2019年4月にいよいよ施行される働き方改革関連法ですが、施行によって就業規則を変更する必要はあるのでしょうか?

今回は、働き方改革開始に伴って必要になる就業規則の見直しについてご紹介していきたいと思います。

就業規則の見直しは必要?

必要かどうかという問に対しては、「現時点では必ずしも必要ではない」となりますが、2020年から(中小企業の場合は2021年から)開始される「同一労働同一賃金」の開始に伴っては就業規則の見直しが必要になるでしょう。

また、有給休暇の取得のさせ方を変更する場合や時間外労働上限の規制に伴って労働時間の管理方法を変更する場合には就業規則の見直しが必要になります。

以下では、どのような場合に就業規則の見直しが必要になるかということについて例を挙げながらご紹介していきます。

1.労働時間の管理方法を変更する場合

2019年4月から(中小企業の場合は2020年4月から)は時間外労働に上限が設けられることになります。

改正労働基準法施行後以降、いかなる理由があっても以下の上限を超えれば労働基準法違反として事業主は懲役刑や罰金刑に処せられます。

単月100時間 複数月平均80時間 年間720時間

このため、時間外労働が恒常的に行われている職場では、上記時間を超えないように厳密に管理する必要がでてきます。――さもなければ、労働者が勝手に時間外労働を行い、知らないところで法律を違反することになってしまうためです。事業主は労働時間に対して適切に管理することが義務付けられていますから、「あいつが勝手に働いただけ」というのは言い訳になりません。新しい法律では「管理していなかったあなたが悪い」となってしまうのです。

厳密に管理するためには、例えば「PCが動いている時間で労働時間を計算する」みたいな方法が理想的ですが、客観的な方法であれば「この方法で管理しなければならない」と規定されていはいないため、従来通りの就業規則でも問題はありません。――ただ、管理を強化するのであれば就業規則を書き換える必要が出てくるでしょう。

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2.年次有給休暇の計画付与を導入する場合

2019年4月からは、事業規模に関わらず年次有給休暇が10日以上付与される労働者(パート・アルバイトも含む)に対して5日以上の有給を取得させなければなりません。

有給休暇を取得させない場合は労働基準法違反となり懲役刑や罰金刑が課せられてしまいます。有給休暇の取得は基本的に労働者の希望する日に取得させますが、もし労働者が有給の取得を申し出ないまま1年が経過してしまうと、これも法律違反となります。

さて、人数が多くなればなるほどこの管理が難しくなりますが、計画有給を導入することで、取り急ぎ管理不足による労基法違反は防げます。有給の計画付与とは、予め計画しておいた日程に有給を取得させるという方法です。例えば祝日を営業日として、祝日に取得させたり、お盆休みや正月休みを有給として取得させたり……という有給の付与方法です。

こういった計画付与を導入する場合は就業規則の変更をする必要があります。

3.インターバル制度の導入

こちらは罰則などは設けられていませんが、働き方改革関連法の中に「インターバル制度」の導入について記載されています。

インターバル制度とは、前日の終業時刻から、翌日の始業時刻には11時間以上の間隔を設けなければならないというものです。例えば、始業が9時の会社で仕事が終わらず深夜3時まで残業をしていた場合、3時から11時間後の14時までは労働をさせてはいけなくなります。11時間というインターバルは労働者の健康を保つために必要だと考えられている国際基準でありますが、事業者側から「どうしてもインターバルを設けられないときがある」という批判が多かったため、現時点では「努力義務」とされています。

罰則はありませんが、「努力義務」ですので、守れるのであれば守る必要があります。このため、インターバル制度の導入をするために就業規則を書き換える必要が出てくるでしょう。

4.フレックスタイム制を導入している場合

働き方改革関連法施行後は、フレックスタイムの清算期間が拡大されます。これに伴って、フレックスタイム制を導入している企業では就業規則の改訂や労使協定の見直しを行う必要があります。

5.高度プロフェッショナル制度の導入

年収が1075万円を超える専門的な知識やスキルを持った労働者は「高度プロフェッショナル」として、労働者が希望する場合は裁量労働制を採用することができます。

この高度プロフェッショナル制度は「労働時間を管理しなければならない」とか「インターバル制度を守らなければならない」とか「一定以上の休日は与えなければならない」などといった制限も設けられているため、導入するためには法律に基づいた就業規則の改訂が必要になってきます。

導入には費用も手間もかかりますし、特に罰則もありませんが、優秀な人材を確保するためには必要なことですので、検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

働き方改革関連法の施行後に就業規則の見直しが必要になるのは、いかのような場合です。

  • 労働時間の管理方法を変更する場合
  • 年次有給休暇の計画付与を行う場合
  • インターバル制度を導入する場合
  • フレックスタイム制を導入している場合
  • 高度プロフェッショナル制度を採用する場合

「働きやすい職場」に対する世の中の機運も高まっており、今後はますます労働者を酷使するような職場には人が集まらなくなっていくでしょう。この機会に今一度「働きやすい職場」を労働者に提供するために就業規則を見直してみてはいかがでしょうか?

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佐藤亜樹
佐藤亜樹(助成金コンサルタント)
入社7年目。採用コンサルティングを担当後、中小企業の助成金申請のサポートに従事する。2018年からは助成金を活用した働き方改革関連法に対応するノウハウを提供するセミナーを開催するなど、精力的に活動中。