働き方改革により、長時間労働の是正が求められる一方、残業時間が減ることで企業は売り上げの減少などが懸念され、経営的には相応の打撃を受けることが想定されます。

しかし、残業時間が減るのは国内の企業全てにいえることなので、これまで従業員に過度な残業を強いていた企業は痛手になるものの、法令を守り残業時間を抑えていた企業は変わらないということ。これにより不公平感は解消されることが期待されます。また、残業時間が減ればその分の残業代が減るので、残業が多かった企業にとってもマイナスとばかりはいえないでしょう。

本来、ビジネスという世界で競争する上で、ルールは守られて当たり前のこと。これまで法令順守できていなかった企業は、根本から経営を見直す良い機会ではないでしょうか。

生産性向上のための制度の導入

働き方改革は、これまで労働時間を評価基準としてきた、多くの日本企業のやり方を変える取り組みです。少子高齢化に伴う労働力人口の減少問題に対し、「女性や高齢者の労働市場への参加」「出生率の改善」「労働生産性の向上」という3つの策を講じています。

この内、現状のまま取り組めるのが「労働生産性の向上」です。

残業の削減に伴う労働時間の減少に、これまでと同等の成果を上げるにはどうすればよいかという問題になります。普通に考えれば、使える時間が減ればその分だけ成果は下がるため、時間というコストを補うために従業員のモチベーションが求められます。

そこで、減った時間を取り戻す一つの手段として、個人の成果に応じて支払われるインセンティブ制度の導入というものが各社で導入されはじめました。

あくまで一例ではありますが、会社の業績に応じて支払われる元来の賞与とは違い、個人の頑張りに報いる制度を取り入れることで、個々で生産性を意識させることができるでしょう。このインセンティブ制度により生産性の向上が期待でき、ワークライフバランスの向上にもつなげることも可能になります。

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企業の導入事例

働き方改革に取り組む企業が増えてきたことで、多くの事例も見られるようになって来ました。しかし、同時に聞こえてくるのは「自社は何から取り組み始めるべきなのか」といった、お悩みの声です。
そこで、以下に実際の取り組み事例をご紹介したいと思います。

日立ソリューションズ

ワークライフバランス向上のために、休暇制度を改正しました。「ポジティブ・オフ休暇制度」と称して、気兼ねなく年休を取得できるよう、細かいルールを削除。これまで遠慮して取り辛かった休暇を、特別な理由がなくても自由に取得できるようにした制度です。

NTT東日本

Web会議の導入などにより在宅勤務を推進し、移動時間や費用の削減を実現したほか20時以降の時間外労働を禁止する一方で、時間外労働の時間を朝6時からと定めました。

ヤフー株式会社

ヤフーが導入したのは、3つの休暇制度です。

1つ目は、最長で3ヵ月間の休暇が取れる「サバティカル休暇」。勤続10年以上の正社員を対象とした休暇制度で、取得後の報告書提出が必要ですが、1月分の給料が支給されます。

2つ目は、土曜が祝日の場合前日の金曜を休暇にする「土曜日祝日振替制度」。仕事の都合で金曜に休みが取れない場合でも、翌月末までの振替が可能です。

3つ目は、他人の課題を解決するための「課題解決休暇」。専用のアプリで報告書を提出することを条件に、年度3日まで取得できます。

SCSK株式会社

本来残業代として支給する予定だったお金を、インセンティブとして支給する制度で、残業代削減と有給休暇取得をセットで推進。有給休暇取得日数が13日から19日に増加し、月の平均残業時間が35時間から18時間になりました。

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働き方改革のために助成金を活用

働き方改革が積極的に推進されることで、社員の健康に配慮した「健康経営」という考え方が注目されています。大企業を中心に広がりを見せるこの取り組みは、「健康な社員が企業に収益をもたらす」という考え方のもと、経営と健康管理の両立を目的としています。

働き方改革の一つの理想といえる、この「健康経営」を実践するためには福利厚生の充実が有効です。しかし、会社の福利厚生を充実させるためには、相応の準備期間と資金が必要になります。

そこで、「職場意識改善助成金」を初めとする、働き方改革を推進する企業に支給される助成金の活用が有効です。政府だけでなく地方自治体が支給する働き方改革助成金もあるので、興味がある企業様は各自治体のホームページをご覧ください。

助成金の制度を上手に活用できれば、大企業だけでなく、中小企業であっても無理なく働き方改革を進めているのではないでしょうか。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。