少子高齢化に伴う労働力人口の激減により、人材の確保は企業の大きな課題となっています。

事実、2018年上半期の人手不足倒産は70件発生しており、中でもサービス業が前年比26.7%増となっています。

東京商工リサーチが行ったアンケート調査によれば、2017年に賃上げ実施した企業は有効回答5913社の約8割。大企業が46.7%、中小企業で53.8%と、大企業よりも中小企業のほうが社員定着のため、積極的に賃上げを行っていました。

結果としては7割を超える企業が効果を実感。効果が実感できなかった企業の内およそ7割も引き続き賃上げをしていく予定と回答していました。

世帯構造と労働力の変化

総務省の「労働力調査」では、1987年と2017年の世帯構造と労働力を比較。この30年で専業主婦世帯は3割減少し、共働き世帯は6割ほど上昇しました。

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、1991年には育児休業法が成立したことも、こうした変化を後押ししたのでしょう。また、主婦パートの増加も女性労働力率上昇の一因となっており、2017年現在非正規社員として働いている女性は55.8%と、30年前と比べ20ポイント上昇しています。

このように、女性労働力が増加する一方、60~64歳の高齢者の労働力人口の割合は1.5倍に増加しています。背景には、2006年の改正高年齢者雇用安定法の施行により、定年を過ぎた60歳以上の高齢者であっても働き続けられるようになったことがあります。

また、性別や年齢に関わらず、家事との両立を図りながら働く人が増えてきた結果、ライフスタイルが変化・多様化してきました。

福利厚生の現状と課題

上述したように、この30年の間に働く人々の価値観や取り巻く環境は大きく変化しました。では、企業はそうした変化に、どのように対応していくことが求められるのでしょうか。

厚生労働省「平成28年就労条件総合調査」によると、企業独自の「法定外福利費」は、企業規模の大きさに比例しており、社員数1000人以上と30~99人の企業を比較すると、支給額におよそ1.8倍の差が見られます。

また、法定外福利費の内訳は、企業規模30~99人では、「私的保険制度への拠出金(社員の代わりに企業が保険料を支払う際計上される費用)」が最多で全体の3割ほど。1000人以上企業になると、わずか4.2%にとどまります。

社員1人当たりの支出額は大企業386円、中小企業1102円と、約3倍。とはいえ、ライフスタイルが多様化する現在、個別に確認しない限り、社員が望んだ福利厚生の内容とは限らないでしょう。つまり、社員のニーズに添った福利厚生制度を実施するには、実際に調査を行うなど、確認した上で制度を見直す必要があるのです。

一方、「住居に関する費用」は企業規模と割合が比例している傾向にあります。

全国に事業所を構える企業の場合、定期的に転勤が発生します。社員の負担を軽減するために住宅費用の補助が必要となり、企業規模が大きいほど社宅や寮の整備、持ち家の補助などが行われていることが分かります。

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社員のニーズと福利厚生の変化

大企業と中小企業の福利厚生を比較した場合、社員1人にかけている支給額だけでなく、重視しているポイントが異なることが分かりました。では、こうした事実を踏まえ、社員の定着や意欲向上のために、中小企業はどうやって福利厚生制度を充実させればよいのでしょうか。

日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」によると、大企業の福利厚生は、30年間で「住宅関連」「文化・体育・レク」が低下する一方、「ライフサポート」「医療・健康」が上昇しています。こうした福利厚生の変化から、時代の流れとともに従来の施設充実型からサービスの充実へと、社員のニーズが変化してきたことが伺えます。

ニーズの多様化に応えるため、福利厚生制度も時代の流れと共に変化してきました。

2005年頃から福利厚生に新しく「カフェテリアプラン」という制度が導入されました。このカフェテリアプランは、企業が独自に設定した福利厚生制度の選択肢から必要なメニューを選択できる福利厚生制度で、企業から付与されたポイントを消費することで、社員は好きなサービスを選ぶことができます。

福利厚生の充実は社員の定着率を上げます。多様なニーズに応え福利厚生を充実させれば、社員のワーク・ライフ・バランスは向上するでしょう。そして、ワーク・ライフ・バランスの向上は、働き方を変えることにもつながるのではないでしょうか。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。