2019年4月から施行される働き方改革関連法ですが、この法律の対象となるのはどのような会社なのでしょうか?
目次
働き方改革関連法の対象とは?
そもそもですが、働き方改革関連法とは、以下の8つの新たに改正される法律のことを言います。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
- じん肺法
- 雇用対策法
- 労働契約法
- 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
この法律の対象となるのは、日本に存在する全て事業者です。つまり、働き方改革関連法の対象は全ての事業者です。
中小企業は2020年から対象となる
全ての事業者が対象の法律とは言っても、一部の法律は2019年の4月から適用されるのは、大企業のみとなっています。――というのも、経営基盤が不安定な中小企業は一定期間の猶予が設けられているのです。ただし2020年からは中小企業もこの働き方改革関連法が全て対象となりますので、予め準備を進めて置かなければならないことには変わりありません。
なお、今回対象となる大企業とは、以下に当てはまらない事業主のことです。
業種 | (A)資本金または出資金の総額 | (B)常時使用する労働者数 |
---|---|---|
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
上記表のA、Bいずれかに当てはまる企業は働き方改革関連法において中小企業と見なされます。
――とはいえ、今回改正される法案に違反すれば当然罰則もありますので、何がどのように変わるのかということは予め知っておいて、早め早めに準備を進めておきましょう。
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今回の働き方改革改正で気をつけておきたいのは、長時間労働が恒常的に行われている職場です。――というのも、働き方改革関連法で改正されるポイントは以下のようなものだからです。
- 長時間労働の是正
- 同一労働同一賃金(非正規労働者の不合理な格差の禁止)
- 脱時間給制度
特に長時間労働の是正に関しては、残業が多い企業が働き方改革法施行後もそのまま継続していると、一発で労働基準法違反で書類送検となる場合もあります。以下で改正内容を詳しくご紹介しますので、チェックしてみてください。
残業時間の上限規制
これまで残業時間は年間最大960時間まで延長することが可能でした。休日労働などを利用することで、事実上制限無しで働かせることができたわけです。今回の働き方改革関連法施行で、労働基準法が改訂され、以下のような上限が設けられることになりました。
- いかなる理由があろうとも年間720時間の時間外労働を超えてはならない
- 休日労働を含めて、月の時間外労働が100時間を超えてはならない
- 休日労働を含む時間外労働は月平均80時間としなければならない
今回の法律改正で月の残業が100時間を超えれば一発で労働基準法違反となりますので、注意してください。平日の残業時間が毎日5時間を越えるような企業は改正労基法に引っかかる恐れがありますので、注意してください。
この残業時間に関する上限規制は、中小企業のみ2020年の4月から施行開始となります。
割増賃金の変更
60時間を越える残業に対しては、通常の残業時間の割増賃金の1.25倍、――つまり、基本給の1.5倍の割増賃金を支払う必要があります。
この割増賃金に関するルールはすでに大企業には適用されていましたが、経営基盤が整いきっていない中小企業への適用は見送られてきました。しかし、今回の働き方改革関連法の施行に伴って、2023年からは中小企業に関しても大企業と同様の割増賃金を支払わなければならないということが決定したのです。
注意しておきたいのはみなし労働制を採用しているような会社です。60時間を越えるみなし労働はそもそも労働基準監督署が認めないと思いますが、60時間を越える労働に関してもしっかり計算して支払わなければ労働基準法違反で書類送検されることになります。
有給休暇取得の義務化
これまで有給休暇は付与までが義務となっており、取得までの縛りはありませんでしたが、働き方改革関連法の施行によって年次有給休暇は5日以上取得することが義務付けられるようになります。
有給休暇を取得させなかったり、取得させたように虚偽の報告をすることは法律違反となりますので、2019年4月以降は全企業にこの法律は適用されますので、必ず有給休暇を取得させましょう。
業務インターバル制度の導入
業務インターバル制度の導入は、前日の終業時間から翌日の始業時間は、少なくとも11時間は空けなければならないという法律です。
11時間というのは、労働者の健康面を保つために必要な時間で、今や国際基準となっているインターバル時間です。
この制度は努力義務とされているため、特に罰則はありません。
違反すれば罰則も
これらの新しく決められた法律にはもちろん罰則があり、例えば以下のように罰金や懲役刑に課せられることになります。
- 時間外労働の超過・・・6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 時間外労働分の割増賃金を支払わなかった・・・6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 有給休暇を取得させなかった・・・6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金
こういった罰則があるものもあるため、変更点に十分に注意して、就業規則の変更など、早めの準備を行っておきましょう。