2019年4月から施行される「働き方改革関連法」は、話題に上がることは多いですが、「どんな法律なの?」と考えたことはありますでしょうか。

今回は、働き方改革関連法とは何なのか? どのような目的で可決された法律なのか? ということについてご紹介していきたいと思います。

働き方改革関連法とは

「働き方改革関連法」というものは、具体的な法律の名称ではありません。働き方改革関連法は以下の8つの改正労働関連法のことを指します。

  1. 労働基準法
  2. 労働安全衛生法
  3. 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  4. じん肺法
  5. 雇用対策法
  6. 労働契約法
  7. 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  8. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

このため、そもそものルールが異なってきます。例えば今まで雇用主は三六協定を労使間で締結し、労働基準監督署に届け出を行っていれば月45時間以上(事実上上限なし)に残業をさせることが可能でした。しかし、2019年以降は労働基準法が改正されるため、上限が設けられることになり、「いかなる理由があっても規定の時間外労働をさせてはならない」というルールに変更されます。

このように、働き方改革関連法とは、これまでの労働関連の法令に改正が加わったものであると認識すれば良いでしょう。

働き方改革関連法は何のためにあるのか

働き方改革関連法は、一言で言えば内閣が推進する「働き方改革」を実現するためにあるものです。

そもそも働き方改革とは、少子高齢化に伴って減少している労働人口をカバーするために多方面から対策をしていくものです。

具体的に言うと、「生産性の向上」によって少ない人口で高いパフォーマンスを出し、「出生率の向上」によって将来の労働人口減少に歯止めをかけ、「誰もが働きやすい社会の実現」によってどのような人生のステージに置かれる人でも働けるような環境を整えることで、日本の経済成長を促そうという政策です。

日本の労働人口は1995年頃をピークに年々減少しており、2060年にはピーク時の半分、戦後直後以下の労働人口になると考えられています。

引用:総務省

労働人口の減少に対する対策をしなければならないことは火を見るより明らかで、このままでは15歳~64歳の働き世代は最低限の生活をしながら高齢者を支えるためだけに働く社会が実現してしまいます。そうすると、わざわざそんなことをしなければならない国に身を置きたいと思う人もいなくなっていくでしょう。若者はどんどん国外へ流出していき、日本は高齢者しかいない国になってしまうかもしれません。

このように将来危惧される人口減少に対応するべく、政府がようやく重い腰を上げて実施した施策が「働き方改革」なのです。

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具体的にどのような法律が改正されるのか

――では、その労働人口減少という課題に対処するために、どのような法律が改正されることになったのでしょうか。以下では一部ではありますが、代表的な法改正についてご紹介していきたいと思います。

長時間労働の是正

2019年4月からは、時間外労働の時間に上限が設けられます。具体的な上限については以下の通り。

年間720時間、単月100時間、複数月平均80時間

医師のような社会的な役割が大きい職種についてはしばらくの間対象外となりますが、その他の職種の場合はいかなる理由があっても上記上限を超えた時点で労働基準法違反となり、懲役・罰金刑が課せられます。

施工時期については2019年4月からですが、中小企業のみ1年間の猶予期間が設けられており、2020年4月までは従来どおりのルールが適用されます。

有給休暇の取得義務化

次に改正労働基準法によって有給休暇の取得も義務化され、最低でも5日以上の有給を取得させる必要があります。対象となるのは年次有給休暇を10日以上付与される労働者で、具体的には全労働日の8割以上出勤する労働者です。

ここで注意しておきたいのは、パートやアルバイトであっても8割以上出勤をしている労働者は有給休暇取得義務化の対象になるという点です。

有給休暇は基本的に労働者から申し出があった場合に取得させることになりますが、労働者から申し出がなかったからといって、有給を取得させないと、事業主が罰せられることになります。対象となる全社員が有給休暇を最低でも5日以上有給休暇を取得したかどうかは、しっかり管理しなければなりません。

同一労働同一賃金制の導入

働き方改革の目玉である同一労働同一賃金は、「パートタイマーやアルバイトは、正社員と不合理な賃金格差があってはならない」と決められています。

不合理な賃金格差とは、例えば「同じ労働内容を行っているのに賃金が異なる」とか、「正社員よりも高度なレベルの職務を行っているにも関わらず賃金が低い」というものです。

この法律では特に罰則などは定められていませんが、労働者から「不合理だ」と訴えがあった場合は賠償金を支払う必要があります。また、裁判までは行かなくても労働者が労働基準監督署などに駆け込むことで、指導が入ったりする場合もあるでしょう。

労働関連の法律は罰則がないからという理由で遵守しないでいると、思わぬペナルティを受ける可能性もありますので、注意しましょう。

違反しないように注意しよう

働き方改革関連法が施行されることによって、事業者が守らなければならないルールは増えます。しかし、新しいルールはすでに決定されたものであるため、適切な措置をとる必要があるものです。

今なら働き方改革関連法に対応するために助成金を活用することも可能ですので、この機会に改めて労働環境を見直してみて、働き方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか?

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弊社担当のご紹介
佐藤亜樹
佐藤亜樹(助成金コンサルタント)
入社7年目。採用コンサルティングを担当後、中小企業の助成金申請のサポートに従事する。2018年からは助成金を活用した働き方改革関連法に対応するノウハウを提供するセミナーを開催するなど、精力的に活動中。