健康診断を実施することで、従業員の健康を守るとともに、会社も従業員の健康状態を把握することにつながります。現在では、健康経営がトレンドになるなど、福利厚生の一環で、健康診断だけでなく人間ドックなどの費用負担を実施する企業も増えています。

しかし、法定内健康診断は事業者の義務ではありますが、かかる費用における負担にお悩みの企業の経営者も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、健康診断に活用できる助成金をご紹介します。

助成金が利用できる健康診断とは

事業者の責任として、「労働安全衛生法」では、正社員や常時使用する労働者に対する健康診断の実施が義務付けられています。この「労働安全衛生法」で定められている内容かどうかにより、健康診断は種類分けされています。

法定内健康診断

法定内健康診断は、「労働安全衛生法」に定められており、企業が実施する義務がある健康診断です。
法定内健康診断には、定期的に実施する必要がある一般健康診断と、有害業務に従事する労働者に実施する必要がある特殊健康診断、じん肺健康診断、歯科検診があります。

そのうち、一般的な企業の義務となっている一般健康診断は以下の5種類に分けられています。

  • 雇入時の健康診断
  • 定期健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 給食従業員の検便

事業者は、常時雇用している労働者全員に対し、これらの健康診断が義務付けられています。法定内健康診断は、事業者が負担することが求められており、助成金の利用が可能です。

法定外健康診断

法定外健康診断とは、「労働安全衛生法」に定められた範囲を超えた健康診断のことです。例えば、人間ドックや生活習慣病予防検診などが挙げられます。

法定外健康診断については、企業の義務にはなっていないため、経費を負担しなければならないということはありません。

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健康診断に利用できる助成金

ここでは、健康診断を実施する事業者が利用できる助成金として、人材確保等支援助成金を紹介します。

以前、キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)も健康診断の実施を助成範囲としていましたが、令和4年から「賞与・退職金制度導入コース」に変更されたことで、健康診断は助成対象外になっています。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

人材確保等支援助成金とは、雇用創出のために、労働環境の向上などを図った事業者に対する助成金です。
そのうち、雇用管理制度助成コースは、諸手当や研修、健康づくり、メンター制度などを導入することで、雇用管理を改善させ、離職率の低下への取り組みにおける助成コースとなっています。また、以前は職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)でしたが、平成30年から人材確保等支援助成金へと統合されました。

ただし、令和5年度は、整備計画の受付を休止中です。そのため、令和4年度以降は、令和4年3月31日までに計画を提出している場合のみ手続きできることとなっているため、最新情報については、定期的に厚生労働省のホームページを確認してください。

健康診断の実施により、人材確保等支援助成金を受給するには、本コースで求められる雇用管理制度を導入し、さらに離職率を低下させる必要があります。

助成金の対象となる雇用管理制度

以下の5つのすべてを実施することが必要です。
1.法定内健康診断に加えて、以下の検診のうち、1つ以上の検診を導入していること。

  • 胃がん検診
  • 子宮がん検診
  • 肺がん検診
  • 乳がん検診
  • 大腸がん検診
  • 歯周疾患検診
  • 骨粗鬆症検診
  • 腰痛健康診断

2.医療機関への受診などの費用がかかる場合に、費用の半額以上を事業主が負担していること。
(事業主が、受診などによる費用の全額を負担しない場合は原則対象とならない)
3.事業主が診断結果・所見などの情報を受けて、その状況に応じるために必要な配慮を行うことを目的としたものであること。
4.当該制度を実施する合理的な条件および費用負担について、労働協約または就業規則に明示されていること。
5.雇用管理制度整備計画期間内に退職予定の労働者のみを対象とするものでないこと。

離職率低下における達成目標

実施した取り組みにより、離職率低下における達成目標を立てることが必要です。以下の離職率ポイント以上、離職率を低下させる必要があります。

会社の規模
(雇用保険一般被保険者の人数)
低下させる離職率ポイント
1~9人 15%ポイント
10~29人 10%ポイント
30~99人 7%ポイント
100~299人 5%ポイント
300人以上 3%ポイント

目標達成助成額

離職率を低下した場合、57万円が支給されます。(生産性要件を満たした場合には、72万円。)

離職率の計算方法や詳細、最新情報については、以下のホームページをご覧ください。
外部リンク厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)」

民間の助成金

国や地方自治体が主導している助成金以外に、民間団体が支援制度を設けている場合があります。ここでは、そのうちの一例をご紹介します。

団体名 助成金制度名
一般財団法人あんしん財団 定期健康診断補助金
一般財団法人東京都トラック協会 健康診断助成事業(定期健康診断)

ただし、あんしん財団の定期健康診断の補助金制度は、2024年3月31日の受診分をもって終了予定となっています。人間ドックに対する補助金制度は、継続されます。2024年4月からは、中小企業における従業員の健康管理に関する新サービスが提供されるとのことです。
そのため、あんしん財団の定期健康診断補助金を利用される場合には、期限を確認したうえで活用してください。

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【個人事業主】健康診断に利用できる補助制度

個人事業主が、健康診断に利用できる助成金を紹介します。

協会けんぽの補助制度を利用する

協会けんぽとは、正式名称「全国健康保険協会」のことで、国内最大級の健康保険事業を行っている公法人です。
協会けんぽに加入している人の多くは、中小企業の従業員やその被扶養者となっています。

受給条件は、退職後に全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者となり、受診対象年齢を満たすことです。年度内に、1人1回に限り、健康診断費用の一部を支援してもらえます。

ただし、各健診機関による違いがあるため、詳細については各健診機関に確認してください。

各市区町村の健康診断を利用する

国民健康保険の加入者に対し、各市区町村では、無料~1,000円程度で受診できる健康診断を実施しています。

40~74歳の特定健診は、多くの自治体で無料となっています。お住いの自治体のホームページを確認することで、こうした支援を受けられるでしょう。

個人事業主の方も、こうした補助制度を利用して負担を低減しつつ、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

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まとめ

従業員の健康を守る法定内健康診断は、事業者に法律で義務付けられています。人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)では、健康づくりに関する雇用管理を整えることで、補助を受けられます。また、個人事業主であっても、各地方自治体や民間の補助を利用し、負担を低減することが可能です。

自社の取り組みが、助成金の受給条件を満たしているのかどうか不安という方は、コンサルティング会社に相談することがおすすめです。
助成金・補助金の申請を検討される場合、一度、無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。