高年齢労働者の安全と健康の確保を目的とした「エイジフレンドリー補助金」は、設備投資や職場環境の改善にかかる負担の一部が補助される制度です。多くの中小企業に注目されており、特に製造業や建設業など高齢者の従業員比率が高い業種で活用が進んでいます。

しかし、「実際にどんな取組が補助対象になるのか?」「他社は何に補助金を使っているのか?」といった具体的なイメージを持てず、申請に踏み切れない企業も少なくありません。

そこで本記事では、エイジフレンドリー補助金を活用した企業の事例を業種別に紹介しつつ、補助対象となる取り組みや申請時のポイントをわかりやすく解説します。

エイジフレンドリー補助金とは

エイジフレンドリー補助金とは、「高齢者を含む労働者が安心・安全に働ける職場環境を整備するために、事業者が行う取り組みに対して国が費用の一部を補助する制度」です。

令和7年度では、新設コースを含めた4つのコースが設置される予定です。

  • 【新設】エイジフレンドリー総合対策コース
  • 職場環境改善コース
  • 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース
  • コラボヘルスコース

対象は中小企業や個人事業主などで、製造業・建設業・運輸業・福祉業など、高齢者の就業割合が高い業種で多く活用されています。

エイジフレンドリー補助金の各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【令和7年度最新】エイジフレンドリー補助金とは?要件や助成額を解説

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エイジフレンドリー補助金の活用事例5選

ここでは、エイジフレンドリー補助金を活用して職場環境を改善した事例を、厚生労働省千葉労働局「エイジフレンドリーガイドライン」より、5つ紹介します。

【食品製造業】転倒防止の防滑対策を実施

株式会社スウィングベーカリーは、株式会社セブン-イレブン・ジャパン向けパンの製造及び販売を行っている食品製造会社です。

エイジフレンドリー補助金を活用した取り組みを、以下にまとめました。

労働者数
(申請時点)
206人(高年齢労働者は内57人)
実施した対策 器具洗浄室のステンレス製の床を取り外し、防滑性能の高いウレタン塗床材を施工した。
対策のきっかけ 製造時に使用した器具を洗浄する「器具洗浄室」内で、労働者が滑って転倒し、骨折する労働災害が発生したため。
対策の成果
  • 器具洗浄室の床面が滑りにくくなり、転倒災害やヒヤリハットがなくなった。
  • 労働者から床がキレイといった声もあり、快適に仕事に取り組める環境になった。

【倉庫業】3つの対策で安全性を向上

有限会社日本クオリティセンターは、アパレル物流に関わる倉庫業を営む会社です。複数ある拠点のうち、本社センターでエイジフレンドリー補助金を活用しました。

その取り組み内容を、以下にまとめました。

労働者数
(申請時点)
124人(高年齢労働者は内27人)
実施した対策 以下の3つの取り組みを実施した。

  • 転倒・墜落災害防止対策:作業通路の段差を解消するために、スロープを導入
  • 腰痛予防対策:荷捌き作業の簡略化や作業員の負担軽減のために、ハンドパレットトラック・パワーアシストスーツ購入
  • 交通災害防止対策:社用車に急発進防止装置の導入
対策のきっかけ 高年齢労働者が、仕事中にケガをしたり、ケガをしそうになったりしているのを目の当たりにして、対策の必要性を感じたため。
対策の成果
  • 転倒・墜落災害防止対策:労働者からの要望をもとに導入したため、感謝の声を多くもらえている。
  • 腰痛予防対策:作業時間の短縮や、重い荷物の持ち運びの際に身体への負担が大幅に減ったことを実感できている。
  • 交通災害防止対策:社用車の急発進防止装置は、万が一の場合の保険になるため、導入して良かった。

【スポーツ施設提供業】空調服の購入で熱中症防止を推進

株式会社朝日ターフメンテナンスは、ゴルフ場の芝生管理(グリーンキーパー)を屋外で行っている会社です。

エイジフレンドリー補助金を活用した取り組みを、以下にまとめました。

労働者数
(申請時点)
79人(高年齢労働者は内34人)
実施した対策 熱中症予防のために、空調服を導入した。
対策のきっかけ 熱中症予防のための取り組みをすでに行っているものの、空調服も着用すれば、より熱中症予防に効果的だと感じたため。
また、過去に熱中症になって従業員が倒れたこともきっかけとなった。
対策の成果 空調服を着用する前と比較すると、「涼しさがまったく違う」という意見が多い。猛暑日には、冷却タオルなどを併用するという工夫も自分たちで始めてより熱中症リスクを低減できるようにしている。

