2018年12月8日に改正入管法が可決されたこともあり、これまで以上に外国人労働者の受け入れが拡大されていくでしょう。また、日本の人口減少に伴う人手不足は深刻化しており、外国人労働者の受け入れはさらに加速していくと見られます。

しかし、外国人労働者の雇用には言語や文化、生活習慣の壁があることで、躊躇している企業も多いのではないでしょうか。そうした企業のために、外国人労働者を雇用する事業者に向けてさまざまな助成金が用意されています。

そこで、この記事では外国人労働者の雇用に利用できる助成金や外国人労働者の雇用の際に注意すべきことを紹介します。

助成金とは

助成金とは、厚生労働省が主導している支援金のことです。以下の特徴をもっており、多くの企業が利用しています。

  • 国や地方自治体が管轄しており安心して利用できる
  • 長期間にわたり申請が可能
  • 原則、返金不要
  • 受給要件を満たせば、基本的に受給できる

関連記事:助成金とは?注意点など知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説!

補助金との違い

助成金と補助金はどちらも、基本的に返金不要な資金調達方法です。
しかし、補助金は申請期間が数週間から1か月程度と限られており、受給要件を満たしていても審査により落選する可能性があります。そのため、補助金の方が受給難易度は高いといえます。

助成金と補助金の違いの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:補助金と助成金の違いとは?それぞれの流れや注意点、交付金や給付金との違いもわかりやすく解説!

外国人雇用に利用できる助成金一覧

外国人雇用に利用できる助成金を紹介します。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者との言語や文化、労働法制の違いなどによるトラブルを解消するために就労環境を整備し、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主を支援する制度です。

【受給要件】
受給要件は、以下の3つとなっています。

  • 外国人労働者を雇用していること
  • 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1または2に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
  1. 雇用労務責任者の選任
  2. 就業規則等の社内規程の多言語化
  3. 苦情・相談体制の整備
  4. 一時帰国のための休暇制度の整備
  5. 社内マニュアル・標識類等の多言語化
  • 就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること

【支給対象経費】
支給対象となる経費は、以下のようになっています。

  • 通訳費(外部機関などに委託したものに限る)
  • 翻訳機器導入費(面談に必要なものに限り、上限は10万円)
  • 翻訳料(外部機関などに委託したもので、マニュアルなどを整備するものに限る)
  • 弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限る)
  • 社内標識類の設置・改修費(多言語の標識類に限る)

【受給額】
受給額は、以下のようになっています。

区分 支給額(上限額)
賃金要件を満たしていない場合 支給対象経費の1/2(上限額57万円)
賃金要件を満たす場合 支給対象経費の2/3(上限額72万円)

賃金要件とは、就労環境の整備措置を実施した日の翌日から起算して1年以内に、外国人労働者に対し、毎月の賃金が5%以上増加している場合に加算される要件です。

参考:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、雇用する被保険者(外国人労働者を含む)に対して、以下の訓練をした場合に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコースです。

  • 職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上のOFF-JT訓練
  • 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
  • 非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練

受給額は訓練により異なるため、詳細は以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2023年最新】人材開発支援助成金とは?各コースを徹底解説

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用者を正規雇用労働者に転換した場合に助成されるコースです。有期雇用などの契約の外国人労働者を正社員に登用する際に利用したい助成金です。

ただし、外国人技能実習生は帰国することが前提であるため、正社員化コースは対象外となっています。

【助成金額】
助成額は、企業規模や雇用契約期間によって異なります。1人当たりの助成額は以下のようになっています。

雇用形態 中小企業 大企業
有期雇用労働者 57万円 42万7,500円
無期雇用労働者 28万5,000円 21万3,750円

詳細は以下の記事をご覧ください。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!

最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金」

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動を縮小しなければならなくなった事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施し、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。

【助成金額】
助成額は以下のようになっています。

助成内容 中小企業 中小企業以外
  • 休業手当負担額
  • 教育訓練の賃金相当額
  • 出向した際の出向元事業主の負担額
    (2023年8月1日現在の上限額:1人当たり8,490円)
2/3 1/2
教育訓練を実施したときの加算額 1人1日当たり1,200円

詳細や最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「雇用調整助成金」

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、職業経験や技能、知識などにより就職が難しい求職者に対して、一定期間トライアルで雇用した際に支援する制度です。

試行雇用により、外国人労働者とのミスマッチを防ぎ、無期雇用へとスムーズに移行することが可能になります。

【助成金額】
助成金額は、支給対象者1人につき月額4万円です。

詳細や最新情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

外国人雇用で助成金を利用する前に行うこと

外国人雇用で助成金を利用する前に行わなければならないことを解説します。

外国人を雇用する際に就労可能か確認する

まず、外国人を雇用する際にはその外国人が就労可能かどうかを調べましょう。外国人の労働は、入管法により在留資格の範囲内で認められており、在留カードやパスポートなどで確認できます。

万が一、不法就労に気づかずに雇用した場合、雇用主においても罰金刑が科せられるため注意が必要です。

また、全29種類ある在留資格によっては、キャリアアップ助成金などの助成金の対象外になる可能性があることも覚えておきましょう。

外国人雇用状況の届出を提出する

外国人労働者を雇用したら、ハローワークへ外国人雇用状況の届出を提出しましょう。
労働施策総合推進法により、雇用保険被保険者となる外国人の場合には翌月10日までに、雇用保険被保険者とならない外国人の場合には翌月末日までに、ハローワークに届出を行わなければなりません。

また、離職時にも届出を提出する必要があることも覚えておきましょう。

まとめ

人材不足といわれる現代において、外国人労働者は企業にとって非常に助かる存在です。外国人労働者の雇用は、その勤勉性と労働意欲の高さにメリットがあり、言語や習慣の壁を乗り越えることで、日本人以上に大きな戦力になりうる場合もあります。

今回ご紹介した各助成金を利用することで、優秀な外国人労働者を確保することもできるので、積極的に利用しましょう。

助成金の申請については、プロの助成金コンサルティング業者に相談することがおすすめです。助成金・補助金の申請を検討される場合、まずは無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。