障がい者の法定雇用率が段階的に引き上げられている中で、職場適応援助を行う法人においては、職場適応援助者(ジョブコーチ)を障がい者雇用を実施する企業に派遣し、サポートすることが求められています。
職場適応援助を行う障がい者就業・生活支援センターの指定法人などの法人や企業在籍型のジョブコーチによる職場適応援助を行う事業主は、職場適応援助者助成金を受給することが可能です。

そこで、この記事では職場適応援助者助成金の概要や支給要件、助成金額について詳しく解説します。

職場適応援助者助成金とは

職場適応援助者助成金とは、「障がい者の職場への適応・定着を図るために、職場適応援助者(ジョブコーチ)を企業に派遣した法人もしくは企業内に在籍させた事業者を助成する制度」です。

取り組み内容により、以下の2つの制度に区分されています。それぞれの制度については、のちほど詳しく解説します。

  • 訪問型職場適応援助者助成金
  • 企業在籍型職場適応援助者助成金

なお令和2年度までは、障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース・障害者職場定着支援コース)として都道府県労働局が管轄していましたが、令和3年度に「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」へと移管されました。

職場適応援助者(ジョブコーチ)とは

職場適応援助者(ジョブコーチ)とは、「障がい者の雇用受け入れを行う企業に対して、受け入れ体制整備に関する支援を提供する人」です。

具体的には、以下のような支援を行います。

  • 障がい者の特性や強み、配慮が必要な点について企業側に説明し、理解を深める
  • 障がい者に適した作業環境の改善
  • 障がい者に適した雇用管理・業務内容に関する提案や相談
  • 障がい者との接し方やコミュニケーションに関するアドバイス

また障がい者側にも以下のような支援を行います。

  • 障がい者に適した就職先のマッチング支援
  • 障がい者の職務遂行に関する指導
  • 職場内におけるコミュニケーションの支援
  • 就業における体調管理や生活リズムに関する支援

このように、企業と障がい者の双方に支援を行うことで、両者がスムーズに仕事を行えるように仲介人としての役割を果たします。

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職場適応援助者助成金(訪問型職場適応援助者助成金)とは

訪問型職場適応援助者助成金とは、「障がい者を雇用する企業にジョブコーチを無料で派遣し、職場適応援助を行う法人を助成する制度」です。

この制度は、障害者を直接雇用する事業主ではなく、ジョブコーチを派遣する法人が対象であることに注意しましょう。

対象となる法人・障がい者・事業主・援助者の要件

ここでは、支給対象となる法人(助成金を受給できる団体)・障がい者・事業主(障がい者を雇用する企業)・援助者(ジョブコーチ)の主な要件を解説します。

わかりやすいように主要な用件のみまとめているため、詳細については高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページをご確認、または助成金コンサルタントにご相談ください。

【支給対象となる法人】
支給対象となる法人の主な要件をまとめました。

  • 社会福祉法に規定されている社会福祉法人、その他障がい者の雇用促進にかかる事業を行う法人であること
  • 法人格を有する法人であること
  • 訪問型職場適応援助者養成研修または厚生労働大臣が定める検収を修了した方で、法人が雇用している方または法人の代表者、役員を、ジョブコーチとして配置している法人であること
  • 障がい者雇用にかかる支援の実績があること

【支給対象となる事業主】
支給対象となる事業主の主な要件をまとめました。

  • 支援を実施する法人以外の法人
  • 支援対象障がい者を、支援計画に記載された支援期間の開始日から2か月以内に雇用予定の事業主、または支援対象障がい者を雇用している事業主

【支給対象障がい者の要件】
支給対象となる障がい者の主な要件をまとめました。

  • 法人の代表者もしくは役員など、それらの家事使用人、事業主と同居の親族または学生(昼間授業を受けている方)ではない方(雇用保険の適用を受ける方は除く)
  • 1週間の所定労働時間が10時間以上の方
  • 地域センターが策定する職業リハビリテーション計画において、訪問型職場適応援助者による支援が必要であると判断された方で、支援計画による支援を受ける方
  • 次のいずれかに該当する障がい者:「身体障がい者」「知的障がい者」「精神障がい者」「発達障害者」「難病などにかかっている方」「高次脳機能障害である方」「その他ジョブコーチの援助が必要と機構が認める障がい者」

【訪問型職場適応援助者の要件】
支給対象となるジョブコーチの主な要件をまとめました。

  • 機構が行う研修または厚生労働大臣が定める研修を修了した方であって、法人が雇用している方または法人の代表者もしくは役員
  • 障害者の就労支援にかかる業務を1年以上行った方

参照:障害者雇用納付金関係助成金のごあんない

支給要件

訪問型職場適応援助者助成金を受給するには、対象となる障がい者に対して以下の支援を行うことが求められます。

  • 訪問型支援計画書の策定
  • 訪問型職場適応援助者支援記録票の作成
  • フォローアップ計画書の策定
  • 支援対象障がい者に対する支援
  • 支援対象事業主に対する支援
  • 家族に対する支援
  • 精神障がい者の状況確認
  • 地域センターが開催するケース会議への出席
  • その他、地域センターが必要と認めた支援

