2019年4月から始まる働き方改革法の施行ですが、これによって私達の働き方はどのように変わっていくのでしょうか。
今回は、働き方改革によって変更が加えられたポイントを分かりやすく要点をまとめてご紹介していきたいと思います。
目次
残業時間に上限が設けられる
様々な企業に関係があるのが、この残業時間の上限設定ではないでしょうか。
これまで労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)については上限が設定をされていたものの、三六協定を締結して労働基準監督署に届け出を行うことで上限なく労働させることが可能でした。月45時間、年間360時間という「原則」があったものの、この原則はあってないようなもので、これを違反する企業は非常に多いです。
今回の働き方改革では、この労働基準法を改正し、以下のような規制を定めました。
- どのような事情があり、労使間でどのような労働条件を締結していようと、年間720時間の残業を上回ってはならない
- 休日労働を含めて、月100時間を越える時間外労働は禁止
- 2~6ヶ月の期間いずれも、休日労働を含んで時間外労働は月平均80時間以内としなければならない
この法律によって月100時間を越える残業は一発でアウトになりました。これによって労働局も摘発をしやすくなったため、長時間労働問題の是正が期待されています。
残業代の割増率が増加する
長時間労働は「自殺」や「うつ病」などのマイナスイメージが多い深刻な問題です。これまで中小企業は残業代の割増賃金を25%支払っていればよかったのですが、月60時間を越える残業に関しては規定の賃金に50%を割増して支払わなければならなくなります。
この60時間超えの残業代のルールは、2010年時点で大企業に対してはすでに適用されていたのですが、経営基盤が固まっていない中小企業に関しては、適用を見送るという方針をとっていました。つまり猶予期間が設けられていたのです。
この猶予期間が2023年の4月で終了することになりました。
例えば時給1,000円の労働者が80時間の残業をしたとします。この場合、60時間分を1,250円、残りの20時間を1,500円で計算して給与を支払う必要があります。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説年次有給休暇の取得が義務化される
これまで有給休暇は付与こそ義務付けられていたものの、取得しにくい職場環境を作り出すなどする企業が多く実に取得率は50%程度にとどまっていました。今回の労働基準法の改正によって、事業者は労働者に対して少なくとも5日間の有給休暇を取得させなければならないと義務づけました。
取得させなければ労働基準法違反として、罰則の対象となります。
勤務時間にインターバルを設けなければならない
勤務時間インターバル制度とは、前日の終業時刻から始業時刻までは11時間上げなければんらないという制度です。この制度は、すでに国際基準となっており、健康被害を避けるという意味で重要な意味を持ちます。
例えば、始業が9時の会社で23時まで残業をした場合、翌日も9時に始業してしまっては、労働法違反となります。少なくとも11時間のインターバルを設けなければならないので、23時まで残業をした場合は翌日は10時の出社にする必要があります。23時10分まで残業すればもちろん10時10分の始業となります。
ただ、このインターバル制度は企業の努力義務とされており、法律による規制はありません。
パート・アルバイトの賃金が高くなる
一概に高くなるというわけではありませんが、内閣が掲げる働き方改革の目玉である「同一労働同一賃金」を実現するために、パートやアルバイトだからという理由だけで正社員に比べて低い賃金を設定することは禁止されます。
例えば、アルバイトと正社員が同じ労働をこなす場合は、その賃金や手当を共通化しなければなりません。「アルバイトだから」という理由で賃金を下げることは「不合理な待遇差」とみなされるため、労働法違反となります。
また、以下のように法律で定められています。
- 労働者から賃金の格差について相違があることを求められた場合は、その正当な理由を説明しなければならない
- 事業主は、労働者が賃金について不平を申し出たり、理由の開示を求めたことを理由に解雇をしてはならない
この同一労働同一賃金制度は、分かりやすくいうと「トマトはトマトの適正価格で購入すべき」というものです。これまでは労使間で(どちらかというと事業主側が)「100円なら買うよ?」というスタンスで労働力の購買がされていましたが、今後はそうはいきません。優秀な人材なら正規だろうが非正規だろうが高く仕入れなければならなくなります。
一部で成果報酬型の賃金形態が登場
高度プロフェッショナル制度というものも働き方改革の目玉として注目されています。コンサルタントやプログラマーなどの職種において、年収が1,000万円を越えるような人達は、労働時間管理の対象外となり、裁量労働制が適用されることになります。こういった労働者は、成果によって給与が決まります。――例えば、「プログラマーの場合は○○日までに○○のシステムを完成させる」みたいな契約ができるのです。フリーランスのような働き方ですが、一応企業に所属しているということになりますので、手当や社会保険などの恩恵を受けることができます。
働き方改革適用には助成金が出る
――ざっと働き方改革での変更点をご紹介してきましたが、意外と事業者が対応しなければならないことというのは多いです。今後は優秀な人材を確保するために様々な「働きやすさ」を追求していく必要がありそうですね。
例えば、同一労働同一賃金が本格的に浸透してくると、労働者は「より高く自分のスキルを買ってくれる企業で働きたい」と思うことになるでしょうし、「多少賃金が低くても働きやすい職場に身を置きたい」とも考えるでしょう。
当然産休や育休制度がある会社で働きたいと考える労働者は増えてくるでしょうし、非正規労働者も正社員と同じような待遇を受けることができる会社で働きたいと考えるでしょう。何が言いたいかと言うと、時代の波に乗り遅れると企業は人材が集まらなくなって「人手不足倒産」みたいな状況に陥るということです。
こういった労働環境の整備には、今なら助成金を活用することができます。――例えば非正規労働者と正社員の手当を共通化したり、産休、介護休暇制度を設けたりすることで厚生労働省がそのための経費の一部を負担してくれるのです。
こういった助成金を活用して、早い段階で働きやすい職場を実現し、優秀な人材確保に努めましょう。