ものづくり補助金を活用して設備投資や新製品開発を実施した企業にとって、採択・交付決定後も重要な手続きがあります。それが「事業化状況報告」です。
交付を受けた補助事業が「実際に事業化につながっているか」「知的財産権の取得状況はどうか」「賃上げ・最低賃金の引き上げ要件を満たしているか」など、補助金を活用した事業者は採択後も継続して「報告義務」を負う仕組みとなっています。
そこで、この記事では、ものづくり補助金における事業化状況報告の概要や書き方、注意点をまとめて解説します。
ものづくり補助金の事業化状況報告とは?
ものづくり補助金の事業化状況報告とは、補助金を活用して導入した設備や取り組んだ事業が、実際に成果(売上・利益・生産性向上など)につながっているかを報告する義務のことです。
補助金の交付を受けた事業者は、事業完了後も一定期間にわたり、事業化の進捗状況を毎年提出する必要があります。
ここでは、ものづくり補助金の事業化状況報告の概要や必要性を解説します。
なお、ものづくり補助金の各コースの支給要件や補助率などは、以下の記事をご覧ください。
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合計6回の報告義務がある
事業化状況報告は、事業完了年度の翌年度から5年間、合計6回提出する必要があります。
- 第1回:事業完了年度(実績報告年度)
- 第2回〜第6回:翌年度から5年連続で提出
提出は「電子申請(jGrants)」で行うのが一般的で、毎年決まった時期に提出する必要があります。事業化状況報告を怠ると、補助金の返還を求められる場合があるため、必ず期限内に提出してください。
事業化状況報告が必要な理由
事業化状況報告が求められる理由は、ものづくり補助金を活用した事業が「計画どおりに成果を上げているか」「適正に公金が使用されているか」などを国が把握するためです。
報告を怠ったり、虚偽の内容を提出したりする不正受給を防ぐために一役買っている存在といえます。長期にわたる報告義務ではありますが、期限を守って報告しましょう。
ものづくり補助金における事業化状況報告の項目一覧

ものづくり補助金の事業化状況報告では、複数の書類の提出が求められます。それぞれの項目は、事業の実績や補助金の適正使用を客観的に示すものです。
- 事業化状況・知的財産権等報告書
- 事業化状況等の実態把握調査票
- 返還計算シート
- 直近の決算書
- 報告年3月分の賃金台帳
ここでは、事業化状況報告の5つの項目について解説します。
事業化状況・知的財産権等報告書
事業化状況・知的財産権等報告書は、補助事業の成果と知的財産権の取得状況を報告する書類です。具体的には以下の内容を記載します。
- 補助事業の実施成果の事業化状況
- 特許、実用新案、意匠などの知的財産権の出願・登録状況
- その他、補助事業に関連する成果の有無(売上額、収益額、支出額など)
この報告書は、補助事業が計画通りに実施され、事業化に至ったかを確認するために使用されます。
事業化状況等の実態把握調査票
事業化状況等の実態把握調査票は、事業の定量的成果を報告する書類です。具体的には、以下のような内容を含みます。
- 資本金や従業員数、総売上高、営業利益、人件費などの基準年度と現在の状況比較
- 継続試作開発の状況
- 事業化に関する状況
この報告書は、補助金の効果を確認するために使用されます。
返還計算シート
返還計算シートは、補助事業が要件を満たさなかった場合に、返還額を算出するための書類です。具体的には、以下のような内容を記入します。
- 「事業場内最低賃金の増加」目標未達成の詳細・返還額とその計算式
- 「給与支給総額の年率平均1.5%以上増加」目標未達成の詳細・返還額とその計算式
この書類により、補助金の返還が必要かどうか、いくら返還が必要なのかが判断されます。
直近の決算書
ものづくり補助金の事業化状況報告では、事業年度の損益計算書や貸借対照表などの内容報告も必要です。事業化状況を客観的に示すため、売上高や利益の推移、経費の内訳を確認できる資料として利用されます。
また、原価算出表で記載する「原材料費」「外注加工費」「労務費」「工場経費」などの費用は、直近決算書を参照・確認して作成する必要があります。
報告年3月分の賃金台帳
事業化状況報告では、「補助事業実施場所に勤務する、従業員全員の賃金台帳」と「事業場内最低賃金となっている従業員の賃金台帳」の2種類を提出する必要があります。
従業員に支払った賃金や手当の状況を示すことで、補助金が計画どおりの人件費や設備運用に使われたかが確認されます。
補助事業に従事する従業員への賃金支給状況を確認し、計画どおりの人件費負担が行われたかを報告します。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説ものづくり補助金の事業化状況報告に注意点はある?

ものづくり補助金の事業化状況報告には、収益納付や返還義務、不正受給に関する注意点があります。提出内容や計算方法を誤ると、補助金返還や追加手続きが発生する可能性があるため事前確認と正確な報告が欠かせません。報告を行う際には、制度上の義務や収益・返還に関するルールを正しく理解することが重要です。
ここでは、ものづくり補助金における事業化状況報告の注意点について解説します。
収益が得られた場合、収益納付を行う必要がある
補助事業によって得られた収益がある場合、報告時に「収益納付」として補助金額から相殺する必要があります。
収益納付の対象となるのは、補助対象経費から生じた収益です。具体的には、売上や使用料などの事業化に伴う直接的な収益が該当します。
報告時には、収益の金額、計算方法、経費の内訳を正確に記録し、納付額を算定しなければなりません。適切な計算・報告を怠ると、後から追加納付や返還を求められるリスクがあります。
目標未達の場合、返還の義務がある
補助事業で設定した目標(売上や生産量の増加、賃上げなど)が未達の場合、補助金の一部または全額を返還する義務が発生する点に注意が必要です。
返還の計算は「返還計算シート」を用いて行い、補助事業で達成した実績に応じて金額を算出します。報告時には、目標未達の理由や経費の使用状況も正確に整理して提出する必要があります。
不正受給のリスク
報告書に虚偽の記載や経費の水増しがあった場合、補助金の全額返還に加え、罰則や今後の申請制限などペナルティが科される可能性に注意が必要です。社会的な信用の損失につながり、最悪の場合には事業継続が難しくなるリスクもあります。
そのため、事業化状況報告では、売上や経費、設備の導入状況などすべての項目を正確に記録しましょう。また、根拠となる記録(請求書、領収書、決算書など)は保管しておくことが重要です。
まとめ
ものづくり補助金における事業化状況報告の概要や書き方、提出書類などをまとめて解説しました。
事業化状況報告は、補助事業の進捗や成果を正確に報告するための義務です。
事業化状況・知的財産権報告書、実態把握調査票、返還計算シート、直近決算書、3か月分の賃金台帳の内容を報告する必要があり、記載内容や計算方法を誤ると返還や追加手続きが発生する可能性があります。
そのため、ものづくり補助金の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントへの依頼がおすすめです。採択される確率を高めたい、不明点について相談したいという場合には、まず以下の無料相談をお気軽にご利用ください。
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