2016年、安部首相は内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置。少子高齢化が進む中、「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会のため」に、働き方改革に取り組む姿勢を見せました。そして、2018年国会で『働き方改革関連法案』が成立し、多くの企業が法施行に向けた改革に乗り出しています。

働き方改革の現状

参議院本会議で働き方改革関連法案が成立したことで、「働き方改革」が本格的に動き出しました。日本の労働法が大きく変わるのは実に70年ぶりのこと。これにより、日本の労働環境は大きく転換することが予測されます。
この法案は、「残業規制」「同一賃金同一労働」「脱時間給制度」の3つを柱に、2019年4月の施行を目指し進められています。

・残業規制
時間外労働の上限規制を導入することで、過労死や労災の要因となる長時間労働を改善し、ワーク・ライフ・バランスの是正を目指す。

・同一賃金同一労働
正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差の解消を図ることで、より自分に合った働き方、生き方が選べるようになる。

・脱時間給制度
単純な時間労働でなく労働の成果に応じて報酬を支払う制度のこと。公式には高度プロフェッショナル制度と呼ばれている。

各社の事例

以下では働き方改革に取り組む会社の事例をご紹介します。残業時間の是正や福利厚生の充実など、企業によりその取り組みは様々ですが、共通しているのは、「働きやすさ」「ライフ・ワーク・バランス」といった従業員視点です。

医療、福祉

勤務環境への不満から、多くの介護ヘルパーが退職。これにより勤務環境改善の必要性を感じ、取組を実施した。

情報通信業

「ライフ・ワークシナジー」をスローガンに労働時間削減に着手。時間外労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進のため、他社を巻き込んだ取組を展開中。

卸売業、小売業

「従業員満足なくして顧客満足なし」というテーマを掲げ、労働時間やテレワークなどの「働き方」、有給休暇をはじめとした「休み方」を見直し、従業員のワーク・ライフ・バランス推進に取り組んでいる。

建設業

「次世代のリーダー」「会社の担い手」を育て、若者が夢と目標を持てる会社作りのため「働き方改革」を実践し、技術力・定着率を高め、多能工化を図る。

卸売業、小売業

テレワークを導入したことで、仕事と子育ての両立や所定外労働の削減、社員の満足度・意識の向上を図る。

ホテル、宿泊業

毎週1回(原則として水曜日)を定休日とした。宿泊の繁忙期を避けながら、年間で6ヶ月を定休日の対象とする。

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働き方改革助成金

働き方改革を推進している企業に対して厚生労働省が支給している助成金です。助成金にはいくつもの種類があり、受給資格を満たした助成金に応募することで受け取ることができます。
ここでは、働き方改革助成金をご紹介します。

時間外労働等改善助成金

長時間労働見直しに取組む、中小企業事業主のための助成金です。労働時間の縮減に要した費用の一部を助成します。

トライアル雇用助成金

病気などの理由で安定的な就職が困難な求職者を、原則3ヶ月間試行雇用した事業主に支給される助成金です。常用雇用への移行を目的に、適性や能力を見極める制度です。

人材開発支援助成金

継続して人材育成に取り組む事業主のための助成金です。社員が職務に関連した専門知識や技能などを習得するための経費や、訓練期間中の賃金の一部を助成します。

働き方改革助成金(東京都)

働き方改革を推進するため、「TOKYO働き方改革宣言企業」制度を活用して働き方改革宣言を行った企業に給付される助成金です。

働き方改革、今後の展望

少子高齢化に伴う超高齢化社会に突入した日本は、これから先労働人口の激減が予想されています。既に経済成長の鈍化が見られる中、働き方改革の推進は一刻の猶予もありません。

福利厚生の充実やフレックス制の導入、テレワークの拡大など、どれも働き方改革という観点ではとても有効といえます。しかし、どれだけ制度を整えても、形だけでは意味がありません。まず改革すべきは、制度ではなく働く人の意識でしょう。

管理職や経営陣、経営のトップが自ら率先して意識を変えていくことで目的や目標といったビジョンは明確になり、そこで初めて企業は変わっていけるのではないでしょうか。
今後、働き方改革の推進とともに、日本人の労働への考え方の変化、そして日本経済の発展が期待されます。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。