デジタル技術の進化や顧客ニーズの変化など、さまざまな要因によって現代の市場変化はとてつもなく速くなっています。市場変化に対応し続けるには、企業は新たな事業の展開やDX化への対応などが必要です。

こうした取り組みを行うためには、人材育成が欠かせません。その際、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリングコース)を活用することで、人材育成にかかる経費を低減できます。

そこで、この記事では人材開発支援助成金(事業展開等リスキリングコース)の概要や支給要件、助成額について詳しく解説します。

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人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは、従業員に対して、職務に関連する専門的な知識や技能の習得のための職業訓練などを計画・実施した場合に、かかる経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

取り組み内容によって、以下の6つのコースに分かれています。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース(令和6年4月から障害者能力開発助成金へと移管)

この記事では、上記のうち「事業展開等リスキリング支援コース」について詳しく解説します。その他の各コースの概要や助成額・助成率などは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材開発支援助成金とは?わかりやすく各コースを解説

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人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の支給要件

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための訓練を計画・実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

なお、2022年~2026年までの期間限定となっているため、活用する場合には早めに計画しましょう。

基本要件

事業展開等リスキリング支援コースの基本要件は、以下の3つです。

1 OFF-JT訓練であること
2 実訓練時間が10時間以上であること
3 いずれかに当てはまる訓練であること 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
事業展開は行わないが、事業主において企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

以下のような訓練は対象にならないため、注意が必要です。

  • 単にデジタル機器を使用して文章・数値の入力や、書式・レイアウトの変更程度の初歩的な操作を行う内容のみの訓練
  • 単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合や、コンサルタントによる指導

対象となる事業主

対象となる事業主は、以下のすべてを満たす事業主です。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 事業内職業能力開発計画やこれにもとづく職業訓練実施計画届を作成し、その内容を労働者に周知していること
  • 職業能力開発推進者を選任していること
  • 従業員に職業訓練などを受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っていること
  • 助成金の支給または不支給の決定にかかる審査に必要な書類などを整備し、5年間保存している事業主であること
  • 助成金の支給または不支給の決定にかかる審査に必要な場合、管轄労働局次長の求めに応じて書類を提出や実地調査に協力するなど、審査に協力する事業主であること
  • 事業展開等実施計画を作成する事業主であること
  • OFF-JTをオンラインで実施する場合、テレワーク勤務を制度として導入し、労働協約または就業規則などで定めていること

対象となる労働者

対象となる労働者は、以下のすべてを満たす労働者です。

  • 事業所において、被保険者であること
  • 訓練実施期間中において、被保険者であること
  • 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載された被保険者であること
    (定額制サービスによる訓練の場合は、「定額制サービスによる訓練に関する対象者一覧」に記載された被保険者であること)
  • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
  • eラーニングによる訓練及び通信制による訓練などの場合、受講を修了していること
  • 定額制サービスによる訓練の場合、定額制サービスに含まれる教育訓練を修了した者であり、その修了した訓練の合計時間数が1時間以上であること

対象となる訓練

対象となる訓練は、以下の「事業内訓練」「事業外訓練」のいずれかにより実施されるOFF-JTです。

【事業内訓練】
以下のいずれかに該当する訓練のこと

  • 自社で企画・主催・運営する訓練計画により、いずれかの要件を満たす社外より招へいする部外講師により行われる訓練など
  • 自社で企画・主催・運営する訓練計画により、いずれかの要件を満たす部内講師により行われる訓練など
  • 事業主が自ら運営する認定職業訓練

【事業外訓練】
以下のいずれかの施設に委託して行う、社外の教育訓練機関に受講料を支払って受講させる訓練のこと

  • 公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校、職業能力開発促進法第15条の7第1項ただし書に規定する職業訓練を行う施設、認定職業訓練を行う施設
  • 助成金の支給を受けようとする事業主以外の事業主・事業主団体が設置する施設
  • 学校教育法による大学など
  • 各種学校等(学校教育法第124条の専修学校、同法第134条の各種学校、これと同程度の水準の教育訓練を行うことのできるもの)
  • その他職業に関する知識、技能、技術を習得させ、向上させることを目的とする教育訓練を行う団体が設置する施設

一方で、事業展開等リスキリングコースの対象とならないOFF-JTの例には、以下のような訓練が挙げられます。

  • 職務に直接関連しない普通自動車運転免許の取得のための講習など
  • 職業人として共通して必要となる接遇・マナー講習など
  • 趣味教養を身に着けることを目的とする日常英会話や話し方教育などの講習
  • 法令などで受講が義務付けられている道路交通法にもとづき実施される法定講習など

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

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人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の助成額・助成率

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の助成額・助成率を解説します。

助成額・助成率

助成額・助成率は以下のとおりです。

経費助成 賃金助成
(1人1時間あたり)
75%(60%) 960円(480円)

※()内は中小企業以外の助成額・助成率

なお、eラーニングによる訓練、通信制による訓練、定額制サービスによる訓練及び育児休業中の者に対する訓練などは経費助成のみです。

助成限度額

【経費助成限度額】
経費助成限度額(1人1訓練あたり)は、以下のとおりです。

企業規模 10時間以上
100時間未満
100時間以上
200時間未満
200時間以上
中小企業事業主 30万円 40万円 50万円
中小企業事業主以外 20万円 25万円 30万円

※定額制サービスによる訓練の場合、1人あたり月2万円です。

【賃金助成限度額】
賃金助成限度額(1人1訓練あたり)は、1,200時間が限度時間です。
ただし、専門実践教育訓練の場合、1,600時間が限度時間となります。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

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人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の申請の流れ

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の申請の流れをまとめました。

  1. 社内の職業能力開発推進者を選任する
  2. 社内の事業内職業能力開発計画を策定する
  3. 訓練開始日から起算して1か月前までに、職業訓練実施計画届を労働局に作成・提出する
  4. 訓練を実施する
  5. 訓練終了日から起算して2か月以内に、支給申請書を労働局に作成・提出する
  6. 提出した書類をもとに、労働局で審査が行われる
  7. 助成金の支給または不支給が決定する

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

まとめ

この記事では、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の概要や支給要件、申請方法について解説しました。

人材育成への取り組みは、企業経営の安定にも不可欠です。特に新規事業の立ち上げなどの事業展開やDX化に対応するデジタル人材の育成が求められています。そうした人材育成に取り組む場合には、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の申請がおすすめです。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。