厚生労働省は、勤務間インターバル制度の導入を企業に奨励しています。
勤務間インターバル制度とは、労働環境の待遇改善の取り組みの一環として、長時間労働による過労死や健康被害を防止するために設けられた制度です。
働き方改革関連法案の成立により、2019年度から導入が努力義務とされ、導入した中小企業には助成金が至急されるなど注目を集めています。
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、前日の終業時間から翌日の始業時間まで、インターバル(「9~11時間」または「11時間以上」)を置かないと働いてはならないという制度です。十分な休息時間を確保するとともに、実質的に過度な労働時間を短縮させるという目的があり、恒常的な長時間勤務や不規則な勤務体系の改善に期待されています。
例えば、通常就業時間が9:00~18:00の仕事で23:00まで残業した場合、その11時間後である翌日10:00までは働かせてはなりません。これは、通常の就業時間である9:00を過ぎても有効なので休憩時間が確保でき、懸念される過重労働による健康被害から労働者を守ることができます。
海外に目を向けると、既に導入している諸外国もあり、EUでは24時間につき最低連続11時間の休息が定められています。
働き方改革におけるインターバル勤務
働き方改革では、過労死や労災の要因となる長時間労働を改善し、ワーク・ライフ・バランスの是正を目指すことを目的に、時間外労働の上限を規制しています。インターバル勤務は、この残業抑止策の一つとして盛り込まれており、仮に残業したとしても十分な休息時間が確保できる見込みです。企業からすれば強制力のない努力義務ではあるものの、助成金の給付と合わせることで、導入が期待されます。
ここまでの内容では、働く側からすればメリットだけで歓迎できる制度のように思われます。しかし、どんな良いものにも問題はつきものです。
例えば、シフト制交代勤務の仕事で、突発的にインターバル勤務が発生した場合、シフトが組めない事態に陥る可能性が出てきます。また、有給を含め休日を挟んだ場合どうなるのかなど、インターバルの扱いがはっきりとしない場面が
想定されます。特に少人数の職場では、場合によって始業時間になってもほとんどの従業員が出勤していない、ということになりかねません。このように、法が整備されただけでは解決できない部分が散見され、インターバル制度を導入しても新たな問題の浮上が懸念されます。
何も考えずに導入を急いでしまった結果、従業員の健康を守るはずが逆に負担を増やすことになっては、まったくの逆効果です。会社の業務形態や事業内容、規模に照らし合わせて、導入しても問題ない、または問題をクリアできる準備ができてから制度を導入することをお勧めします。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説インターバル勤務と人手不足
他国で既に導入され実績があるとはいえ、日本で同じように運用できるかというと、まだ断言できる状況ではありません。
日本におけるインターバル勤務の懸念点として、昨今の深刻な人材不足が挙げられます。
従業員の離職や採用難の影響で、人材が不足した結果収益が悪化。倒産に至るという企業が、業界問わず増えています。少子高齢化による労働人口の減少が大きな原因ですが、こうした問題から日本の人材不足の深刻さが見て取れます。
会社が人手不足の状態でインターバル勤務を導入しても、更に人手が足りなくなり現場が混乱してしまうでしょう。
ある程度の余裕があり、多様な働き方が受け入れられる土壌があってはじめて生きてくる制度といえるかもしれません。そうした意味では、本来導入してほしい中小企業で活用するのは、なかなかハードルが高いといえるでしょう。
きちんとした就業管理ができて初めて、残業を含めたインターバル勤務が機能するのは間違いありません。
勤務間インターバル制度の今後
2015年度の厚労省の委託調査によると、インターバル勤務を導入している企業は、わずか2.2%。これから努力義務が課せられるとはいえ、罰則があるわけではないので、どれだけの企業に導入されるのかは未知数です。とはいえ、こうした制度について話し合われ、法律として明記されたことは大きな一歩といえるでしょう。
勤務間インターバル制度は、まだ立ち上がったばかりの制度です。今後少しずつ導入する企業が増えていき話し合いが重ねられることで、有用性が認められれば義務化されるかもしれません。
従業員の休息時間を確保し健康を守るためにも、助成金の受給も含め、インターバル勤務の導入を検討されてはいかがでしょうか。