人材開発支援助成金とは、雇用している従業員に対して、業務に関連する知識や技能を習得するために訓練を実施した場合に助成金を受給できる制度です。
人材育成は企業の成長において欠かせない要素です。また、最近では、業務のシステム化やDXを推進する為の、デジタル分野やIT分野における技能や知識をもつ人材の必要性も増しています。しかし、大きな費用がかかることから、人材育成が疎かになっている中小企業もあるでしょう。
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)はそのような企業にお勧めできる制度です。
そうした企業におすすめの助成金が、
この記事では人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の概要や支給要件、助成額・助成率について詳しく解説します。
関連記事:【2023最新】DX推進に活用すべき助成金・補助金とは?DXに必要な要素や費用についても解説
目次
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)とは
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)とは、「人への投資」を加速化するために国民の提案を形にした以下の5つの訓練のいずれかを実施した際に助成されるコースです。
1.デジタル人材・高度人材の育成
- 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練
2.労働者の自発的な能力開発の促進
- 長期教育訓練休暇等制度
- 自発的職業能力開発訓練
3.柔軟な訓練形態の助成対象化
- 定額制訓練
令和4年~8年度の期間限定であるため、受給を検討している場合には早めに取り組むことがおすすめです。
人材開発支援助成金のその他のコースについては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】人材開発支援助成金とは?各コースを徹底解説
各訓練共通の対象となる事業主
各訓練共通の対象となる事業主の主な要件を以下にまとめました。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 事業内職業能力開発計画と職業訓練実施計画届を作成し、内容を労働者に周知していること
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 基準期間(職業訓練実施計画届の提出日の前日から起算して6か月前の日から、支給申請書の提出日までの間)に計画を実施した事業所において、雇用する雇用保険被保険者(以下「被保険者」という)を事業主都合により離職させていないこと
- 基準期間に計画を実施した事業所において、特定受給資格者(離職区分1Aまたは3Aの者)とされた者の数が、支給申請書提出日における被保険者数で除した割合の6%を超えていない又は3人以内であること
- 被保険者に職業訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っている事業主であること
- OFF-JTをeラーニングによる訓練や同時双方向型の通信訓練を実施する場合、自宅等において就業するテレワーク勤務を制度として導入し、労働協約または就業規則等に規定していること
- 助成金の審査に必要な書類を整備し、5年間保存している事業主であること
- 助成金の審査に協力する事業主であること
各訓練共通の対象となる労働者
各訓練共通の対象となる労働者の主な要件を以下にまとめました。
- 助成金を受けようとする事業所において、被保険者であること
- 訓練実施期間中において、被保険者であること
- 「訓練別の対象者一覧」(定額制訓練の場合は「定額制訓練に関する対象者一覧」)に記載されている被保険者であること
- 実訓練時間数の8割以上受講していること
- 育児休業中訓練である場合、育児休業中に自発的な申し出により訓練を受講する者であること
最新情報やより詳細な要件は、以下の厚生労働省のホームページからご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)①高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のうち、高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練に関する主な支給要件や助成額などについて解説します。
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練は、DX推進や成長分野などでのイノベーションを推進する高度人材を育成するための高率助成の訓練コースです。
対象となる事業主
デジタル人材・情報技術分野認定実習併用職業訓練の対象となる事業主の主な要件を以下にまとめました。
1.高度デジタル人材訓練の場合、以下のいずれかに該当すること
- 主たる事業が日本標準産業分類の大分類の「情報通信業」であること
- 産業競争力強化法に基づく事業適応計画(情報技術事業適応)の認定を受けていること
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)からDX認定を受けていること
- DX推進指標を用いて、経営幹部、事業部門、IT部門などの関係する者で自己診断を行い、IPAにこの指標を提出するとともに、この自己診断を踏まえた「事業内職業能力開発計画」を作成していること
- 企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるために、事業主において、企業経営や人材育成の方向性の検討を行い、この検討を踏まえて「事業内職業能力開発計画」等の計画を策定していること
- 日本の大学等を卒業し、学士以上の学位を取得した者または海外の高等教育機関において、日本の学士以上に相当する学位を取得した者
- 入学先大学院での主たる使用言語の能力が、一定水準以上である者
※英語の場合、TOEFL iBT 100点またはIELT7.0以上の水準を満たす者
※英語以外の場合、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)C1レベル以上である者 - 大学学部以降の成績について、総在籍期間における累積GPA(Grade Point Average)が3.00(最高値を4.00とした場合)以上である者
- 1コースあたり実訓練時間数が10時間以上であること
- OFF-JTであること
- 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練「職務関連訓練」であること
