労働者が会社に請求する制度のひとつに育児休業制度があります。しかし、人材不足が社会問題となっているとおり、会社としては休まれては困るという場合もあるかもしれません。育児休業制度は、基本的に子が1歳に達するまで仕事を休業することが認められているため、会社としては、産前産後休暇と合わせて一年以上も仕事をしてもらえない状況になってしまうのです。
有給休暇の制度は、労働者がもつ権利です。有給休暇の取得申請に対して会社は、原則として拒否できませんが、「時季変更権」といって、会社が忙しいときには休暇を取得しないでほしいと労働者に対して要請できる制度があります。
時季変更権と同じように、育児休業についても、会社が取得しないよう説得したり、時期をずらしてもらったりすることは可能なのでしょうか。
育児休業を断れば罰則がある?
育児休業は、産前産後休暇の産後休暇と異なり、労働者側から申し出がなければ会社側としては強制的に取得させる必要はありません。そのため、会社が人材不足や繁忙期にぶつかってしまうなどの際には、育児休業をしてほしくないと思うこともあるかもしれません。
しかし、育児休業は、労働者側からの申し出があった場合には、必ず取得させなければならないという育児介護休業法という法律に決まりが定められているのです。
この規定に会社が従わずに、労働者に対して育児休業を取らせなかった場合、罰則があります。
法律に違反すればどうなるのか?
育児介護休業法には、育児休業を労働者が申し出たときには取らせなければならないという決まりを設けていますが、この規定に違反した場合はどのような罰則があるのでしょうか。
違反に対するペナルティは、公表制度と過料の2通りがあります。
公表制度は、会社が育児介護休業法に違反している場合、厚生労働大臣がその違反状態を是正するよう勧告をします。この勧告に事業主が従わなかった場合、その旨を公表することができると決められているのです。
他方、育児介護休業法は、厚生労働大臣やその委任を受けた都道府県労働局長が、施行に関して必要があると認めるときは、事業主に対して報告を求めることができることも定めています。
この報告について、報告をしなかったり、うその報告をしたりしたときは20万円以下の過料(罰金のひとつ)に処することが規定されているのです。
こうした公表や罰金は、企業イメージをひどく傷つけてしまいます。そのため、従業員から育児休業の申し出があった場合には、取得を認めなければいけません。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説育児休業は会社にとってデメリットばかりではない
育児休業を取得されてしまうと、会社としては、穴埋めになる人材を確保したり、補填する他の労働者へのケアをしたりする必要があり、デメリットが大きいと感じるかもしれません。
しかし、育児休業は、会社にとってデメリットだけではありません。
まず、きちんと育児休業を取得させる企業は、それだけ企業のイメージアップに繋がります。これから出産や育児を考えている若い世代の流出を防止にも。さらに、復帰した社員のモチベーションアップや、育児での離職を防ぐことも可能です。
近年では、両立支援等助成金という制度の利用もできます。この制度は、仕事と家庭を両立させる職場環境を整えるための補助金が支給されるのです。
より良い職場環境を実現しよう
近年、少子化などに伴って若い人材が減り、労働力不足が社会問題になっています。そのため、会社では人材確保のために、さまざまな整備を実施しなければならなくなっているのです。
育児に関しては、その後の働き方が合えば復帰を希望する人も多くなっています。こうしたことから、労働者が働きやすい職場環境を整えておくことで、人材流出を防ぐことができ、結果的に人材不足もケアされていくのです。
助成金の制度なども活用しながら、職場環境をより良く整えてみてはいかがでしょうか。