働く人々の健康を守るために、企業が取り組む「産業保健活動」はますます重要視されています。しかし、中小企業や個人事業者にとって、産業保健サービスの導入は費用や体制の面でハードルが高いといえるでしょう。

こうした企業において注目されている制度の一つに、「団体経由産業保健活動推進助成金」が挙げられます。地域産業保健センターや事業者団体などを通じた産業保健サービスを受ける際の費用負担を低減できます。
この記事では、団体経由産業保健活動推進助成金の概要や対象事業主、助成金額、申請方法をわかりやすく解説します。

団体経由産業保健活動推進助成金とは

団体経由産業保健活動推進助成金とは、中小企業や労災保険の特別加入者を支援する事業主団体などが、傘下の中小企業などに対して産業保健サービスを提供した際に、その費用の一部を助成する制度です。

労働者の健康管理を目的とした事業であり、これまで多くの事業主団体に活用されています。

対象となる事業主団体

団体経由産業保健活動推進助成金の対象となる事業主団体は、「事業主団体など」と「労災保険の特別加入団体」です。

以下に、事業主団体などの主な要件をまとめました。

事業主団体などの要件
1 以下のいずれかに該当する事業主団体などであること
1.以下のすべての要件を満たす事業主団体または連合団体

  • 傘下の事業主のうち、労働者を雇用する事業主が3以上あること
  • 1年以上の活動実績があること
  • 事業協同組合や信用協同組合、企業組合、商工組合などに該当する団体であること

2.以下のすべての要件を満たし、1年以上活動実績がある共同事業主

  • 構成事業主が10以上で組織され、共同するすべての事業主の合意に基づく協定書を締結していること
  • 上記協定書は、代表事業主名、共同事業主名、産業保健サービス提供事業に要する全ての経費の負担に関する事項、有効期間及び協定年月日を掲げるものであること
  • 上記協定書は、共同事業主を構成するすべての事業主の代表者が記名したものであること
2 産業保健サービスの提供対象となる構成事業主は、労働者を雇用する事業主であること
3 中小企業事業主の占める割合が、構成事業主(共同事業主については、代表事業主を除く事業主)全体の3分の1を超えていること
4 以下のすべての要件を満たすこと

  • 事業主団体などの事業活動状況に問題がないこと
  • 事業主団体などの財政が健全であること
  • 過去に補助金の不正使用などの事案がないこと
  • その他、事業実施上の問題がないこと

また、以下に労災保険の特別加入団体の要件の主な要件をまとめました。

労災保険の特別加入団体の要件
1 以下のいずれかに該当すること

  • 労働者災害補償保険法第33条第3号に掲げる者の団体
  • 同条第5号に掲げる者の団体
1年以上の活動実績があること
以下のすべての要件を満たすこと

  • 特別加入団体の事業活動状況に問題がないこと
  • 特別加入団体の財政が健全であること
  • 過去に補助金の不正使用などの事案がないこと
  • その他、事業実施上の問題がないこと

参照:労働者健康安全機構「助成金」

不支給となる事業主団体の要件

不支給となる事業主団体の主な要件をまとめました。

  • 交付申請書の提出日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度において、労働保険料を滞納している場合(ただし、労働者災害補償保険の適用事業主に該当しない場合は除く)
  • 過去3年間において、労働者災害補償保険法第3章の2または雇用保険法第4章の規定により支給される給付金について、不正受給または不正に受給しようとした場合
  • 事業主団体などまたは特別加入団体、役員などに暴力団員に該当する者がいる場合、暴力団員が経営に実質的に関与している場合およびこれらの企業であると知りながら、不当利用していると認められた場合
  • 過去1年前の間に、労働関係法令違反を行ったことが明らか(司法処分など)である場合

この他にも不支給となる要件の詳細については、公式ホームページを確認するか、助成金コンサルタントに相談するなどして、自社が該当しないかどうかを把握しましょう。

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団体経由産業保健活動推進助成金の対象となる産業保健サービス

