経済の変動やIT技術の進化、消費者ニーズの多様化が進む現代において、既存のビジネスモデルだけでは、企業の持続的な成長は難しくなっています。

こうした中小企業の事業進出を支援するために、中小企業庁では2025年から「中小企業新事業進出補助金」を新設しました。本補助金は、新市場への参入や新サービスの開発など、事業の多角化を図る取り組みを実施する中小企業を支援する制度です。

そこで、この記事では中小企業新事業進出補助金の概要や基本要件、補助率について解説します。

中小企業新事業進出補助金とは

中小企業新事業進出補助金とは、「企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業などを支援する制度」です。

令和7年からはじまったばかりの、中小企業を支援する新しい補助金制度です。
新規事業への取り組みや既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業への進出にかかる設備投資などを支援します。

対象となる事業主

中小企業新事業進出補助金の対象となる主な事業主についてまとめました。

  • 中小企業者
  • 企業組合や農事組合法人、労働者協同組合の一部など
  • 生活衛生同業組合や酒造組合、内航海運組合など
  • 対象リース会社

対象となる経費

中小企業新事業進出補助金の対象となる経費を以下にまとめました。

  • 機械装置・システム構築費
  • 建物費
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 広告宣伝・販売促進費

ただし、中小企業新事業進出補助金は、中小企業等が将来にわたって持続的に競争力強化を図る取組を支援することを目的としているため、補助対象経費には、補助事業の事業化に必要不可欠な事業資産(有形・無形)に関する経費が含まれている必要があります。
具体的には「機械装置・システム構築費」「建物費」が該当し、そのいずれかが必ず補助対象経費に含まれていなければなりません。

また、一過性の支出が補助対象経費の大半を占める場合には、本補助金の支援対象にはならないため注意しましょう。

参考:中小企業新事業進出補助金

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中小企業新事業進出補助金の基本要件

中小企業新事業進出補助金を受給するには、7つの基本要件をすべて満たす3~5年の事業計画に取り組む必要があります。ここでは、それぞれの基本要件について解説します。

新事業進出要件

新事業進出要件とは、補助事業が新事業進出指針に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であることを求める要件です。

新事業進出指針に定められている新事業進出は、以下のような考え方を満たす事業です。

  • 新事業によって製造する製品が、中小企業にとって新規性を有すること
  • 新事業によって製造する製品の属する市場が、中小企業にとって新たな市場もしくは新たなニーズ・属性をもつ顧客層を対象とする市場であること
  • 新事業における製品の売上高に関する要件を満たすこと

付加価値額要件

付加価値額要件とは、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額または従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することを求める要件です。

付加価値額とは、営業利益や人件費、減価償却費を足したものを指します。

賃上げ要件

賃上げ要件とは、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うことを求める要件です。

  • 一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させること
  • 給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加させること

本要件の目標値が未達の場合には補助金返還義務があるため、注意が必要です。

事業場内最賃水準要件

事業場内最賃水準要件とは、補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、毎年、事業所内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であることを求める要件です。

要件の達成状況を確認するため、事業化状況報告時に賃金台帳などの提出が必要になります。

本要件の目標値が未達の場合には補助金返還義務があるため、注意が必要です。

ワークライフバランス要件

ワークライフバランス要件とは、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表することを求める要件です。

応募申請時までに、次世代法に基づいた一般事業主行動計画を策定し、情報サイト「両立支援のひろば」に、一般事業主行動計画を公表しなければなりません。

金融機関要件

金融機関要件とは、金融機関などから資金提供を受ける場合に、資金提供元から事業計画の確認を受けることを求める要件です。

要件を確認する必要があるため、金融機関などからの資金提供を受ける場合には、必ず「金融機関による確認書」を提出する必要があります。なお、自己資金のみで事業を実施する場合には提出は不要です。

賃上げ特例要件

賃上げ特例要件とは、補助事業実施期間内に、以下の要件をいずれも満たすことを求める要件です。

  • 給与支給総額を年平均6.0%以上増加させること
  • 事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること

要件の達成状況の確認のため、初回の事業化状況報告時に決算書・賃金台帳などを提出しなければなりません。
本要件の目標値が未達の場合には補助金返還義務があるため、注意が必要です。

参考:中小企業新事業進出補助金

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中小企業新事業進出補助金の補助率・補助上限額

中小企業新事業進出補助金の補助率・補助上限額を以下にまとめました。

  • 補助率:1/2
  • 補助上限額
従業員数 補助上限額
従業員数20人以下 750万円~2,500万円(3,000万円)
従業員数21~50人 750万円~4,000万円(5,000万円)
従業員数51~100人 750万円~5,500万円(7,000万円)
従業員数101人以上 750万円~7,000万円(9,000万円)

※()内は、賃上げ特例を適用した場合の金額

なお、同一事業者での応募は、1回の公募につき1申請に限ります。

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中小企業新事業進出補助金の申請方法・スケジュール

ここでは、中小企業新事業進出補助金の申請方法・スケジュールを解説します。

申請方法

中小企業新事業進出補助金の申請方法をまとめました。

  1. GビスIDプライムアカウントを取得する
  2. 電子申請システムから応募申請を行う
  3. 補助金の採択が発表後、交付申請を行う
  4. 交付決定通知が届き次第、補助事業を実施する
  5. 補助事業終了後、実績を報告する
  6. 実績報告書をもとに、補助金額が確定する
  7. 補助金が振り込まれる
  8. 5年間にわたり、事業化状況報告を提出する

詳細については、中小企業新事業進出補助金のホームページをご覧ください。

第1回スケジュール

2025年5月現在、判明している中小企業新事業進出補助金の第1回公募スケジュールをまとめました。

  • 公募要領公開:令和7年4月22日(火)
  • 申請受付開始:令和7年6月頃(予定)
  • 公募締め切り:令和7年7月10日(木)18:00まで
  • 採択発表:令和7年10月ごろ

決定していないスケジュールもあるため、中小企業新事業進出補助金のホームページから最新情報を確認してください。

参考:中小企業新事業進出補助金

まとめ

この記事では中小企業新事業進出補助金の概要や基本要件、補助率について解説しました。

中小企業新事業進出補助金は、新規事業に挑戦する中小企業などを支援する補助金です。ただし、長期的に取り組む必要があることや複数の受給要件があることから、はじめて補助金を利用する企業には難しい部分もあるでしょう。

そのため、中小企業新事業進出補助金の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントに依頼することがおすすめです。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。