近年、多くの企業が非正規雇用の従業員を正社員に転換する動きを見せています。安定した労働力の確保や従業員のモチベーション向上、専門スキルの内部蓄積などが目的です。
その際、自社の費用負担を軽減しながら正社員化を実施できる制度として、キャリアアップ助成金があります。しかし、「キャリアアップ助成金の取り組みや手続き、申請書類の提出に不安がある」という企業も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事ではキャリアアップ助成金を受給するために必要な要件・申請書類・手続きをチェックリストとしてまとめています。これから申請を検討している企業はぜひご活用ください。
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、パート・アルバイトや派遣社員などの非正規雇用労働者のキャリアアップの促進を目指した取り組みを支援する助成金です。
正社員化や処遇改善といった取り組みにより、以下の7つのコースに分けられています。
正社員化支援 | 正社員化コース | 有期雇用労働者等を正社員化 |
---|---|---|
障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換 | |
処遇改善支援 | 賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額 |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用 | |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し支給または積立てを実施 | |
短時間労働者労働時間延長コース | 有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用 | |
社会保険適用時処遇改善コース | 有期雇用労働者等に新たに社会保険を適用させるとともに、労働者の収入を増加させる |
今回は、これらのコースのうち正社員化コースについて取り上げます。また、以下の記事で、キャリアアップ助成金の各コースの概要を詳しく解説しています。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!


キャリアアップ助成金を受け取るまでの流れ
ここでは、キャリアアップ助成金を受け取るまでの流れを解説します。
1.計画の作成・提出
助成金の対象となる取り組みや対象者を明確にし、必要書類を準備します。労働局にキャリアアップ計画書を提出する際は、内容が助成金の要件に沿っているかを事前に確認し、漏れや不備がないように注意します。
2.取り組みの実施
キャリアアップ計画に基づき、賃金規程の改訂や研修の実施、雇用管理制度の整備などの取り組みを行います。実施状況を記録・保存しておくことで、支給申請や審査の際にスムーズに自社の取り組みを証明することができます。
3.支給申請
実施した内容や経費などの証拠書類や対象期間中の帳簿類を整理し、助成金の支給申請を行います。必要書類に不備があると審査が遅れるため、記入漏れや添付書類の不足の有無を確認が重要です。
4.審査
労働局が提出された書類を確認し、計画通りに取り組みが実施されたかを審査します。書類の記載内容に不明点がある場合は追加資料の提出や補足説明を求められることがあります。
5.受給
審査が完了し、問題がなければ助成金が指定口座に振り込まれます。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説【支給要件編】キャリアアップ助成金(正社員化コース)のチェックリスト
キャリアアップ助成金(正社員化コース)を受給するには、支給要件を満たしている必要があります。以下に主な支給要件をまとめましたので、チェックリストを用いて、自社の体制を整えましょう。
対象となる事業主の支給要件
まず、対象となる事業主の主な支給要件におけるチェックリストを紹介します。
番号 | チェックリスト |
---|---|
1 | 雇用保険適用事業所である |
2 | 事業所にキャリアアップ管理者を置いている |
3 | 対象労働者の労働条件や勤務状況、賃金の支払いなどを明示できる書類を整備している |
4 | キャリアアップ計画期間内に、キャリアアップに実際に取り組んでいる |
5 | 支給申請をする前々年度以前の労働保険料を滞納していない |
6 | 支給申請日の前日から過去1年間、労働関係法令を遵守している |
7 | 有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度を、または、就業規則または労働協約などに規定している |
8 | 賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等 を有期雇用労働者等に適用している |
9 | 8の適用が6か月以上である有期雇用労働者等を7に則って、正規雇用労働者に転換した、または継続して6か月以上同一の組織単位における業務に従事している派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用した |
10 | 9の労働者を6か月間継続して雇用し、賃金を支給した (正社員転換前の賃金と比較して、正社員転換後の賃金を3%以上増額している) ※実費補填手当、毎月変動し処遇改善が判断できない手当、賞与は比較対象から除外 |
対象となる労働者の支給要件
ここでは、対象となる労働者の主な支給要件におけるチェックリストをまとめました。
1 | 有期雇用労働者または無期雇用労働者 |
---|---|
2 | 正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でない |
3 | 正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者 |
4 | 支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者 |
5 | 支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること |
6 | 正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること |
7 | 支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと |
8 | 障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること |
9 | 雇入れ日から起算して1年未満の新規学卒者でないこと(2025年より追加) |
自社の取り組みが支給要件を満たしているかどうかの確認に活用してください。
ただし、この他にも微細な条件があるため、助成金コンサルティング業者に相談するか助成金コンサルティング業者に相談するか、厚生労働省「キャリアアップ助成金」をご覧ください。


