ものづくり補助金は、革新的な製品やサービスの開発、生産プロセスの改善に取り組む中小企業・小規模事業者などが活用できる制度です。採択されれば数百万円から1,000万円超の補助を受けられる一方、競争倍率は高く、申請書の内容次第で結果が変わります。

そのため、「どうすれば採択されるのか?」「成功した企業はどんな取り組みをしたのか?」という疑問を持つ事業者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ものづくり補助金の最新の採択事例をピックアップし、業種や取り組み内容別にわかりやすく紹介します。また、成功のポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)とは、「中小企業や小規模事業者が、革新的な製品やサービスの開発、生産プロセスの改善に取り組む際に活用できる補助制度」です。

2025年最新情報である21次公募では、以下の2つの枠で募集が開始されています。

・製品・サービス高付加価値化枠
革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資などを支援するコース

・グローバル枠
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資などを支援するコース

採択されれば、補助対象経費の一部を国から支援してもらえるため、新規事業や設備投資の負担を大きく軽減できます。

以下に、各枠において共通となる対象事業主や対象経費などの概要をまとめました。

項目 内容
補助対象者 中小企業・小規模事業者(製造業、サービス業、建設業など幅広い業種が対象)
補助率
  • 中小企業:2/3
  • 小規模事業者:2/3
対象経費 設備投資費用、システム開発費、試作品開発費、広告宣伝費など
公募回数 年数回(通常は2〜3回)

ものづくり補助金の各コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2025年最新】ものづくり補助金とは?各コースを徹底解説

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ものづくり補助金の採択事例5選

ここでは、公式ホームページで紹介されている採択事例のうち、2023年度の「ものづくり・商業・サービス補助金成果活用グッドプラクティス集」から、ものづくり補助金の採択事例を5つ紹介します。

【製造業】生産情報の一元管理と可視化を実現

吉野電化工業株式会社は、自動車、建設機械、航空機等の重要部品向けの硬質クロムめっきや無電解ニッケルめっきを行っている製造業を営む会社です。

かねてからの課題であった「生産体制のIT化」の一環として、ものづくり補助金の支援を受けつつ「生産管理システム」を導入しました。以下に、吉野電化工業株式会社が取り組んだ事業内容とその成果についてまとめました。

導入前の状況 製造現場の作業員は、生産管理部門への作業実績の報告を紙の伝票持参で行っていた。
取り組み内容
  • システム化による現場の抵抗を十分に想定し、しっかりと従業員の声を集めたうえで、運用フローの見直しを行った。
  • 各工場における生産管理情報をデータベース化し、サーバーに蓄積し、情報の全社一元管理を行った。
導入後の成果 生産データが一元化されて生産の進捗管理がシステム上で可能となったことで、以下のような成果が得られた。

  • 生産計画作成の時間削減:1人あたり平均3時間30分/日→30 分/日
  • 入力作業時間削減:1人あたり平均5時間 /日→1時間/日
  • 移動時間の短縮:平均7時間30分/日→30分/日
  • 対人接触回数:100 回/日→10 回/日
  • ライン稼働率向上:1拠点(ライン)あたり 65%→75%

【食品業】鮮度保持による国内販路を拡大

株式会社MMCフードサービスは、「農・水・畜」の幅広い食材を取り扱い、パッケージングから物流、配送までを行っている企業です。

近年需要が増加している北海道産ブロッコリーの西日本エリアへの販路拡大において、課題であった品質保持を改善するために「製氷機・製氷機用冷凍機・貯氷庫」を導入しました。以下に、株式会社MMCフードサービスが取り組んだ事業内容とその成果についてまとめました。

導入前の状況 集荷したブロッコリーの冷却に時間がかかり、かつ対応できる数量にも限界があった。
取り組み内容 既存の冷蔵エリアに、製氷機・製氷機用冷凍機・貯氷庫を一体整備し、入荷・仕分・梱包・出荷までのコールドチェーンの構築を実施した。
導入後の成果 コールドチェーンの構築により、以下のような成果につながり、西日本エリアへの発送が可能になった。

  • ブロッコリーの冷やし込み時間:12時間→4時間
  • 作業人数:10ケースあたり4名→2名
  • 鮮度保持日数:3日→4日

【建設業】生産性と品質が向上し、新市場への参入を推進

株式会社九州ロードはガードレールやフェンスなどの交通インフラの設置工事を手がける会社です。

少数精鋭体制の構築や利益向上を実現するために、主要業務であるガードレール設置工事の生産性と品質向上が課題解決につながるとして、高性能の「杭打機・削岩機」を導入しました。以下に、株式会社MMCフードサービスが取り組んだ事業内容とその成果についてまとめました。

導入前の状況 支柱の打ち込み作業に最低2名必要であり、杭打機のサイズが合わなかったことで、高速道路のガードレール設置工事を受注できない状況にあった。
導入後の成果 以下のような成果を得られただけでなく、高速道路のガードレール設置工事に参入できるようになった。

  • 打ち込める支柱の数:1日あたり60~80本→100~150本
  • 作業人数:2人→1人

【卸売業】生地メーカー業界の活性化を促進

Bird fab studio株式会社は、アパレルと生地メーカーをITプラットフォーム上でマッチングさせるシステム「KIZIARAI(キジアライ)」を構築・運用している会社です。

国内生地メーカーとアパレルが直接出会えるプラットフォームとして、「KIZIARAI」を発展、進化させるための高機能化を実施しました。以下に、Bird fab studio株式会社が取り組んだ事業内容とその成果についてまとめました。

