助成金を受給するためには、労働関連の法律を遵守する必要があります。しかし、実にほとんどの企業がこの労働関連法案を守れていないといわれており、知らぬ間に違反している場合もあります。

今回は、よくある労働関連の法律違反について、条文をご紹介しながらご紹介していきたいと思います。

1. 週40時間以上の労働は残業扱い

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
労働基準法

1日8時間を越える労働に関しては残業になるということは一般的に知られていますが、週40時間を越える労働についても残業扱いになるということはあまり知られていません。

どのような場合に当てはまるかというと、飲食店や小売店にありがちな週6日間の勤務体系です。例えば1日8時間、週6日働く労働者がいる場合、1日単位で残業をしていなかったとしても48時間の労働になります。この場合週40時間を超過する分——つまり、8時間は残業扱いになるのです。

残業に関しては就業規則や契約書で定められている基本給の25%の賃金を割増で支払う必要があり、例えば時給1,000円の人に対しては1,250円を支払う必要があります。——つまり、週6日勤務させる場合は1,000円×48時間ではなく、1,000円×40時間+1,250円×8時間で給与を計算しなくてはならないのです。

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2. 最低賃金を割ってはならない

第二十八条 賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。
労働基準法

上記に付随して気をつけておきたいのは最低賃金です。一般的に労働者と給与交渉をする時に、「月給20万円」といった形で契約する場合がありますが、この時残業代の兼ね合いで最低賃金を割ることもあります。

例えば東京都の企業で月の稼働日数が24日である場合(便宜上、1ヶ月28日とします。)、1日8時間以上の労働をさせなかったとしても最低197,000円は支払わなければなりません。これを下回る金額で労働させた場合、労働基準法に違反することになります。

どういうことかというと、東京都の最低賃金は985円ですから、20日間は985円で労働させることが可能です。しかし、4日分は残業扱いになりますから、1.25倍の1,231円を支払う必要があるのです。

正社員の場合は月給で契約することが通常であるため、時給は関係ないような気がしてしまいますが、時給換算した時に最低賃金を下回ってしまう場合労働基準法違反ということになるのです。

特に気をつけたいのはみなし労働制を採用する会社です。例えば月給が25万円であるとしても、月の合計労働時間が236時間を越えると最低賃金が下回ることになります。また、深夜労働(22時〜翌5時)があった場合はさらに1.25倍の割増賃金を支払う必要がありますから、注意してください。

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3. 最低週1回は休ませなければならない

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
労働基準法

休日についても法律で規制されています。例えば10連勤や20連勤というのは基本的に法律で認められていないのです。ただし、基本給の1.35倍以上の休日割増賃金を支払うことで休日に労働させることが可能です。

つまり、週に6日以上労働させる場合は、割増賃金を支払う必要があるということです。また、この労働が深夜(22時〜翌5時)をまたぐ場合は、その分については追加で1.25倍——合計で1.6倍の割増賃金が必要になります。時給が1,000円の労働者であれば1,600円の時給ということです。

これはみなし労働制や年俸制の労働制度を採用している企業でも同一です。

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4. 出産前後の女性の請求を断ることはできない

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
労働基準法

あまり知られていませんが、妊婦や産後の女性は法律によって堅く守られています。例えば、以下のような法律があります。

  • 産後8週間を経過しない者を就業させてはならない
  • 妊娠中の女性は軽易な業務を希望する場合、業務内容を転換しなければならない
  • 妊婦、産婦が希望した場合、残業をさせてはならない
  • 妊婦、産婦が希望した場合、深夜労働をさせてはならない
  • 労働者が希望した場合、生後1年未満の生児を育てる女性に対して、休憩時間の他に1日2回、1回30分以上の育児に使う時間を与えなければならない

「労働者が請求した場合」とあるため、企業が自発的にこれらの待遇を行う義務はありませんが、上記のようなことを断ったり、これを理由に不当な評価を行ったりした場合は裁判で勝てないと考えておきましょう。

まとめ

上記では「よくある労働基準法の違反」というものをテーマにご紹介してきましたが、この他にも休憩時間に関することや勤務時間外のことなど、細かいところまで見れば何らかの違反をする企業は非常に多いです。

しかし、こういった違反がある状態で助成金の申請をすることはできません。仮に隠して申請しようものなら、不正受給とみなされ罰則を受けることにもなります。

助成金を申請する前に、今一度労働基準法について見直してみて、本当に違反がないか確認するようにしてください!

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。