中小企業基本法第2章の第13条において、「女性や青年による中小企業の創業を促進する」ことが盛り込まれて以降、女性や若者の起業・創業の支援制度が打ち出されるようになりました。

そこで、この記事では女性起業家が利用できる「助成金」・「補助金」・「融資」という代表的な3つの資金調達方法の選び方や、それぞれのおすすめ制度を紹介します。

女性起業家が利用したい助成金・補助金・融資とは


女性起業家におすすめの資金調達方法として、以下の3つについて解説します。

助成金とは

助成金(※)とは、国や地方自治体が、会社経営者や個人事業主の雇用の安定に資する取り組みを支援するお金のことです。返済不要であることや、助成金ごとに定められている受給条件を満たすことでほぼ助成されることから、受給難易度が低いという特徴があります。
(※ここでは、厚生労働省が管轄する「雇用関係助成金」及び地方自治体等が管轄するそれに類する各種助成金を指します)

助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

補助金とは

補助金とは、国や地方自治体が経済・地域の活性化を目的に、会社経営者や個人事業主のビジネスを支援するお金のことです。返済不要であることは助成金と変わりませんが、受給条件を満たす以外に、審査を受ける必要があります。そのため、助成金よりも受給難易度は高くなっています。

補助金の詳細や助成金との違いの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

融資とは

融資とは、金融機関などから資金を借りることです。そのため、定められた一定期間内に返済することが必要となります。

ただし、国や地方自治体などの公的機関が主導する融資である場合には、事業をはじめたばかりの企業であっても要件を満たせる可能性があり、資金調達しやすいという特徴があります。

助成金・補助金・融資の違い

助成金・補助金・融資の違いを、以下の表にまとめましたので、資金調達方法の決定に役立ててください。

助成金 補助金 融資
支援元 厚生労働省
地方自治体など
経済産業省など 金融機関や国、地方自治体などの公的機関
目的 雇用創出・労働環境の改善など 補助金ごとに異なるが、経済・地域活性化など 融資によって異なる
受給条件 受給条件を満たし、法令遵守していれば、基本的に受給できる 受給条件を満たし、審査で採択される必要がある 条件を満たし、審査で採択される必要がある
申請期間 随時または長期間 申請開始から数週間から1カ月程度 随時
返済義務 なし なし あり

女性起業家が資金調達方法を選ぶ3つのポイント

女性起業家が資金調達方法を選ぶうえで、確認したい3つのポイントを紹介します。

女性起業家を支援する制度を選ぶ

中小企業基本法において、「女性や青年による中小企業の創業を促進する」ことが盛り込まれて以降、女性起業家を支援する動きは活発になっています。そのため、女性であることが受給条件となる制度も存在しているのです。

こうした制度を利用することで、実績や経験が少なくとも資金調達できる可能性があるでしょう。後ほど、受給条件に女性であることが含まれている制度をご紹介しますので、参考にしてください。

起業予定の自治体が提供する制度を選ぶ

これから起業予定である場合や企業して間もないという場合には、起業を予定している地域の自治体が提供する制度を利用するのも一つの手です。

地方自治体によっては、独自で女性支援するための補助金や助成金を提供している場合があるため、一度確認することがおすすめです。

さらに、起業家を支援するためのセミナーを開催していたり、個別相談にのってくれたりする場合もあるため、資金調達方法だけでなく起業におけるアドバイスを受けられるでしょう。

融資であればなるべく低金利の制度を選ぶ

融資には返済義務があります。将来の金利負担はなるべく抑えたいところです。
日本政策金融公庫が提供する融資制度や先ほど紹介した地方自治体による融資を利用することで、低金利で資金調達できる可能性があります。

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

女性起業家が活用したい助成金

ここでは、女性起業家が活用したい助成金をご紹介します。

雇用関係助成金

雇用関係助成金とは、厚生労働省が運用している助成金をまとめた呼び名です。労働者の雇用やスキルアップ、雇用環境の整備など8つの観点から雇用に関わる企業の取り組みを支援します。

雇用関係助成金のうち、特に申請がおすすめの7つの助成金を以下にまとめました。

・雇用調整助成金
経済上の理由により、事業活動を縮小せざるを得なくなった事業主が、雇用の維持を図るための休業や教育訓練、出向にかかる費用を助成する制度です。

関連記事:雇用調整助成金の特例とは?わかりやすく解説

・産業雇用安定助成金
自社の人材を出向させることで、雇用維持や人材育成を行う事業主を助成する制度です。

スキルアップ支援コース、産業連携人材確保等支援コース、事業再構築支援コースの3つのコースがあり、それぞれ対象事業者や対象労働者、助成額が異なります。

関連記事:【最新版】産業雇用安定助成金とは?各コースをわかりやすく解説

・トライアル雇用助成金
経験や技能、知識の不足により、就職が困難な求職者をトライアル雇用する事業主を助成する制度です。

一般トライアルコースと障害者トライアルコースがあり、それぞれ対象事業者や対象労働者、助成額が異なります。

関連記事:【2023最新】トライアル雇用助成金とは?各コースを徹底解説

・人材確保等支援助成金
労働環境を整備することで、雇用創出や人材確保を図る事業主を助成する制度です。

雇用管理制度助成コースや介護福祉機器助成コース、中小企業団体助成コースなど10つのコースがあり、それぞれ対象事業者や対象労働者、助成額が異なります。

関連記事:【2023年最新】人材確保等支援助成金とは?各コースを徹底解説

・キャリアアップ助成金
パート・アルバイトや派遣社員などの非正規雇用労働者を正社員に転換したり、処遇を改善したりする事業主を助成する制度です。

正社員化コースや賃金規定等改定コースなど7つのコースがあり、それぞれ対象事業者や対象労働者、助成額が異なります。

関連記事:【2024年最新】キャリアアップ助成金とは?各コースを徹底解説

・両立支援等助成金
働きながら、出産・育児、介護を両立する労働者の環境整備に取り組む事業主を助成する制度です。

出生時両立支援コースや介護離職防止支援コースなど6つのコースがあり、それぞれ対象事業者や対象労働者、助成額が異なります。

関連記事:【2024年最新】両立支援等助成金とは?各コースを徹底解説

・人材開発支援助成金
労働者のキャリア形成における体系的な職業能力開発に関する取り組みを行う事業主を助成する制度です。職務に関連する知識や技能の習得のために訓練の実施にかかった費用の一部を助成します。