参照:障害者雇用納付金関係助成金のごあんない

助成金額

訪問型職場適応援助者助成金の助成金額は、以下の規定額の合計額です。

  • 訪問型職場適応援助にかかる支給額
  • 訪問型職場適応援助者養成研修に要した費用にかかる支給額
  • 事業実施施設の複数の訪問型職場適応援助者が、同一の支援対象障害者を支援する場合の支給額
  • 複数の事業実施施設の訪問型職場適応援助者が、同一の支援対象障害者を支援する場合の支給額

なお、支給期間は支援対象障がい者1人1回の援助につき最長1年8か月(精神障がい者は最長2年8か月間)となります。

参照:障害者雇用納付金関係助成金のごあんない

ただし、それぞれに上限や要件が規定されているため、詳細は高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページをご確認または助成金コンサルタントにご相談ください。

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職場適応援助者助成金(企業在籍型職場適応援助者助成金 )とは

企業在籍型職場適応援助者助成金とは、「自社で雇用する障がい者に対して、社内に配置しているジョブコーチによって職場適応援助を行う事業主を助成する制度」です。

業在籍型職場適応援助者助成金は、自社で障がい者を雇用する事業主が対象です。ただし、障がい者の雇い入れだけでなく、ジョブコーチによる支援体制を社内に構築することが求められます。

対象となる障がい者・事業主・援助者の要件

ここでは、対象となる障がい者・事業主・援助者(ジョブコーチ)の主な要件を解説します。

ただし、わかりやすいように主要な用件のみまとめているため、詳細については高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページをご確認または助成金コンサルタントにご相談ください。

【支給対象となる事業主】
支給対象となる事業主の主な要件をまとめました。

  • 企業在籍型職場適応援助者の配置を行う事業主

ここでいう「配置」とは、対象となる障がい者の所定労働日や所定労働時間において、必要な援助を常時行うことが可能な体制を整備することが求められます。

【支給対象障がい者の要件】
支給対象となる障がい者の主な要件をまとめました。

  • 法人の代表者もしくは役員など、それらの家事使用人、事業主と同居の親族または学生(昼間授業を受けている方)ではない方(雇用保険の適用を受ける方は除く)
  • 1週間の所定労働時間が10時間以上の方
  • 次のいずれかに該当する障がい者:「身体障がい者」「知的障がい者」「精神障がい者」「発達障害者」「難病などにかかっている方」「高次脳機能障害である方」「その他ジョブコーチの援助が必要と機構が認める障がい者」

【企業在籍型職場適応援助者の要件】
支給対象となるジョブコーチの主な要件をまとめました。

  • 機構が行う研修または厚生労働大臣が定める研修を修了した方で、企業在籍型職場適応援助者による援助の実施に関し、必要な相当程度の経験や能力を有すると機構が認めた方(法人の代表者もしくは役員など、学生、家事使用人または事業主と同居の親族は除く)
  • はじめて支援を行う際、地域センターが指定する配置型職場適応援助者とともに支援する「ペア支援」を行うこと

参照:障害者雇用納付金関係助成金のごあんない

支給要件

企業在籍型職場適応援助者助成金を受給するには、対象となる障がい者に対して以下の支援を行うことが求められます。

  • 支援対象障がい者および家族に対する支援
  • 事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整
  • 関係機関との調整
  • その他、地域センターが必要と認めた支援

参照:障害者雇用納付金関係助成金のごあんない

助成金額

企業在籍型職場適応援助者助成金の助成金額は、事業主の事業規模・支援対象障がい者の就業形態に応じて、以下のように異なります。

  • 一般労働者:対象期間における所定労働時間が120時間以上/月の労働者
  • 短時間労働者:対象期間における所定労働時間が80時間以上120時間未満/月の労働者
  • 特定短時間労働者:重度身体障がい者・重度知的障がい者、精神障がい者で、対象期間における所定労働時間が40時間以上80時間未満/月の労働者
対象者が、精神障がい者以外の場合
障がい者の雇用形態 支給限度額 支給期間
一般労働者 中小企業事業主 月8万円 6か月まで
中小企業事業主以外 月6万円
短時間労働者 中小企業事業主 月4万円
中小企業事業主以外 月3万円
特定短時間労働者 中小企業事業主 月2万円
中小企業事業主以外 月1万5,000円
対象者が、精神障がい者の場合
障がい者の雇用形態 支給限度額 支給期間
一般労働者 中小企業事業主 月12万円 6か月まで
中小企業事業主以外 月9万円
短時間労働者 中小企業事業主 月6万円
中小企業事業主以外 月5万円
特定短時間労働者 中小企業事業主 月3万円
中小企業事業主以外 月2万円

参照:障害者雇用納付金関係助成金のごあんない

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まとめ

この記事では、職場適応援助者助成金の種類や支給要件、助成金額について解説しました。

職場適応援助者助成金は、障がい者の雇用や職場定着において重要な役割をもった制度です。障がい者雇用の支援を行う法人だけでなく障がい者雇用を促進する事業主にとっても、費用負担の低減のために活用できる制度です。
ただし、細かな要件があるため、はじめて取り組む際には支給要領をよく理解することが必要です。

そこで、職場適応援助者助成金の受給を検討している企業の方は、プロのコンサルタントに依頼することがおすすめです。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。