- 「事業外訓練」であること
- 高度情報通信技術資格の取得を目標とする課程
- 第四次産業革命スキル習得講座
- マナビDX(デラックス)の掲載講座のうち、講座レベルが、「ITスキル標準(ITSS)」、「ITSS+」又は「DX推進スキル標準」のレベル4または3に区分される講座
- 大学(大学院を除く)の正規課程、科目履修制度、履修証明制度による訓練
- 大学院の正規課程、科目等履修制度、履修証明制度による訓練
- 海外の大学院により実施される訓練
- 主たる事業が日本標準産業分類の大分類の「情報通信業」であること
- IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していること
- 雇い入れ日から訓練開始日までが3か月以内である被保険者
- 大臣認定の申請前にすでに雇用している短時間等労働者で、引き続き同一の事業主において、新たに通常の労働者に転換した者(通常の労働者への転換日から訓練開始日までが3か月以内である者に限る)
- 既に雇用する被保険者
- 企業内におけるOJTと教育訓練機関で行われるOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
- 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
- 総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
- 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
- 「制度導入・適用計画届」に基づき、訓練等を被保険者が自発的に受けられる「長期教育訓練休暇等制度」を新たに導入すること
- すでに「長期教育訓練休暇制度」を導入し、被保険者に有給の長期教育訓練休暇を取得させる事業主である場合は、次の①②のうちいずれかを満たすこと
- 被保険者を対象としたものであること
- 制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知すること
- 所定労働日において、合計30日以上の長期教育訓練休暇を付与すること
- 所定労働日において、「1日単位」の長期教育訓練休暇を10日以上連続して1回以上付与すること
- 休暇取得開始日及び最終休暇取得日がいずれも制度導入・適用計画期間内であること
- 職業訓練、教育訓練、各種検定又はキャリアコンサルティングを受けた日数が、長期教育訓練休暇の取得日数の2分の1以上であること
- 制度導入・適用計画期間(3年間)内に、所定労働日において、1回以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除の措置を行うこと
- 教育訓練短時間勤務等制度を利用し受講する教育訓練については、同一の教育訓練機関が行う一連の15回以上の訓練を含むものであること
- 就業規則等に自発的職業能力開発経費負担制度を定めるとともに、その制度に基づき、被保険者に対して経費を負担する事業主であること
- 自発的職業能力開発を行う者であること
- 自発的職業能力開発経費負担制度を利用し、被保険者が自発的職業能力開発を行うために実施する訓練であること
- 1コースあたり実訓練時間数が10時間以上であること
- OFF-JTであること
- 職務を問わず、職業に必要となる知識や技能の習得をさせるための訓練であること
- 「事業外訓練」であること
- 定額制サービスによる訓練であること
- 業務上義務付けられ、労働時間に実施される訓練であること
- OFF-JTであること
- 「事業外訓練」であること
- 職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練「職務関連教育訓練」であること
- 各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること
2.成長分野等人材訓練の場合、「個人訓練計画及び要件確認書」を作成すること
対象となる労働者
成長分野等人材訓練(海外の大学院により実施される訓練)の場合、以下のすべてに該当することが必要です。
対象となる訓練
デジタル人材・情報技術分野認定実習併用職業訓練の対象となる訓練の主な要件を以下にまとめました。
高度デジタル人材訓練の場合、上記の要件に加えて以下のいずれかの訓練であることが必要です。
成長分野等人材訓練の場合、上記の要件に加えて以下のいずれかの訓練であることが必要です。
助成率・助成額
デジタル人材・情報技術分野認定実習併用職業訓練の助成率・助成額は以下のとおりです。
訓練メニュー | 経費助成率 | 賃金助成率 | ||
---|---|---|---|---|
高度デジタル人材訓練 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 |
成長分野等人材訓練 | 75% | 960円/時間 (国内の大学院の場合) |
最新情報やより詳細な要件は、以下の厚生労働省のホームページからご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説人材開発支援助成金(人への投資促進コース)②情報技術分野認定実習併用職業訓練
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のうち、情報技術分野認定実習併用職業訓練に関する主な支給要件や助成額などについて解説します。
情報技術分野認定実習併用職業訓練は、IT分野未経験者に対するOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を助成する訓練コースです。
対象となる事業主
情報技術分野認定実習併用職業訓練の対象となる事業主の主な要件を以下にまとめました。
1.次のいずれかに該当すること
2.訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1 職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)により職業能力の評価を実施すること
対象となる労働者
情報技術分野認定実習併用職業訓練の対象となる労働者の主な要件を以下にまとめました。
1.訓練開始日において、15歳以上45歳未満の労働者であること
2.次のいずれかに該当すること
3.新規学卒予定者以外の者である場合、キャリアコンサルティングを受けたうえで、情報処理・通信技術者の職種に関連する業務に従事した経験がない者又は過去の職業訓練の実態等から訓練への参加が必要と認められる者であること
対象となる訓練
情報技術分野認定実習併用職業訓練の対象となる訓練の主な要件を以下にまとめました。