【その他の業種】現場作業員の体調管理を実現

株式会社東京湾横断道路サービスは、高速道路のサービスエリア(海ほたる)の清掃を行う会社です。

エイジフレンドリー補助金を活用した取り組みを、以下にまとめました。

労働者数
(申請時点)
95人(高年齢労働者は内15人)
実施した対策 熱中症予防のために、ウェアラブルコネクト基本パッケージ(スマートウォッチ、警告ランプ、ソーラー式ビーコン)を導入した。
対策のきっかけ 高速道路のサービスエリア(海ほたる)で働く清掃作業員の熱中症初期状態を速やかに把握するため。
対策の成果 ビーコンにより、清掃作業員の位置情報をより正確に把握できるようになった。

【社会福祉業】スタッフの重労働を低減

医療法人社団昭桜会桜台デイサービスセンターは、高齢者のデイサービスやリハビリなどを行う社会福祉施設です。

エイジフレンドリー補助金を活用した取り組みを、以下にまとめました。

労働者数
(申請時点)
20人(高年齢労働者は内9人)
実施した対策 入浴介助時の腰痛予防のために、入浴用リフトを導入した。
対策のきっかけ 入浴補助を3人で行う必要があるほど、重労働であったため。
対策の成果 利用者を抱え上げる必要がなくあり、スタッフの負担軽減や腰痛防止につながっている。
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エイジフレンドリー補助金の採択事例に共通する成功のポイント

エイジフレンドリー補助金の採択事例に共通する成功のポイントを解説します。

高齢労働者の声や体力を反映した職場改善

採択事例の多くは、高齢労働者自身の意見や作業負担を的確に反映しています。
例えば、「腰への負担が大きい」という声から入浴用リフトを導入したり、「台車で荷物を持ち運びする際に、入口の段差が危ない」という声からスロープを設置したりするなど、現場の実情に即した改善が行われています。

現場ヒアリングやアンケートを通じてニーズを明確化し、その解決策を補助事業として提示することが採択率向上につながります。

実施効果の「見える化」が可能

補助事業の効果を定量的に示すことで、事業の効果を「見える化」することが重要です。
例えば、事故件数やヒヤリハットの減少率、作業効率の改善度合い、休業日数の減少など、数値で成果を示せる計画は高く評価されます。

また、導入予定の機器の写真や動画、比較表などを用いてビフォーアフターを視覚的に伝えることで、審査側にも改善効果が直感的に理解されやすくなります。

安全衛生管理体制の確立

設備や機器を導入するだけでなく、従業員を巻き込んで活用するための安全衛生管理体制を整備できているかどうかは重要な評価ポイントです。

例えば、定期的な安全衛生教育やマニュアル・手順書の整備、責任者の明確化など、運用を継続できる体制づくりが採択事例に共通しています。「設備導入計画+運用管理」を計画に組み込むことで、審査での評価を高めます。

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エイジフレンドリー補助金の申請時に押さえるべき手順・準備書類

ここでは、エイジフレンドリー補助金の申請時に押さえるべき手順・準備書類について解説します。

申請の流れ・必要な準備書類

エイジフレンドリー補助金の基本的な申請の流れや必要書類をまとめました。ただし、申請するコースによって異なる部分もあるため、詳しくは公募要領を確認してください。

  1. エイジフレンドリー補助金事務センターから、交付申請書類をダウンロードしたのち、入力・提出する
  2. 審査に採択され、交付決定通知が行われる
  3. 事業を実施する(導入機器の発注や工事の施工など)
  4. 事業完了後、「実績報告書及び精算払請求書」などの支払い請求に関する書類を提出する
  5. 書類を確認後、補助金が交付される

【主な必要書類】

  • エイジフレンドリー補助金交付申請書
  • 実施計画書
  • 誓約及び申立書
  • 高年齢労働者名簿
  • 対象経費内訳書
  • 労働保険申告書
  • 労働保険領収書
  • 見積書

申請にはコンサルタントの活用を

エイジフレンドリー補助金に採択されるには、「事業内容が職場環境の改善につながるか」「実施により、どのような効果が得られるか」を適切に申請書類に落とし込むノウハウが求められます。

そのため、はじめて補助金を申請する場合や補助金に精通した人材がいない場合などには、専門知識を持つコンサルタントを活用することがおすすめです。コンサルタントを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 採択の可能性が高まる
  • 申請書類の不備や要件漏れを防ぎ、確実な申請が可能
  • 審査担当者に伝わりやすい表現・構成で申請書を作成できる
  • 導入設備の選定や効果測定方法の提案が受けられる
  • 申請にかかる手間や時間を削減できる

補助金コンサルタントの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連性:助成金・補助金はコンサルに依頼すべき?費用相場や選び方を解説

まとめ

この記事では、エイジフレンドリー補助金の採択事例やそれぞれの事例に共通の成功ポイントを解説しました。

エイジフレンドリー補助金は規模・業種を問わず、さまざまな企業に活用されている制度です。現状の課題を分析し、高齢労働者の声を集めたうえで、安全で働きやすい職場づくりにつながる機器・設備の導入に役立てましょう。

また、エイジフレンドリー補助金の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントに申請サポートを依頼することがおすすめです。採択される確率を高められるため、まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。