会社の業績が軌道に乗ってくると、かえって業績が下がる恐れがあります。同じ事業領域でライバルが増え、限られたマーケットを奪い合う関係になれば、売上が低下するリスクに繋がりかねないためです。
また、新たに市場が拡大しているジャンルで自社の強みを活かして参入できる可能性がある場合には、そのチャンスを逃してはならないでしょう。
一方、社内では同じ仕事ばかり続けていると、従業員間に慣れやマンネリが蔓延し生産性が下がる場合や、各従業員の潜在能力を活かしきれずに埋もれたままにしてしまう場合もあるかもしれません。こうした状況を打開するために有効な選択肢のひとつが「新規事業」です。
この記事では、新規事業を立ち上げるための資金確保に有効な助成金や補助金について解説します。
目次
新規事業を立ち上げる際に助成金は受けられる?
新規事業を始めるには、アイデアや人材だけでなく資金も必要です。それを自己資金や融資のみに頼っていては心許ないかもしれません。新規事業の立ち上げに十分な自己資金を貯めるのは時間がかかるため、助成金が強い味方となります。
ここでは、新規事業に有効な助成金や補助金の概要について説明していきます。
助成金とは?
助成金は、法人や個人の事業活動を支援するために、条件を満たしているかどうかの審査手続きを経て助成されるお金です。ある程度まとまった額の資金を、対価なしに無償で受け取ることができるメリットがあります。
国が主催している場合は厚生労働省が中心となって運営されていますが、都道府県や市町村ごとに独自の助成金事業が実施されていることも多いです。
助成金の概要についてはこちらで詳しく解説しています。
参考記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!
助成金の対象とは?
国が運営する助成金は、ビジネスを行っている事業者が雇用している従業員の健康を維持したり、労働待遇を改善したりするためにかかった費用の一部をサポートするという性質があります。厚生労働省が管轄しているという経緯や性質から「従業員ファースト」の目的で助成されることが多いのです。
2022年12月時点では「従業員ファースト」という性質上、国が運営する中で新規事業立ち上げの局面で使える助成金はありません。都道府県や市町村が運営する助成金では存在する可能性があるため、本店所在地の助成金制度を念のため調べてみましょう。(例えば、東京都では「創業助成金」千葉県では「ちば創業応援助成金」など)
補助金なら可能性がある
補助金であれば、新規事業立ち上げで必要となる経費の一部をサポートしてくれるものがいくつかあります。国が運営する補助金制度の多くは経済産業省や中小企業庁などが管轄しており、ビジネスを直接サポートする目的のものが整備されているためです。
補助金制度の注意点
助成金と異なり、補助金は条件を満たしていても、審査員の裁量判断で不採択になる恐れがあります。もし不採択になっても、次回以降の機会に何度でもチャレンジできるのですが、条件を満たしているのだから補助金を受け取れるものと、最初からあてにするのも良くありません。
新規事業立ち上げに補助金を活用するメリット
新規事業に必要な資金を、補助金などで賄うことのメリットは次の通りです。
返済が不要な公的資金
補助金は無償で渡される公的資金ですので、返済する必要はありません。毎月の返済のための資金繰りを心配しなくてよい点は大きなメリットでしょう。
事業規模ごとに、まとまった額が補助される
助成金は数十万円単位となることが多いですが、補助金は数百~数千万円単位というまとまった規模で補助される場合も珍しくありません。
実際に経費として使った額の一部が補助されるので、初期投資が少ない小規模事業には数万円、初期投資が多い大規模事業には数千万円単位の補助金が渡されるようになっており、公平性が高いのです。
使い道は自由
意外と知られていませんが、新規事業関連の補助金を新規事業のために使う義務はありません。そもそも、補助金を申請するために使用した経費が確かに新規事業のために使われたかどうか、前もって厳しくチェックされているためです。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説新規事業で頼れる主な補助金5選
新規事業を始めようとする場面でサポートを受けられる補助金を5つ紹介します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
通称「ものづくり補助金」は、中小企業・小規模事業者が今後数年にわたり相次いで直面しうる、働き方改革などの制度変更に対応するために、新たに取り組む革新的サービスに関する開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の経費の一部を支援するものです。
最高で1億円の補助がありうる、国内最大規模の補助金制度といえます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員数が20名以下の小規模事業者を対象とした補助金です。商工会議所や商工会の助言等に基づき作成した経営計画に沿って販路開拓などを行った場合、200万円を上限に補助されます。
参考記事:小規模事業者持続化補助金で販路を開拓!開業後の広告宣伝費にも
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者を対象に、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んだ企業を優遇する目的の補助金制度です。例えば、オンライン予約システムや、バーコードで販売商品を管理するPOSレジシステムなどを新たに導入した事業者に対し、製品に応じて100~450万円を上限に補助されます。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、収益の基盤をより安定させるため、新分野の事業に進出する企業や個人を対象とした補助金です。中小企業向けには上限8,000万円、大企業向けには上限1億円と設定されています。
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
中小機構・都道府県、そして地域密着型の金融機関などが一体となって運営している地方単位の補助金です。創業や販路開拓などに取り組んでいる中小企業が対象で「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2種類があります。
ただし、対象とならない地域がありますので、必ず事前に確認しましょう。
新規事業に関連する補助金の申請方法
新規事業補助金の申請方法は、次の通りです。
多くの補助金は、4段階の手続きが必要です。
まずは「公募に対する応募」です。この応募を受けて公募条件を満たした事業者かどうか審査され、もし採択されたら「交付申請」を行います。
交付決定が出された段階で新規事業を本格的に始めなければなりません。
一定期間にわたって事業を実行したら、かかった経費を集計して「報告書の提出」を行います。
確定検査を経て正式に補助額が確定したら「請求書の提出」を行うことで、やがて補助金が振り込まれます。
補助金の申請手続きはやや煩雑のため、代行を検討する方も多くいます。
詳しくはこちらで解説していますので、あわせてご確認ください。
参考記事:途中からでも大丈夫?助成金の申請を軽減する代行とは
まとめ
新規事業を立ち上げるためには資金が必要となりますが、そのときに頼れる存在といえるのは経済産業省(中小企業庁)などが管轄する補助金です。助成金よりも多額の補助を得られやすいですが、条件を満たしていても審査の裁量で補助金が出ない判断がされる場合があるため注意が必要です。
とはいえ、新規事業を立ち上げる際に助成金や補助金を利用することはメリットが多いため、検討してみてはいかがでしょうか。