、育児中も働きやすいとあれば、モチベーションは上がるでしょう。それにより離職する人も減りますし、働きやすさから優秀な人材が入社を希望してくれることも見込めます。
また、ロールモデルと呼ばれる具体的な行動事例となる、つまりお手本の人がいれば、以降の模範となるでしょう。ロールモデルは、「出産や育児があっても仕事が続けられるか」と悩んだ女性の道しるべになるのです。
その他に考えられるのは、全体的な出生率の増加。出生率の低下に歯止めをかけ、未来を担う人材を育てることができるのです。
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実際、どんな職場環境にすればよいのでしょう?そのヒントをまとめます。
働き方を多く用意する
短時間勤務やリモートワーク、サテライトオフィスの利用などが可能となれば、育児の状況に合わせて柔軟に働けますよね。これにより、「離職」という選択肢は減るでしょう。
休みやすい雰囲気づくり
休むと文句を言われる、休暇の申請がしにくい環境はどうでしょうか。育児と仕事の両立は難しいと考え、やがて「離職」を視野に入れてしまいます。人材の損失を防ぐためにも、「休みやすい雰囲気づくり」が必要です。
休暇や休業の取得率の見直し
現在、育児休業や育児休暇はどのくらい取得されているでしょうか?取得率と復帰率を見直すことで、育児と仕事を両立させる職場環境に変えるヒントが見つかります。
また、有給休暇取得率についても合わせて考えておきましょう。2019年4月から、年次有給休暇を5日以上取得するよう義務化されます。義務化に合わせてさまざまな点からの見直しをしておくとよいですね。
企業独自の制度設計
他社事例をもとに、自社の実情に沿った独自の制度を設けるのも一つの手です。これには、託児所サービスや手当などが考えられます。
制度を形骸化させない
どれだけよい制度を設けても、制度をつくった意義を見失っては意味がありません。育児をしている人が悩むことなく利用できるよう、形骸化を防ぐ工夫が必要です。
まとめ
育児がしやすい職場環境作りをすることで、社員にとっても企業にとっても喜ばしいことが増えます。社員は収入を得るだけではなく、育児との両立といったワークライフバランスを叶えることも可能です。それにより企業は優秀な人材を失うことがなくなり、社員の活発化によって業績向上が見込めるのです。
双方にとって喜ばしいこととなる職場環境の整備。いち早く進めてみてはいかがでしょう?