厚生労働省が行う施策の中には、中小企業の事業主向けに助成金を支給する支援制度があることをご存知でしょうか。厚生労働省では目的別に助成金を8つに分類し利用促進のために周知を図っています。

例えば従業員の雇用維持をはかるための助成金や離職者の円滑な労働移動をはかるための助成金などがあります。助成金の活用は会社と労働者の両者にとってプラスになるだけではなく、雇用の安定など社会にとっても望ましいことです。助成金の受給要件にある取り組みを行っている場合は、各種助成金の概要を把握し申請を検討してみましょう。

厚生労働省が実施する助成金とは

助成金はある一定の条件を満たせば受給できる制度です。銀行からの融資とは違い、事業成績によって受けられないということもなくまた返済の義務もありません。
制度を理解して賢く助成金・補助金を活用すれば事業へのメリットは大きいでしょう。
厚生労働省が提供する事業主向けの助成金は8項目に分類されます。(※1)

各助成金の項目の具体的な内容は

  1. 従業員の雇用維持を図る場合の助成金
  2. 離職者の円滑な労働を図る場合の助成金
  3. 従業員を新たに雇い入れる場合の助成金
  4. 障害者等の雇用環境整備関係の助成金
  5. 雇用環境の整備関係の助成金
  6. 仕事と家庭の両立に取り組む場合の助成金
  7. キャリアアップ・人材育成関係の助成金
  8. 労働時間・賃金・健康保険・勤労者福祉関係の助成金

となっています。

この8項目ごとに各種の助成金が位置付けられ、事業主はそれぞれの取り組みに合致する助成金に申請します。

例えば、新しく従業員を雇用したいと考えている事業主は(3)従業員を新たに雇い入れる場合の助成金を活用できる可能性があります。具体的な助成金の制度名で言えば、65歳以上の高年齢者を雇用する場合に支給される「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」や安定就業を希望する未経験者を試行的に雇い入れる「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」などです。

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助成金受給資格の事業主に求められる要件

一つは 雇用保険の適用事業所の事業主であることです。雇用保険は労働者を雇用する事業であれば、業種や規模等に関わらず原則として強制的に適用されるものです。事業主に課せられている義務を果たしていることが受給要件の一つとなります。

二つ目は 助成金支給のための審査に協力することです。助成金は申請して審査を受けることになります。支給要件に合致しているかチェックするための審査に協力できる事業主が対象となるのです。具体的には、審査に必要な書類等を整備・保管してあること、審査を行う管轄労働局等から書類提出を求められた時に応じること、そして管轄労働局等から実地調査を求められた場合に受け入れること、などを指します。

最後に 各助成金で定められている申請期間内に申請することです。助成金は予算を計上した上で行う事業ですから、申請期間は厳守となります。以上3つの共通要件と各助成金の要件を満たした事業主が受給資格を得ることができます。

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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

助成金の申請~受給までの流れ

それでは助成金の申請から受給までの流れを、キャリアアップ助成金を一つの例として見ていくことにします。

キャリアアップ助成金は有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者の企業内におけるキャリアップ等を目指し、正社員化や人材育成、処遇改善の取り組みに助成する制度です。8つのコースが設定されていて、例えば正社員化コースや人材育成コースなどがあります。正社員化コースの助成金を希望する事業主は、まず「キャリアアップ計画」を作成し提出する必要があります。(※2)計画書等の提出書類などは各助成金の要件で定められています。

その後は計画書に基づいて企業内で取り組みを実施し、助成金支給を申請して審査が行われます。

以上が助成金の申請から支給されるまでの大まかな流れになります。助成金は国民の税金で行う事業のため、支給要件を満たしているか審査が入ります。計画書の作成方法や審査条件に当てはまっているか分からない場合は、助成金申請を代行する専門家に相談することで審査通過のアドバイスをもらうことができます。

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最大200万円?中小企業に手厚い助成金

中小企業か否かで助成内容が異なる助成金があります。基本的に助成金は大企業より中小企業に手厚い制度設計がされています。

例えば、厚生労働省から平成30年4月に発表があった中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援する時間外労働等改善助成金という制度です。残業時間の削減に加えて休日も増やす施策をした中小企業に対して、一企業あたり最大で200万円が支給されます。こちらは「職場意識改善助成金」という名前であった助成金がリニューアルされたもので、「時間外労働上限設定コース」、「職場意識改善コース」、「勤務間インターバル導入コース」、「テレワークコース」の4つのコースで構成されています。(※3)

中小企業の範囲はいかなる産業かによって、その資本または出資額、常時雇用する労働者数で決まります。飲食店を含む小売業では、資本または出資額が5000万円以下、常時雇用する労働者数が50人以下という基準があります。またサービス業では5000万以下もしくは100人以下、卸売業では1億円以下もしくは100人以下、その他の業種では3億円以下もしくは300人以下としています。国内労働者の多くは中小企業で働いています。

多くの労働者を支える中小企業への助成を手厚くすることは、社会からの要請とも考えられます。

助成金活用のために専門家に相談を

厚生労働省は雇用上の様々な取り組みに対して助成金を支給する支援制度をしています。事業主は職場環境の向上や雇用改善の制度を導入し、助成金を活用すれば事業にとって大きなプラスになると思います。管轄労働局やハローワークでは各種助成金の相談を受け付けています。また、社会保険労務士などの専門家にも助成金に精通した方がいます。

まずは事業にあった助成金を探し、制度の導入方法などを知ることから始めましょう。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。