企業の社会的役割の一つとして多様な人材を登用することが求められる中で、人材費の問題に頭を悩ませている企業は多いでしょう。
「特定求職者雇用開発助成金」は、高年齢者や障害者、母子家庭の母など、再就職が困難な方を雇用した企業に対して支給される制度として、注目を集めています。
しかし、いざ申請するには「対象となる企業・求職者の条件は?」「対象外となるケースは?」といった詳細な要件まで確認する必要があります。
そこで、この記事では「特定求職者雇用開発助成金」の対象者や企業側の要件をわかりやすく解説します。
特定求職者雇用開発助成金とは
特定求職者雇用開発助成金とは、何らかの事情によって就職が困難な求職者を雇用した事業主を助成する制度です。
対象者によって以下の5つのコースに区分されています。
- 特定就職困難者コース
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
- 中高年層安定雇用支援コース
- 生活保護受給者等雇用開発コース
- 成長分野等人材確保・育成コース
なお、被災者雇用開発コースは令和5年に廃止され、さらに就職氷河期世代安定雇用実現コースは令和7年3月末をもって廃止されます。
特定求職者雇用開発助成金の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】特定求職者雇用開発助成金とは?各コースを徹底解説


特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象となる事業主・求職者
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは、高年齢者や障がい者といった就職困難者を、ハローワークなどの紹介によって継続雇用する労働者として雇用する事業主に対して助成するコースです。
ここでは、特定就職困難者コースの対象となる事業主・求職者の主な要件を解説します。
対象事業主
特定就職困難者コースの対象となる事業主の主な要件をまとめました。
- 雇用保険の適用事業主であること
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により、対象労働者を雇用すること
- 対象労働者の出勤状況や賃金の支払状況などを明記した労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などを整備・保管していること
- 雇用保険の一般被保険者として対象労働者を雇い入れること
- 対象労働者を継続雇用することが雇入れ時点で確実であること
参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
また、有期雇用労働者の場合には、雇用契約書に「自動更新(本人が望む限り更新できる)」であることが記載されている必要があります。
対象となる求職者
特定就職困難者コースの対象となる求職者は、以下のいずれかに該当する求職者です。
- 60歳以上の者
- 身体障がい者
- 知的障がい者
- 母子家庭の母など
- 父子家庭の父(児童扶養手当を受けている場合に限る)
- 中国残留邦人等永住帰国者
- 北朝鮮帰国被害者など
- 認定駐留軍関係離職者(45歳以上に限る)
- 沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上に限る)
- 漁業離職者求職手帳所持者(「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法」によるものかつ45歳以上に限る)
- 手帳所持者である漁業離職者等(45歳以上に限る)
- 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(45歳以上に限る)
- 認定港湾運送事業離職者(45歳以上に限る)
- アイヌの人々(北海道に居住しており、45歳以上であり、かつハローワークまたは地方運輸局の紹介による場合に限る)
- ウクライナ避難民
- 重度障がい者(重度障がい者・45歳以上の身体障がい者・重度知的障がい者・45歳以上の知的障がい者・精神障がい者)など
参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の対象となる事業主・求職者
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) とは、発達障がい者や難病患者をハローワークなどの紹介により、継続雇用する労働者として雇用する事業主に対して助成するコースです。
ここでは、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの対象となる事業主・求職者の主な要件を解説します。
対象事業主
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの対象となる事業主の主な要件をまとめました。
- 雇用保険の適用事業主であること
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により、対象労働者を雇用すること
- 対象労働者の出勤状況や賃金の支払状況などを明記した労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などを整備・保管していること
- 雇用保険の一般被保険者として対象労働者を雇い入れること
- 対象労働者を継続雇用することが雇入れ時点で確実であること
参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」
対象となる求職者
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの対象となる求職者は、以下の要件に該当する求職者です。
- 障害者手帳を所持しておらず、発達障がいまたは難病のある方
※発達障害の場合、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害者支援法第2条に規定する発達障がい者 - 雇入れ日時点で満年齢が65歳未満である方
参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」


