厚生労働省は、さまざまな条件によって就職が難しい人の雇用を促進するために、特定求職者雇用開発助成金を設けています。

人材不足に悩む企業が特定求職者雇用開発助成金を活用すれば、助成金を受給しながら新たな人材を雇用することが可能です。経済的な負担を軽減できるため、多くの企業が本制度を活用しています。

そこで、この記事では特定求職者雇用開発助成金の申請方法や申請時の注意点を解説します。

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金とは、就職困難な理由を抱えた求職者を新たに雇い入れる事業主を支援する制度です。

以下の5つのコースがあり、それぞれ支給要件や助成金額は異なります。

コース名 対象労働者
特定就職困難者コース 高齢者や障がい者、母子家庭の母など
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース 発達障がい者や難治性疾患患者
就職氷河期世代安定雇用実現コース 就職氷河期に正規雇用の機会を逃し、十分なキャリア形成ができなかった人
生活保護受給者等雇用開発コース 生活保護受給者や生活困窮者
成長分野等人材確保・育成コース 高齢者や障がい者、業務未経験の就職困難者など

各コースの支給要件や助成金額は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】特定求職者雇用開発助成金とは?各コースを徹底解説

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特定求職者雇用開発助成金の申請方法

ここでは、特定求職者雇用開発助成金の申請方法について解説します。

1.ハローワークに求人の申し込み

特定求職者雇用開発助成金は、どのコースもハローワークや地方運輸局、適正な運用を行う特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者、無料船員職業紹介事業者の紹介で雇い入れた場合のみ、助成金の対象となります。

そのため、まずはハローワークなどの機関に求人の申し込みを行うことが必要です。

「雇用保険の適用事業所であること」や、「採用日前後6か月間において事業主都合による解雇をしていないこと」などの事前に調査できる支給要件については、この時点で確認することがおすすめです。

2.対象労働者の雇い入れ

ハローワークなどの機関から、求人票に適した求職者が紹介されます。正社員または無期雇用者等(有期雇用である場合は「自動更新」(本人が望む限り更新ができる場合に限るとすること)として雇用したのち、対象労働者に対して雇用保険を加入させます。

この際、以下の条件に該当すると助成金の対象外となる場合があるため、注意しましょう。

  • ハローワークの紹介以前に、雇用に向けて選考を開始していいた労働者を雇い入れた場合
  • 職業紹介時点で、在職者である場合
  • 採用した事業所と過去3年以内に就労させたことがあったり、事業主と3親等以内の親族であったりなどの関係がある場合
  • ハローワークなどの紹介時点で、雇用保険被保険者など失業と同様の状態にあると認められない労働者を雇い入れた場合
  • 雇入れ日の前日から過去3年間に、職場適応訓練(短期の職場適応訓練を除く)を受けたことのある人をこの職場適応訓練を行った事業主が雇い入れる場合
  • 性風俗関連営業など行っており、雇用した労働者が接待業務などに従事する労働者の場合
  • 支給対象期間の途中で、対象労働者が離職した場合

雇用した労働者は長期的に雇用することが前提です。特定求職者雇用開発助成金を得るためではなく、あくまで自社の人材確保のために雇用を行いましょう。

3.助成金の第1期支給申請

基本的に支給対象期の末日の翌日から2か月以内に、助成金の第1期支給申請を行います。ハローワークまたは会社が所在している都道府県の労働局へ申請書類を提出します。

主な申請書類
  • 支給申請書
  • 賃金台帳など
  • 出勤簿など
  • 対象者であることを証明するための書類
  • 雇用契約書または雇入れ通知書
  • 対象労働者雇用状況等申立書
  • 支給要件確認申立書

※他に、就業規則等の提出を求められる場合があります。
コースによっては、この他にも提出書類があるため、申請書類一覧を確認しましょう。また労働局から別途書類を求められる場合もあります。

4.支給申請書の内容の審査

提出した支給申請書の記載事項などを支給要件に照らして審査が行われます。審査には一定の期間がかかります。

5.支給・不支給決定

審査の結果、適正と認められた場合には助成金が支給されます。審査結果は申請した事業主に通知書を送付して通知されます。

6.助成金の支給

支給決定から一定期間後に、事業主指定の金融機関口座に助成金が振り込まれます。第2期以降も同様に支給対象期(6か月)ごとに申請することで、助成金を受給できます。

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特定求職者雇用開発助成金の申請時における注意点

ここでは、特定求職者雇用開発助成金を申請時の注意点を解説します。

雇用関係助成金の共通要件も満たす必要がある

特定求職者雇用開発助成金は、雇用に関する助成金の総称である雇用関係助成金のうちの一つです。そのため特定求職者雇用開発助成金を受給するためには、雇用関係助成金の共通要件も満たすことが求められます。

雇用関係助成金の共通要件を以下にまとめました。

受給できる事業主
  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 支給のための審査に必要な書類を整備・保管し、提出を求められた際は応じること
  • 支給のための審査に実地調査を求められた場合、受け入れること
  • 申請期間内に申請を行うこと
受給できない事業主
  • 平成31年4月1日以降に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定または支給決定の取り消しを受けた場合、不支給決定日または支給決定取消日から5年を経過していない事業主
  • 平成31年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について、申請事業主の役員に他の事業主の役員として不正受給に関与した役員などがいる事業主
  • 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
  • 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
  • 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主
  • 事業主または事業主の役員などが、暴力団と関わりのある場合
  • 事業主または事業主の役員などが、暴力主義的破壊活動を行ったまたは行う恐れのある団体に属している場合
  • 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
  • 管轄労働局長が審査に必要な事項について確認を行う際に協力しない事業主
  • 不正受給が発覚した際に、事業主名および役員名の公表および請求金の返還などについて、あらかじめ承諾していない事業主
  • 支給申請書などに事実と異なる記載または証明を行った事業主

参考:雇用関係助成金の申請にあたって

支給期ごとに申請する必要がある

特定求職者雇用開発助成金では、支給対象期(6か月間×2~6回)が定められています。そのため、申請も支給期ごとに行うことが必要です。支給対象期の末日の翌日から2か月以内であるため、忘れずに申請しましょう。

例えば、4月1日に事業主が高齢者を雇い入れ、賃金締切日が毎月15日の場合には、以下のように支給期や支給申請期間が決まります。

雇用日 賃金締切日 起算日 第1期支給対象期 第1期申請期間 第2期支給対象期 第2期申請期間
4月1日 4月15日 4月16日 4月16日~10月15日 10月16日~12月15日 10月16日~4月15日 4月16日~6月15日

トライアル雇用助成金と併用できる

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)は、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)と併用できます。

ただし、障がい者トライアル雇用により雇用した対象労働者をトライアル雇用終了後も引き続き雇用する場合、特定求職者雇用開発助成金の受給は第2期支給対象期分からとなります。

また併用する場合には、トライアル雇用助成金と特定求職者雇用開発助成金のどちらも、それぞれ支給申請を行う必要があることにも注意しましょう。

関連記事:【2024】障害者トライアルコースを解説|トライアル雇用助成金

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まとめ

この記事では、特定求職者雇用開発助成金の申請方法や注意点について解説しました。

就職困難な背景をもった人材を雇用する際には、特定求職者雇用開発助成金を活用することで、かかる費用を低減できます。支給対象期分ごとの申請が必要であるため、早めに必要書類を準備しましょう。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。