人材育成支援コースや教育訓練休暇等付与コースなど7つのコースがあり、それぞれ対象事業者や対象労働者、助成額が異なります。

関連記事:【2023年最新】人材開発支援助成金とは?各コースを徹底解説

【東京都】若手・女性リーダー応援プログラム助成事業

「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」は、東京都内の商店街の活性化を図るために、新規開業を支援する制度です。

この助成金は、女性であることが応募資格の一つになっています。以下に助成限度額・助成率についてまとめています。

区分 助成率 助成限度額
事業所整備費 店舗新装・改装工事費 3/4以内 400万円
設備・備品購入費
(税込10万円以上)
宣伝広告費
(上限150万円)
実務研修受講費 2/3以内 6万円
店舗賃借料 3/4以内 1年目:180万円(15万円/月)
2年目:144万円(12万円/月)
3年目:120万円(10万円/月)

詳細や最新情報については、「東京中小企業振興公社:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」をご覧ください。

女性起業家が活用したい補助金

つづいて、女性起業家が申請できる補助金をご紹介します。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、事業者が作成した「持続的な経営に向けた経営計画」に基づいて、販路開拓への取り組みや、業務効率化・生産性向上の実現を支援する制度です。

通常枠における補助率は、取り組みにかかった経費の2/3で、補助上限は50万円となっています。

詳細や最新情報については、「小規模事業者持続化補助金:小規模事業者事業化補助金(一般型)」をご覧ください。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、革新的なサービスや試作品の開発、生産プロセスやサービス提供方法の改善に必要な設備・システムを導入した小規模事業者や中小事業者などを支援する制度です。

以下の3タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なっています。

  • 省力化(オーダーメイド枠)
  • 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型)
  • グローバル枠

通常枠においては、補助率・補助金額は以下のとおりになっています。

補助率 中小企業:1/2(1,500万円を超える部分:1/3)
小規模企業者・小規模事業者・再生事業者:2/3(1,500万円を超える部分:1/3)
補助金額 従業員数 5人以下 :100万円~750万円
6人~20人:100万円~1,500万円
21人~50人:100万円~3,000万円
51人~99人:100万円~5,000万円
100人以上:100万円~8,000万円

その他のタイプの詳細や最新情報は「ものづくり補助金総合サイト」をご覧ください。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する中小企業・小規模事業者の経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップを支援する制度です。

以下の5タイプに分かれており、それぞれ補助上限額や補助率が異なっています。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

通常枠においては、補助率は経費の1/2、補助額は、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下です。その他のタイプの詳細や最新情報については、「IT導入補助金2024」をご覧ください。

女性起業家におすすめの融資

それでは、最後に女性であることが要件に含まれている融資制度をご紹介します。

女性、若者/シニア起業家支援資金

女性、若者/シニア起業家支援資金は、新たに事業を始めるもしくは事業開始後7年以内である女性・35歳未満・55歳以上であれば受けられる融資です。

女性起業家であれば、特別利率Aという利率で融資を受けることができます。融資限度額は7,200万円で、うち運転資金の限度額は4,800万円です。詳細は「日本政策金融公庫:新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)/ 女性、若者/シニア起業家支援資金」をご覧ください。

【東京都】女性・若者・シニア創業サポート事業

【東京都】女性・若者・シニア創業サポート事業は、東京都内の女性・39歳以下または55歳以上の男性で、都内で創業の計画がある、もしくは創業後5年未満の代表者が受けられる融資です。

そのため、都内に本店または主たる事業所を置く女性であれば、低金利・無担保で創業のサポートを受けられるほか、創業におけるセミナーや個別相談を受けることができます。詳細は、「東京都:女性・若者・シニア創業サポート事業」をご覧ください。

【埼玉県】女性・若者経営者支援資金/女性・若者起業家支援貸付

【埼玉県】女性・若者経営者支援資金/女性・若者起業家支援貸付は、信用保証対象業種を埼玉県内で開始しようとする場合(事業開始から5年を経過していない場合も含む)で、女性もしくは35歳未満の若者のいずれかが受けられる融資です。

そのため、埼玉県内で事業を営んでいない女性であれば、設備資金や運転資金において低金利・無担保で起業のサポートを受けられます。詳細は、「深谷商工会議所:女性・若者経営者支援資金(女性・若者起業家支援貸付)」をご覧ください。

まとめ

この記事では女性起業家が利用できる「助成金」・「補助金」・「融資」という代表的な3つの資金調達方法の選び方や、それぞれのおすすめ制度を紹介しました。
最近では、女性起業家を支援する制度は多くあるため、受給要件に女性であることが含まれている制度は、一度確認してみることがおすすめです。

また、助成金や補助金は返済不要であることから、まず申請を検討してみてはいかがでしょうか。以下から、助成金の無料診断ができますので、資金調達を考えている女性起業家の方は、ぜひお役立てください。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。