取り組み内容 「KIZIARAI」に以下の機能を追加した。

  • サプライヤー(生地メーカー)検索機能
  • 記事検索機能
  • マッチング機能
  • その他機能
導入後の成果 2018年にはお客様ゼロからスタートしたサービスが、本取り組みにより、以下のような成果につながった。

  • 生地メーカーのアカウント登録数:生地メーカー約60→65社
  • アパレルのアカウント登録数:1,650社

【サービス業】仕組み構築によって、働きやすさと生産性向上を両立

Peace株式会社は、山形県内で美容室や福祉施設や要介護者向けの出張ヘアカットサービスなどを展開している会社です。

人口減少・少子高齢化による市場の縮小などといった不安要素の中で事業拡大を図るために、徹底した差別化を行う必要があると判断し、「自動洗髪機」を導入しました。以下に、Peace株式会社が取り組んだ事業内容とその成果についてまとめました。

導入前の状況 地方の現状に即した新サービス「白髪染め専門店」を開設し、その働き手として休眠美容師を確保する必要があった。
取り組み内容 美容室よりも安くサービスを提供するために、極限まで生産性を高めることを意識し、店舗運営の仕組みを構築した。
導入後の成果 効率化を成功させ、多くの店舗では開店してすぐに1日の予定枠が埋まるようになった。

  • スタッフが洗髪にかかる時間:20分→5分
  • 洗髪やドライヤーなどは客のセルフサービスとしたことで、スタッフは毛染め作業のみに注力して品質向上を図れるようになった。
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ものづくり補助金の採択事例に共通する成功のポイント

採択を勝ち取っている事業者は、単に新しい設備やシステムを導入するだけでなく、「補助金の目的と自社事業の方向性を一致させる戦略」や、「事業計画の説得力」を重視しているといった共通点が見えてきます。

ここでは、ものづくり補助金の採択事例に共通する成功のポイントを解説します。

ものづくり補助金の目的と補助事業の関連性の高さ

採択されている事例の多くは、ものづくり補助金の基本的な目的である「革新的なサービス・製品の開発」や「国内における生産性向上」に直結しています。

  • 課題設定が明確:現状の生産性の課題や業務の非効率な部分を定量的に示している。
  • 補助金活用の必然性:その課題解決に向けて、補助金を活用する必然性や資金面での必要性を明確化している。
  • 地域・産業全体への波及効果:自社だけでなく、地域経済や取引先企業への貢献度を具体的に説明している。

このように、補助金の目的と補助事業の内容が一致していると、審査の際に評価されやすくなります。

補助事業の「革新性」「市場性」「実現可能性」が明確

採択事例では、事業計画の中で以下の3つの要素について、明確に打ち出していることがわかります。

評価項目 採択事例での特徴
革新性 他社にない新技術や新しい業務プロセスの導入により、競合他社との差別化を実現している。
市場性 市場規模や動向の分析、将来的な成長についてデータで裏付けられており、ターゲット層や販売戦略を明確化している。
実現可能性 必要な技術力を有しており、導入スケジュールや運用体制などが具体的かつ現実的であると判断できる。

この3つの要素をバランスよく盛り込み、かつ説得力のあるデータや事例を添えることで、審査員が「成功する可能性が高い」と判断しやすくなります。

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ものづくり補助金の申請時に押さえるべき手順・準備書類

ものづくり補助金の採択を目指すには、申請手順や必要書類の準備を計画的に進めることも欠かせません。スケジュールに余裕をもって準備するとともに、必要に応じてコンサルタントによるサポートを受けることも検討しましょう。

ここでは、ものづくり補助金の申請時に押さえるべき手順・準備書類について解説します。

申請の流れ・必要な準備書類

ものづくり補助金の申請の流れと必要な準備書類をまとめました。

  1. 公募要領を確認する
  2. 電子申請に必要なGビズIDを取得する
  3. 事業計画を策定する
  4. 必要書類を準備する
  5. Jグランツシステム申請書を作成し、電子申請を行う
提出書類 提出方法
基本情報 システム入力
事業計画書
補助経費に関する誓約書
賃金引上げ計画の誓約書
決算書(直近2期分の賃借対照表、損益計算書など) PDF添付
従業員数の確認資料(法人事業概況説明書の写しなど)

この他にも、特例措置を申請する場合などには追加で提出しなければならない書類もあります。公募要領をよく確認し、早めに準備することが大切です。

申請にはコンサルタントの活用を

ものづくり補助金の申請は、事業計画の作成や必要書類の準備などの専門的で複雑な条件を満たす必要があります。

その際、経験豊富な補助金コンサルタントを活用することで、採択の可能性を高められるだけでなく、申請手続きにかかる手間や時間を削減できます。特にはじめて申請する企業や、社内に補助金に精通した人材がいない企業の場合には、コンサルタントの活用がおすすめです。

まとめ

この記事では、ものづくり補助金の業種別の採択事例やそれぞれの事例に共通の成功ポイントを解説しました。

ものづくり補助金は幅広い業種が活用できる制度ですが、それぞれの採択事例には、「ものづくり補助金の目的と、実施事業が整合している」「審査項目を反映した事業計画書を作成できている」といった共通点が見られます。

ものづくり補助金の受給を検討している事業主の方は、プロのコンサルタントへの依頼がおすすめです。採択される確率を高められるため、まず以下から無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。