団体経由産業保健活動推進助成金の対象となる産業保健サービスは、大きく8つに区分されます。ここでは、それぞれの産業保健サービスについて解説します。

概要 備考
1 医師、保健師などによるストレスチェックの実施及び集団分析
  • 労働者数50人未満の事業場に限る
  • ストレスチェックのみ実施する場合も、助成対象
2 歯科医師による労働者などの健康診断結果の意見聴取 健康診断実施費用は、助成対象外
3 医師、保健師による保健指導 健康診断実施費用は、助成対象外
4 医師による面接指導・意見聴取 高ストレス者に対する面接指導、面接指導結果に基づく意見聴取が対象
5 医師、保健師、看護師などによる健康相談対応
  • 相談体制の整備だけでは助成対象外
  • メンタルヘルスにかかる相談や化学物質取扱に伴う健康相談なども含まれる
6 医療機関、事業場、両立支援コーディネーターなどによる個別の労働者を対象とした治療と仕事の両立支援
  • すべての支援は、支援を必要とする労働者などの就労継続に資することが原則
  • 主治医意見書などの取得、主治医や両立支援コーディネーターへの相談にかかった費用が助成対象
7 医師、保健師、看護師などによる職場環境改善支援 ストレスチェック実施後の集団分析結果を活用した職場環境改善支援などが含まれる
8 医師、保健師、看護師などによる健康教育研修、事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発
  • 健康経営にかかるものを含め、産業保健に関する内容の研修などが含まれる
  • 医師、保健師などの産業保健スタッフによる研修の内容提案、研修実施に必要な講師費用や会場賃借費用、テキスト費用などが助成対象

参照:労働者健康安全機構「助成金」

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団体経由産業保健活動推進助成金の助成額・助成上限額

ここでは、団体経由産業保健活動推進助成金の助成対象となる経費や助成額・助成上限額を解説します。

助成対象となる経費

団体経由産業保健活動推進助成金の対象となる経費は、基本的には産業保健サービスの提供に使用したものとして明確に区分できるものです。
取り組む産業保健サービスによって異なる場合がありますが、いずれも見積書や領収書などの証拠書類によって金額が確認できるものに限定されます。

以下に、想定されている経費の具体例をまとめました。

  • 報酬:専門家への謝礼として支払われる経費
  • 旅費:情報収集や調査、打ち合わせのために支払われる経費
  • 会議費:会議・セミナーなどの開催に支払われる経費
  • 印刷製本費:必要な研修資料、パンフレット・ポスターなどの作成に支払われる経費
  • 事務費用:構成事業主などとの連絡調整等の事務を、産業医や保健師など以外の外部機関に行わせる場合に、当該外部機関に対して支払う費用

助成額・助成上限額

団体経由産業保健活動推進助成金の助成額・助成上限率を、以下にまとめました。

助成額 最大で各上限額の9/10
助成上限額
  1. 医師、保健師などによるストレスチェックの実施及び集団分析:60万円(120万円)
  2. 医師、歯科医師による健康診断結果の意見聴取:60万円(120万円)
  3. 医師、保健師による保健指導:60万円(120万円)
  4. 医師による面接指導・意見聴取:60万円(120万円)
  5. 医師、保健師、看護師等による健康相談対応:20万円(40万円)
  6. 医療機関、事業場、両立支援コーディネーターなどによる個別の労働者を対象とした治療と仕事の両立支援:130万円(260万円)
  7. 医師、保健師、看護師等による職場環境改善支援:130万円(260万円)
    医師、保健師、看護師等による健康教育研修・事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発:20万円(40万円)

※()内は一定の要件を満たした団体の上限額

参照:労働者健康安全機構「助成金」

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団体経由産業保健活動推進助成金の申請の流れ

団体経由産業保健活動推進助成金の申請の流れをまとめました。

  1. 事業実施計画などの必要書類を準備し、交付申請を行う
  2. 書類をもとに審査され、交付決定通知が届く
  3. 計画書に基づき、産業保健サービスを提供する
  4. 産業保健サービス実施後、支給申請を行う
  5. 実施結果報告をもとに審査され、支給・不支給が決定する
  6. 助成金が振り込まれる

各手順には、期日が設定されています。
令和7年度の場合には、交付申請は令和7年11月28日(金)必着となっているため、早めに準備しましょう。

申請に必要な書類一覧

団体経由産業保健活動推進助成金の交付申請に必要な書類をまとめました。

  • 【所定様式あり】団体経由産業保健活動推進助成金交付申請書
  • 【所定様式あり】団体経由産業保健活動推進助成金事業実施計画
  • 定款、会則、協定書など(1年以上の活動実績が客観的に分かる書類、事業活動状況に問題がないことが分かる書類)
  • 直近2年間の収支決算書(活動実績が2年に満たない場合は、直近1年間)
  • 事業を実施するために必要な経費の算出根拠を確認するための見積書などの書類

参照:労働者健康安全機構「助成金」

所定様式がある書類については、公式ホームページからダウンロードしてください。

まとめ

この記事では、団体経由産業保健活動推進助成金の概要や対象事業主、助成額、申請方法を解説しました。

団体経由産業保健活動推進助成金は、中小企業や労災保険の特別加入者を支援する団体を通じて、傘下の中小企業などに勤める従業員の健康管理を促進します。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。