特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)の対象となる事業主・求職者
特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース) とは、雇入日時点で35歳~60歳未満の正規雇用に就くことが困難な方を、ハローワークなどの紹介により正規雇用労働者として雇用する事業主に対して助成するコースです。
ここでは、中高年層安定雇用支援コースの対象となる事業主・求職者の主な要件を解説します。
対象事業主
中高年層安定雇用支援コースの対象となる事業主の主な要件をまとめました。
- 雇用保険の適用事業主であること
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により、対象労働者を雇用すること
- 対象労働者の出勤状況や賃金の支払状況などを明記した労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などを整備・保管していること
- 雇用保険の一般被保険者として対象労働者を雇い入れること
- 対象労働者を継続雇用することが雇入れ時点で確実であること
参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」
対象となる求職者
中高年層安定雇用支援コースの対象となる求職者は、以下の要件に該当する求職者です。
- 35歳~60歳未満の方
- 過去5年間に、正規雇用労働者であった通算期間が1年以下である方
- 過去1年間に、正規雇用労働者などとして雇用されたことがない方
- ハローワークなどの紹介の時点で「失業している方」または「非正規雇用労働者など安定した職業に就いていない方」で、かつハローワークなどにおいて、個別支援などの就労に向けた支援を受けている方
- 正規雇用労働者として雇用されることを希望している方
参照:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)の対象となる事業主・求職者
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース) とは、ハローワークまたは地方公共団体において、通算3ヶ月を超えて支援を受けている生活保護受給者や生活困窮者を、ハローワークなどの紹介により、継続雇用する労働者として雇用する事業主に対して助成するコースです。
ここでは、生活保護受給者等雇用開発コースの対象となる事業主・求職者の主な要件を解説します。
対象事業主
生活保護受給者等雇用開発コースの対象となる事業主の主な要件をまとめました。
- 雇用保険の適用事業主であること
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により、対象労働者を雇用すること
- 対象労働者の出勤状況や賃金の支払状況などを明記した労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などを整備・保管していること
- 雇用保険の一般被保険者として対象労働者を雇い入れること
- 対象労働者を継続雇用することが雇入れ時点で確実であること
対象となる求職者
生活保護受給者等雇用開発コースの対象となる求職者は、3か月以上、以下のいずれかの支援を受けている65歳未満の生活保護受給者または生活困窮者です。
- 地方公共団体からの支援要請に基づくハローワークにおける支援
- 地方公共団体における被保護者就労支援事業による支援
- 地方公共団体における生活困窮者自立相談支援事業による就労支援
なお、上記の支援を2つ以上受けている(もしくは受けていた)場合は、それらの期間が通算して3か月を超えている場合に、支給対象になります。


特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)の対象となる事業主・求職者
成長分野等人材確保・育成コースには、以下の2つの助成メニューが設けられています。
助成メニュー【1.成長分野】
デジタル・グリーン分野の業務に従事させる事業主が、就職困難者を継続雇用する労働者として雇用し、 職場定着に取り組む場合に、特定求職者雇用開発助成金の他のコースより高額の助成金を支給するコースです。
助成メニュー【2.人材育成】
未経験の就職困難者を、ハローワークなどの紹介により雇い入れて、人材開発支援助成金による人材育成や賃上げを行った場合に、特定求職者雇用開発助成金の他のコースより高額の助成金を支給するコースです。
ここでは、成長分野等人材確保・育成コースの対象となる事業主・求職者の主な要件を解説します。
対象事業主
成長分野等人材確保・育成コースの対象となる事業主は、「対象労働者種別に対応する特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件をすべて満たすこと」が求められます。
また、助成メニューごとに以下の要件が設けられています。
助成メニュー【1.成長分野】
- 対象労働者を、「デジタル化関係業務 」「グリーン化、カーボンニュートラル化関係業務」のいずれかの成長分野の業務に従事させる事業主であること
- 対象労働者に対して、雇用管理改善または職業能力開発に関する取り組みを行うこと
- 2・3の報告書を提出すること
助成メニュー【2.人材育成】
- 対象労働者が就労の経験のない職業に就くことを希望する者であること
- 対象労働者を支給要領に定める人材開発支援助成金を活用した訓練を行い、当該訓練と関連した業務に従事させること
- 毎月決まって支払われる賃金を雇入れ日から3年以内に、雇入れの日(試用期間がある場合は本採用後の日)の賃金と比べて5%以上引上げられていること
対象となる求職者
成長分野等人材確保・育成コースの対象となる求職者は、特定求職者雇用開発助成金のその他のコースの対象となる求職者がすべて含まれます。
例えば、60歳以上の方や身体障がい者、母子家庭の母・父子家庭の父、発達障がい者、就職氷河期世代を含む中高年層、生活保護受給者などです。
まとめ
この記事では特定求職者雇用開発助成金の対象となる事業主・求職者の要件について解説しました。
特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難な事情をもったさまざまな境遇の求職者の雇用に活用できる制度です。自社で雇用を検討している対象者が、どのコースに該当するのかをまず理解することが大切です。
特定求職者雇用開発助成金の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントに依頼すると確実な受給につながります。まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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