従業員を雇用している個人事業主にとって、時間外労働の上限規制や労働環境の改善に対応するのは容易ではありません。しかし、従業員の働きやすさを高めることは、結果として優秀な人材の定着や事業の安定化につながる重要な取り組みです。

こうした課題を抱える個人事業主にとって活用しやすい制度の一つが、「働き方改革推進支援助成金」です。これは、労働時間の短縮や職場環境の整備など、働き方改革を進めるための費用負担を軽減できる助成制度です。

この記事では、個人事業主の方向けに、「働き方改革推進支援助成金」の制度概要や申請の要件、活用のポイントについてわかりやすく解説します。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金とは、働き方改革に取り組む中小事業主に対して、職場環境の整備にかかる費用の一部を支援する制度です。

働き方推進助成金は、取り組み内容によって以下の4つのコースに区分されています。ここでは、各コースの概要を簡潔にまとめました。

  • 業種別課題対応コース
    業務別課題対応コースは、「生産性の向上」と「時間外労働の削減・週休2日制の推進・勤務間インターバル制度の導入、医師の働き方改革推進に向けた環境整備」に取り組む中小事業主を支援するコース
    です。

本コースは、建設業、運送業、病院など、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業のいずれかの中小事業主に限定されています。

助成額 以下のいずれか低い方の金額

  • 成果目標1~6の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4

※常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6~9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
※別途上限あり

  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
    労働時間短縮・年休促進支援コースは、「生産性の向上」と「時間外労働の削減・年次有給休暇・特別休暇の促進に向けた環境整備」に取り組む中小企業事業主を支援するコース
    です。
助成額 以下のいずれか低い方の金額

  • 成果目標1~3の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4

※常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6~9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
※別途上限あり

  • 勤務間インターバル導入コース
    勤務間インターバル導入コースは、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設ける中小企業事業主を支援するコース
    です。
助成額 対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額
※常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6~9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5
※別途上限あり
  • 団体推進コース
  • 団体推進コースは、中小企業事業主の団体や連合団体が、傘下の事業主のうち、労働者を構成する事業主の労働者の労働条件改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取り組みを実施した場合に、その事業主団体などを支援するコースです。
助成額 以下のいずれか低い方の金額

  • 対象経費の合計額
  • 総事業費から収入額を控除した額
  • 上限額500万円

各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025年拡充予定】働き方改革推進支援助成金とは?各コースを徹底解説

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働き方改革推進支援助成金は個人事業主も対象?

働き方改革推進支援助成金は、個人事業主も対象に含まれます。ただし、すべての個人事業主が申請できるわけではなく、要件を満たす必要があります。

のちほど要件について詳しく解説しますが、ここでは、まず働き方改革推進支援助成金の対象となる事業主について整理しましょう。

対象となる事業主

各コースによって対象となる事業主の要件は異なりますが、共通事項として記載されているのは「中小企業事業主であること」です(団体推進コースを除く)。以下に中小企業事業主の要件をまとめました。

業種 A.資本または出資額 B.常時使用する労働者
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

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個人事業主が働き方改革推進支援助成金を申請するための要件

ここでは、働き方改革推進支援助成金を個人事業主が申請する要件について解説します。

労働者災害補償保険の適用事業主である

働き方改革推進支援助成金を申請するには、従業員を雇用し、労働者災害補償保険の適用を受けることが必須です。

個人事業主であっても、この要件は変わりません。労災保険制度に加入し保険料を負担しなければならない点には注意が必要です。

年5日の年次有給休暇を取得させるために就業規則などを整備している

働き方改革推進支援助成金を申請するには、すべての対象事業場において、年5日の年次有給休暇を取得させるために、就業規則などを整備していることが要件に含まれています。

そのため、まずは就業規則を整備したうえで年次有給休暇の付与・取得に関するを実施する必要があります。なお、就業規則は交付申請時点で整備されていることが求められているため、申請前に現状の確認と見直しを行いましょう。

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個人事業主が働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点

ここでは、個人事業主が働き方改革推進支援助成金を申請する際の注意点を解説します。

従業員を1人以上雇用する

働き方改革推進支援助成金の目的が、従業員が働く職場環境の改善であることから、従業員を1人以上雇用する必要があります。

ここでいう「1人以上」の従業員は、労働契約を締結し、労働保険の適用があり、実態として業務を行っていることの3つを満たす必要があります。
そのため、事業主自身のみが働いている場合や家族従業者のみで構成されている場合には、助成金の対象外となります。

労務管理を整備する

組織が本当に働き方改革に取り組んでいるかどうかを確認するためには、労働時間の管理、就業規則、給与体系などに関する書類を提出する必要があります。そのため、働き方改革推進支援助成金を申請する場合、労務管理体制の整備が欠かせません。

就業規則の作成は、常時10人以上の従業員がいる場合は作成・届出が義務づけられています。ただし、10人未満でも整備しておくことが望ましいため、この機会に作成を検討しましょう。

就業規則の他には、労働条件通知書や賃金台帳、出勤簿、コースによっては時間外・休日労働に関する協定(36協定)の届け出が必要になる場合があります。

このように、さまざまな帳簿類を整備しなければならないため、一人または少人数で幅広い業務を行う事が多い個人事業主は、管理に漏れや間違いがないようご注意ください。

期日までに申請を行う

働き方推進支援助成金に限らず、基本的に助成金は「取り組みを始める前に計画届を提出し、認定や決定を受ける」「取り組みの終了後、期日までに支給申請や実施報告書を提出する」ことが一般的です。そのため、申請手順や期日を把握し、余裕をもったスケジューリングが欠かせません。

よくあるミスには、「認定や決定を受ける前に、機器・システムを先に購入してしまう」「実施報告書の提出期日を過ぎてしまう」などが挙げられます。こうした場合、助成金支給の対象とはならないため、必ず期日を守って申請を行いましょう。

まとめ

この記事では個人事業主向けに、働き方改革推進支援助成金の概要や申請するための要件について解説しました。

働き方推進支援助成金は、個人事業主も活用できる制度です。個人事業主が申請する際も要件を満たし、手順通りに申請手続きを行う必要があります。

働き方推進支援助成金の受給を検討している個人事業主の方で「はじめて助成金を申請する」「手続きが不安」という場合には、プロのコンサルタントに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。