1.情報処理・通信技術者の職種に関連する業務に必要となる訓練であること
2.次の要件を満たし、大臣認定を受けた訓練であること
3.OFF-JTについては、「事業外訓練」または「事業内訓練のうち事業主が自ら運営する認定職業訓練」のいずれかであること
4.OJTについては、大臣認定を受けた実習併用職業訓練の計画に沿って、適格な指導者の指導のもとで、計画的に行われるものであること
5.「事業主の要件」の「IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していること」を用いる事業主の場合、OJT訓練指導者はIT関係の資格(ITSSレベル2以上)を取得している者または情報通信・技術者としての実務経験が5年以上の者であること
6.OJTについては、原則対面で行うこと
7.OJTについては、OJT実施日ごとに訓練受講者が「OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌)」を作成すること
助成率・助成額
情報技術分野認定実習併用職業訓練の助成率・助成額は以下のとおりです。
訓練メニュー | 経費助成 | 賃金助成 | OJT実施助成 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 中小企業 | |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 60% (+15%) |
45% (+15%) |
760円/時間 (+200円/時間) |
480円/時間 (+100円/時間) |
20万円 (+5万円) |
11万円 (+3万円) |
※()内は賃金要件・資格等手当要件を満たした場合の助成率・助成額です。
最新情報やより詳細な要件は、以下の厚生労働省のホームページからご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)③長期教育訓練休暇等制度
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のうち、長期教育訓練休暇等制度に関する主な支給要件や助成額などについて解説します。
長期教育訓練休暇制度や教育訓練短時間勤務等制度を導入し、労働者の自発的な職業能力開発を促進した場合に助成する訓練コースです。
対象となる事業主
長期教育訓練休暇等制度の対象となる事業主の主な要件を以下にまとめました。
1.次のいずれかに該当する事業主であること
①直近の3事業年度に長期教育訓練休暇制度を適用した被保険者が3人未満であることまたは直近の事業年度に当該制度を適用した被保険者がいないこと
②制度の見直しを行うなど、長期教育訓練休暇制度に基づく休暇の取得者を増加するための具体的な取組を新たに事業内職業能力開発計画に規定すること
2.計画期間内に、各制度に基づき、長期教育訓練休暇等制度を一定回数適用し、実際に当該被保険者が長期教育訓練休暇等を取得すること
対象となる制度(導入)
長期教育訓練休暇等制度の対象となる制度の主な共通要件を以下にまとめました。
※就業規則は、制度施行日までに管轄する労働基準監督署へ届け出たものであること
※労働協約は、制度施行日までに締結されたものであること
対象となる制度(適用)
長期教育訓練休暇等制度の主な要件を以下にまとめました。
教育訓練短時間勤務等制度の主な要件を以下にまとめました。
助成率・助成額
長期教育訓練休暇等制度の助成率・助成額は以下のとおりです。
対象となる制度 | 賃金助成 (1人1時間あたり) |
制度導入助成 (1事業主あたり) |
||
---|---|---|---|---|
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | |
長期教育訓練休暇制度 | 960円 | 760円 | 20万円 | |
教育訓練短時間勤務等制度 | – | – | 20万円 |
最新情報やより詳細な要件は、以下の厚生労働省のホームページからご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)④自発的職業能力開発訓練
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のうち、自発的職業能力開発訓練に関する主な支給要件や助成額などについて解説します。
自発的職業能力開発訓練は、労働者の自発的な職業能力開発を支援する事業主を助成する訓練コースです。
対象となる事業主
自発的職業能力開発訓練の対象となる事業主の主な要件を以下にまとめました。
対象となる労働者
自発的職業能力開発訓練の対象となる労働者の主な要件を以下にまとめました。
対象となる訓練
自発的職業能力開発訓練の対象となる訓練の主な要件を以下にまとめました。
助成率・助成額
自発的職業能力開発訓練の助成率は、以下のとおりです。
訓練メニュー | 経費助成率 |
---|---|
中小企業・大企業 | |
自発的職業能力開発訓練 | 45%(+15%) |
※()内は賃金要件・資格等手当要件を満たした場合の助成率です。
最新情報やより詳細な要件は、以下の厚生労働省のホームページからご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)⑤定額制訓練
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のうち、定額制訓練の育成に関する主な支給要件や助成額などについて解説します。
対象となる事業主
定額制訓練特有の対象となる事業主の要件は特にありません。さきほど紹介した共通要件に当てはまっていることが必要です。
対象となる労働者
定額制訓練特有の対象となる労働者の要件は特にありません。さきほど紹介した共通要件に当てはまっていることが必要です。
対象となる訓練
定額制訓練の対象となる訓練の主な要件を以下にまとめました。
助成率・助成額
定額制訓練の助成率は以下のとおりです。
訓練メニュー | 経費助成率 | |
---|---|---|
中小企業 | 大企業 | |
定額制訓練 | 60% (+15%) |
45% (+15%) |
※()内は賃金要件・資格等手当要件を満たした場合の助成率です。
最新情報やより詳細な要件は、以下の厚生労働省のホームページからご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
まとめ
この記事では、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の各訓練の支給要件や助成率・助成額について解説しました。
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