【申請書類編】キャリアアップ助成金(正社員化コース)のチェックリスト
ここでは、キャリアアップ助成金(正社員化コース)における申請書類一覧や書類作成の注意点をチェックリストにして紹介します。
必要書類一覧
キャリアアップ助成金の正社員化コースで提出する必要のある申請書類をチェックリストにまとめました。
番号 | チェックリスト |
---|---|
1 | 管轄労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画書 |
2 | キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号) |
3 | 正社員化コース内訳(様式第3号 別添様式1-1) |
4 | 正社員化コース対象労働者詳細(様式第3号 別添様式1-2) |
5 | 支給要件確認申立書(共通要領 様式第1号) |
6 | 支払方法・受取人住所届(未登録の場合のみ)・通帳等の写し |
7 | 労働協約もしくは就業規則(その他準ずるもの) |
8 | 対象労働者の転換前後の雇用契約書または直接雇用後の労働 条件通知書または雇用契約書 |
9 | 対象労働者の賃金台帳 |
10 | 賃金3%以上増額に係る計算書 |
11 | 対象労働者の出勤簿もしくはタイムカード |
12 | 中小企業事業主である確認書類(中小企業の場合のみ) |
上記で示した様式番号は、年度改定によって変動します。そのため、最新様式をダウンロードして使用するように注意してください。
書類作成の注意点
ここでは、キャリアアップ助成金(正社員化コース)における書類作成の注意点をチェックリスト形式にしてまとめました。
1 | 計画書・申請書の記入漏れがないか |
---|---|
2 | 署名・押印に漏れがないか |
3 | 就業規則や雇用契約書、給与台帳といった必要添付書類がすべて揃っているか |
4 | 提出書類の内容と助成要件との整合性があるか |
5 | 提出期限中に提出できるか |
キャリアアップ計画書の作成方法や就業規則については、以下の記事で解説していますので、参考にしてください。
関連記事:【記入例あり】キャリアアップ計画書とは?目的や作成方法、提出先までを解説
関連記事:【規定例あり】キャリアアップ助成金に対応した就業規則とは?必要事項を解説
また、この他にも以下の加算措置の適用を受ける場合には、追加書類が必要です。支給要件を満たしているかどうかとあわせて、厚生労働省のホームページを確認しましょう。
- 多様な正社員(勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員)に転換した場合
- 母子家庭の母や父子家庭の父などを転換した場合
- 派遣労働者を直接雇用した場合
- 人材開発支援助成金の訓練修了後に正規雇用に転換した場合
- 特定紹介予定派遣労働者を直接雇用した場合
上記の書類に記入漏れや間違いがあると、再提出になる可能性があります。提出期限ぎりぎりに間違いがあると、申請期限に間に合わない可能性も出てきます。そのため、申請書類については事前に準備することがおすすめです。
申請書類は原則として都道府県労働局、場合によりハローワークに提出します。各労働局でもチェックリストを公開していますので、最新情報や詳細は各労働局のホームページをご覧ください。
【申請手続き編】キャリアアップ助成金(正社員化コース)のチェックリスト
キャリアアップ助成金の正社員化コースで行う必要がある申請手続きをチェックリストにまとめました。
番号 | チェックリスト |
---|---|
1 | 【取り組み前】キャリアアップ計画書を作成し、取組実施日の前日までに管轄のハローワークなどに提出する |
2 | 【取り組み前】就業規則や労働協約などに転換制度について規定、周知し、必要に応じて労働基準監督署に提出する |
3 | 【取り組み実施】規程に従って対象労働者を正社員に転換し、その後6か月間継続して雇用し、賃金を支払う |
4 | 【取り組み後】6か月目の賃金を支給した日の翌日~2か月以内に、支給申請書類を事業所の住所を管轄する労働局やハローワーク等に提出する |
すべての項目を実施したのち、追加で労働局の審査官や監査官による実地調査が必要になる可能性があります。その際には、審査官らが事務所を訪問し、現地で書類のチェックや聞き取り調査が行われます。


チェックリストで押さえるべきよくある失敗とは
キャリアアップ助成金の申請では、提出書類の不備や手続きの遅れなどが原因で支給が受けられないケースがあります。ここでは、特に注意したい代表的な失敗について解説します。
必要書類に不備がある
計画書や申請書の記入漏れ、添付書類の不足、日付や人数、金額の整合性の不備などは、申請が却下される大きな原因です。
事前にチェックリストを作成し、書類の漏れや誤記がないかを必ず確認しましょう。
申請期限切れ
提出期限を過ぎてしまったり、計画提出や事業実施日が不明確なまま申請を行ったりすると、支給対象外となる場合があります。
提出期限や重要日程はカレンダーに記入し、余裕を持って準備することが重要です。
支給要件を満たしていない
労働者の対象条件や雇用形態が助成金の要件に合致していなかったり、実施した取り組みが助成金コースの条件に沿っていなかったりすると、支給を受けられません。
まずは事前に支給要件を確認し、計画・実施内容が条件に適合しているかを慎重にチェックすることが重要です。
まとめ
キャリアアップ助成金の正社員化コース申請時にあったら嬉しいチェックリスト一覧を紹介しました。
せっかく取り組みを行っても、申請手続きや書類に漏れや間違いがあると、受給できないこともあります。
そのため、チェックリストを活用することがおすすめです。より確実に受給を目指す場合には、プロのコンサルティング業者に申請サポートを依頼すると良いでしょう。
これからキャリアアップ助成金の申請を検討される場合には、まずプロのコンサルティング業者が行う無料相談を受けてみてはいかがでしょうか。
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