働き方改革がいよいよ2019年4月から順次施行されていきます。いろいろと言われていますが、働き方改革とは誰のためにあって、どんな目的で行われるものなのでしょうか。今回は改めて働き方改革の目的についておさらいしておきたいと思います。

働き方改革は何の目的で行われるのか

働き方改革の目的は、日本の労働人口の減少に歯止めをかけることです。日本は現在、少子高齢化問題に直面しており経済が衰退しつつあります。そんな中、介護問題や育児問題などが浮き彫りになっており、今後ますます労働人口の減少が予想されているのです。

この労働人口減少問題を解決するためには、以下のようなことが必要になります。

  • 50年近く連続で最下位を低迷する日本の労働生産性を向上させる
  • 女性や高齢者も働きやすいように多様な働き方ができるような社会を実現する
  • 出生率を向上させて、将来の労働人口減少に備える

この3つの軸で労働人口の減少に歯止めをかけ、日本の経済を活性化させようとするのが働き方改革の大目標です。

しかし、この大目標を実現するためには、ただ単に「日の丸を背負って、高齢者は働け!女性は子供を産め!労働者は勉強して生産性をあげる努力をしろ!」といっても誰も動いてくれません。なぜなら、以下のような課題があるからです。

  • 長時間労働によって、労働者が自分のスキルや技術を学ぶ時間がない
  • 短時間労働者やパートタイマーの待遇が悪く、正社員でなければ働きにくい労働環境
  • 若者は経済的に困窮しており、子供を産む余裕がない

こういった課題を解決しなければ、いくら国民の忠誠心が高いからといって、労働人口問題の解消には繋がりません。これらの問題を解決するための作戦として用意されているのが、「働き方改革三本の柱」というものです。

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働き方改革の三本柱

働き方改革の三本柱とは、以下のようなものです。

  • 残業時間に規制をかけることによる長時間労働の是正
  • 同一労働同一賃金
  • 脱時間給制度

ひとつひとつ見ていきましょう。

長時間労働の是正

長時間労働は、労働者の時間を奪い、自らがスキルを磨く時間を奪い、生産性を低下させる原因でもあります。日本の労働生産性は47年連続で先進国の中で最下位を叩き出しており、OECD加盟国の平均を下回っています。

これまでも労働時間に関しては、一日8時間、週40時間という上限が設けられていました。しかし、労使間で三六協定を締結し、労働局に届け出ることで残業というものをさせることができるため、事実上際限なく労働をさせることが可能でした。今回の働き方改革では、この「三六協定を締結すれば際限なく働かせることができる」という労働基準法を改正し、「単月100時間、年間720時間、月平均80時間」という上限を設定しました。

しかし、この問題解決は根本的なものではなく、「労働局に届け出ず、サービス残業をさせていることが問題」という批判もあります。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金は、同じ仕事であれば正社員だろうが非正規社員だろうが同じ給料を支払うべきだという考えのもと生まれた制度です。

日本は正社員と非正規労働者の格差が非常に大きく、非正規労働者の賃金は正社員の60%程度となっています。欧米諸国では80%であることを考えると、かなり大きな格差であることがお分かりいただけると思います。

こういった格差がある状態では、誰もが正社員というものにすがりつき、多様な働き方の実現を阻害してしまいます。例えば、「介護をしなければならず、一日6時間の労働が限界」となった時に、「仕事をやめるか、介護をやめるか」みたいな選択をしなければならないのです。こういった社会では子育てもしにくいですし、柔軟な働き方ができません。女性や高齢者が働きやすい社会とは程遠いものですね。

これを是正しようとするのが、成果重視の同一労働同一賃金問題です。この社会が実現すれば、能力のある者は柔軟な働き方が選べるようになり、逆に能力のない人間の給与が下げられることになるので、生産性の向上にも寄与すると考えられています。

脱時間給制度

脱時間給制度は、「時間ではなく成果に応じて給与を支払おう」という考え方のもと考案された制度です。しかしこの制度に関しては「残業代が支払われなくなる」などの批判が多く、徐々にフェードアウトしていっています。

考え方としては欧米諸国と同じ能力給や実力主義なのですが、労働基準法すら違反する日本の企業がこれを悪用しはいはずがないということで、批判が集まっているわけです。

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働き方改革は誰のためのものなのか


働き方改革は、労働環境を整備し、根本には「労働人口の減少への対応」というものがありますが、自由で柔軟な働き方を促進するものです。

働き方改革を通じて、生産性が向上すればそれは企業のためにもなりましょうし、自由な働き方ができればそれは労働者のためになるでしょう。つまり、より良い社会の実現、国民全てのためのものです。

現在の日本は、事業主が経営努力をせずに格安の賃金でサービス残業をさせることもできる労働者に甘えてしまっており、さらに労働者はそういった働き方を受け入れ、年功序列を引きずった働き方――要するにスキルを磨かなずに日々を過ごすということをしてしまっている状態です。こういった悪しき風習を是正し、根本的に誰もが働きやすい環境を提供することで事業主や労働者、日本経済の発展に寄与することが期待されています。

巷では、「働き方改革なんて無駄」とか「筋違い」だなんて批判がたくさんありますが、アクションなしに改善はしていきません。

より働きやすい環境は優秀な人材を確保するために有効な手段ですし、現在は労働環境改善に関する助成金等も用意されていますので、まずは小さいことから働き方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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弊社担当のご紹介
佐藤亜樹
佐藤亜樹(助成金コンサルタント)
入社7年目。採用コンサルティングを担当後、中小企業の助成金申請のサポートに従事する。2018年からは助成金を活用した働き方改革関連法に対応するノウハウを提供するセミナーを開催するなど、精力的に活動中。