人手不足が深刻化する現代においては、さまざまな事情を抱えた人材の活用が推進されています。特に、高年齢者や障がい者、母子家庭の母親といった「就職が困難とされる人々」を雇用することは、社会的責任を果たすだけでなく、長期的な人材確保にもつながります。

こうした雇用の促進を目的に設けられているのが、厚生労働省の「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」です。

そこで、この記事では特定就職困難者コースの概要や対象要件、支給額、申請手続きについてわかりやすく解説します。

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金とは、「さまざまな事情により、就職が困難な求職者を雇用した事業主を支援する制度」です。

雇用する求職者に応じて、以下の5つのコースに区分されています。

・特定就職困難者コース
高年齢者・障がい者・母子家庭の母などを雇用する企業が対象のコース

・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障がい者または難治性疾患患者を雇用する企業が対象のコース

・中高年層安定雇用支援コース
就職氷河期を含む中高齢者のうち、十分なキャリア形成ができなかった者を雇用する企業が対象のコース

・生活保護受給者等雇用開発コース
自治体からハローワークに就労支援の要請があった生活保護受給者などを雇用する企業が対象のコース

・成長分野等人材確保・育成コース
上記いずれかの対象者を成長分野などの業務に従事する者として雇用する、もしくは未経験の対象者を雇用し、一定の訓練を実施して賃上げを行う企業が対象のコース

本記事では、このうち「特定就職困難者コース」について取り上げます。その他のコースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】特定求職者雇用開発助成金とは?各コースを徹底解説

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特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象となる事業主・労働者

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは、「高年齢者や障害者などの就職困難者を継続して雇用する労働者として雇用する事業主を支援するコース」です。

ここでは、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象となる事業主・労働者の要件を解説します。

対象となる事業主の要件

特定就職困難者コースで対象となる事業主の主な要件を、以下にまとめました。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 助成金の支給または不支給を決定する審査に必要な書類を整備し、かつ審査に協力する事業主であること
  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により、雇用すること
  • 「雇用保険一般被保険者」または「高年齢被保険者」として雇用し、継続雇用(対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であること)が確実であること

対象となる労働者の要件

特定就職困難者コースでは、以下のような求職者が対象となります。

  • 高年齢者(60歳以上の者)
  • 身体障がい者
  • 知的障がい者
  • 精神障がい者
  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父(児童扶養手当を受けている者に限る)
  • 重度障がい者 など

ただし、以下のような条件もあります。

  • 「高年齢者(60歳以上の者)」以外は、65歳未満の労働者が対象
  • 「正規雇用」「無期雇用」「有期雇用(自動更新)」のいずれかで雇用する者が対象
  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇用すること

この他にも細かな条件があるため、詳細は公募要領を確認するか、助成金コンサルタントに確認してください。

※参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」

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特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の助成額

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の助成額を、以下の表にまとめました。

対象労働者 支給額 助成
対象期間
支給対象期ごとの支給額
短時間労働者以外 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 60万円
(50万円)
1年
(1年)
30万円×2期
(25万円×2期)
重度障害者等を除く身体・知的障害者 120万円
(50万円)
2年
(1年)
30万円×4期
(25万円×2期)
重度障害者等(※2) 240万円
(100万円)
3年
(1年6か月)
40万円×6期
(33万円×3期)
※第3期の支給額は34万円
短時間労働者(※3) 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 40万円
(30万円)
1年
(1年)
20万円×2期
(15万円×2期)
重度障害者等を含む
身体・知的・精神障害者
80万円
(30万円)
2年
(1年)
20万円×4期

※参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」

※()は、中小企業事業主以外の助成額・助成対象期間
※2重度障害者等:重度の身体・知的障がい者、45歳以上の身体・知的障がい者および精神障がい者
※3短時間労働者:一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満である者

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特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請方法

ここでは、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請方法を解説します。

申請の流れ

特定就職困難者コースでは、6か月間の支給対象期ごとに、2~6回に分けて助成金が支給される仕組みです。そのため、申請も一定期間おきに行うことが求められます。

申請の流れを、以下にまとめました。

  1. ハローワークなどから、対象者の紹介を受ける
  2. 対象者を雇用する
  3. 支給申請書類を作成し、労働局またはハローワークに提出する
  4. 支給申請書の内容の調査・確認が行われる
  5. 支給・不支給が決定する
  6. 助成金が支給される

なお、支給申請期間は各支給対象期の末日の翌日から2か月以内に行う必要があるため、忘れずに行いましょう。

また、以下の点にも注意が必要です。

  • 対象労働者が支給対象期の途中に離職した場合、当該支給対象期については原則助成金の支給を受けることはできません。
  • 所定労働時間より著しく実労働時間が短い場合や、週当たりの賃金額が「最低賃金×30時間」を下回る場合には、支給額が減額されることがあります。

申請書類一覧

特定就職困難者コースの支給申請に必要な申請書類を、以下にまとめました。

  • 支給申請書(様式第3号)
  • 賃金台帳等
  • 出勤簿等
  • 対象者であることを証明するための書類
  • 雇用契約書または雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書
  • 支給要件確認申立書

この他にも労働局から書類の提出を求められる可能性があります。日頃から、審査に必要な書類を整備しておき、求められた書類を提出できるようにしておきましょう。

※参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」

まとめ

この記事では、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の概要や対象要件、助成額、申請手続きを解説しました。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、60歳以上の高年齢者、障がい者、母子家庭の母、父子家庭の父など、就職が困難な方を雇用する企業を支援する制度です。活用することで、企業の社会的責任を果たしつつ、人材不足の解消にも寄与します。
支給を受けるためには、一定期間ごとに申請手続きを行う必要がありますが、継続的な支援を受けられるため、特に中小企業にとっては雇用維持や経営安定に役立つ制度といえるでしょう。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントへの依頼がおすすめです。確実な受給を目指すためにも、まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。