2019年4月からついに働き方改革関連法が施行されることになります。今回施行される働き方改革関連法は、有給取得の義務化や残業時間の削減、インターバル制度の導入など雇用主側から見ると、守らなければならないルールが増えたことになりますから、批判の声も一部から漏れていますね。
しかし、この働き方改革は、労働者にとっても雇用主にとっても必要不可欠なものなのです。――今回は、そもそもなぜ働き方改革が必要なのか? なぜこのタイミングで施行されたのかということについてご紹介していきたいと思います。
働き方改革の根っこにあるのは「労働人口の減少」
ご存知の方も多いかもしれませんが、働き方改革の根本にあるのは、労働人口の減少です。日本は超少子高齢化社会に突入しており、労働人口(15歳~65歳)の人口は1990年頃のピーク時と比べて圧倒的に少なくなってきています。
2018年ごろからは、売上は黒字だけど人材の不足によって事業継続が困難になる「人手不足倒産」なんてキーワードもでてきました。働き方改革は、この労働人口の減少に対応するべく推進されるものなのです。日本の経済を発展させていくためには、働いてもらって、海外からお金を引っ張ってきて……みたいなことが必要になりますよね? ですから、労働人口の減少というのは、経済成長の停滞につながるのです。
――とはいっても、「労働人口を増やす」ということは簡単なことではありません。今、まさにこのタイミングから出生率が爆発的に増加したとしても、その子供達が働く年齢になるまでには20年くらいかかりますし、そもそもその出生率が上がらないから困っているわけです。こういったことから、出生率が低い原因を改善して、それまでの間も少ない労働人口で今ある人口だけでなんとかしていく必要があるのです。
さて、今の日本には労働人口の増加を阻害する以下のような課題があります。
- 産後休暇や育児休暇を取りづらい職場環境
- 上昇する社会保険料と低賃金化による若者の貧困
- 晩婚化とお一人様化
- 長時間労働が多く、結婚をする余裕がない
- 多様な働き方が認められず、豊かな生活を送るためには正社員にしがみつくしかない。
数えだしたらキリがありませんが、昔と比べて「子供を産んで、育てにくい社会環境」であることは間違いありません。
ともかく、政府はこういった問題を是正するべく以下のような施策を「働き方改革の3本柱」として推進していく計画を策定します。
- 長時間労働の是正
- 同一労働同一賃金
- 高度プロフェッショナル制度
政府は「長時間労働がなくなれば、時間に余裕が生まれて配偶者探しをする余裕ができるだろう。」「同一労働同一賃金制度の導入によって、非正規雇用であっても実力があれば給与は高くなるから、多様な働き方ができるようになるだろう。」「高度プロフェッショナル制度によって、年収が1075万円を超える労働者が時間に縛られなくなるから、その時間を育児に当ててくれるだろう」――みたいなことを考えているのです。
なぜ、今働き方改革なのか?
「なぜ今なのか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、少子化や労働人口の減少というのは、以前から問題として捉えらてきたものです。ですので、むしろ、「今になってようやく働き方改革」と表現をしたほうが良いのかもしれません。
働き方改革に取り組まなければ日本にも企業にも未来は無くなっていくでしょう。――それほどまでに働き方改革は急務なのです。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説働き方改革は、事業者にとっても必要なこと
働き方改革は、労働者にとってメリットのあることでもありますが、事業者にとってもメリットがあることです。――というよりも、事業者の杜撰な経営が矯正されるといったほうが正しいかもしれません。
これまで日本の経営者は、労働者という個人に頼り切った経営をしてきました。このため、特に生産性を向上させる努力もせず、経営努力によって売上をあげようとしない「直感と経験則による経営」が今も続いています。このため、50年近く先進国で最下位の労働生産性を叩き出してしまっています。
これは、サービス残業を前提とした働き方やITツールの導入を進めてこなかったためです。海外では「データを取得して限りなく失敗しない経営」「ITを活用した作業効率化」が当たり前になっているのに、日本ではそれが進められていないのです。今回の働き方改革を良い機会と捉えて、今一度「生産性」や「労働者の使い方」について検討をして、無駄な作業がないか? 無駄な会議がないか? この業務は事業を行う上で必要なのか? ということを見直していかなくてはなりません。
また、早い段階(他の企業が取り組む前)で働き方改革を推進することで、優秀な人材を確保することができたり、人事戦略的なメリットもあるかもしれません。