現在、日本は景気拡大局面にあり、その期間は戦後2番目の長さになります。

「3%の賃上げが実現するよう期待する」という安倍首相の表明からも分かるように、経済の好循環やデフレ脱却のために賃上げが期待されています。

この3%という数字の根拠は、バブル期(1981~1991)の年平均3.6%という伸びから導き出したものです。戦後2番目の長さである今回(2012~2016)は、わずか0.4%にとどまっており、3%程度であれば問題ないという考えでしょう。

しかし、肝心の企業は賃上げの前提として現場の生産性向上を求めており、双方の考え方には隔たりがあるようです。

働き方改革は賃上げに結びつくか

2018年度の最低賃金は時間当たり26円上げる見通しで、16、17年度の25円よりも上がっています。これは、最低賃金を時給で示すようになってから最も高い上げ幅です。その一方で、サラリーマンの賃上げは足踏み状態となっています。

上述したように、現在の日本経済は景気拡大局面にあり、企業には賃上げの元手があることは間違いないでしょう。統計で見ても利益は右肩上がりで、現金や預金も増加しているのが分かります。また、労働人口が減っていることで採用競争も激しくなっており、企業も賃上げを拒否し続けることはできない情況です。企業は賃上げの前提として生産性の向上を求めているものの、こうした現状は無視できないでしょう。

賃金交渉は労働組合と企業が話し合い決められるものであって、首相の要請だけで賃上げを決められるわけではありません。賃金の引き上げは、企業の生産性向上と歩調を合わせ、現場の声を聴いた上で判断することが求められます。

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働き方改革で求められる生産性の向上

では、企業が求める生産性を向上させるためには、何が必要なのでしょうか。

働き方改革法案では、「残業時間の削減」と「生産性の向上」を課題としています。安易に残業時間を削減しても、単純に労働時間が減るだけで効果は期待できません。残業時間の削減と生産性の向上を両立するためには、業務効率が鍵になります。

つまり、「どれだけ時間をかけて仕事をこなすか」ではなく、「限られた時間内で最大のパフォーマンスを発揮するにはどうすればよいか」と、考え方を改める必要があるのです。

これは長い間、長時間労働を美徳としてきた日本の価値観を根底から覆すことになるので、一朝一夕に変えられることではないでしょう。

まずは、時間というコストに対する考え方を改めることが重要です。業務効率の改善は、そのまま時間の使い方の改善につながります。効率的に時間を活用するために、まずは業務で使用するツールを見直すなど、できることから改善していくことをお勧めします。

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生産性を向上させるマネジメント

業務効率を上げ、生産性を向上させるためには、個人だけでなく管理職のマネジメント方法も変えていく必要があります。

これからは、日本で長らく当たり前とされてきた、いわゆる昭和のマネジメントから脱却し、部下の活躍を精神的、育成的に支援することが重要になってくるでしょう。

上位下達で、ただ指示命令すればマネジメントが成り立つような時代ではありません。働き方改革に伴い生産性を向上させる鍵は、いかにマネジメントに対する考え方を変えられるかではないでしょうか。

働き方改革からも分かるように、求められるのはワーク・ライフ・バランスです。「残業規制」「同一賃金同一労働」「脱時間給制度」という働き方改革の3つの柱を念頭に、従業員の働きやすさを考慮したマネジメントが求められます。

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生産性の向上は職場環境の改革から

経営者側は先に生産性を求めるでしょうし、従業員は先に賃上げを求めるでしょう。

「生産性と賃上げどちらを優先すべきか」という問題は、立場によって受け取り方も考え方も変わってしまう、ある意味では正解のない問題といえるかもしれません。

バブルが弾けて一度大きく落ち込んだ日本経済は、現在戦後2番目という景気拡大局面にあり、息を吹き返してきました。その一方で、上向きの景気を実感できないという人も多いようです。この原因はやはり、「賃金が変わらない」という一言に尽きるでしょう。事実、国税庁の民間給与統計調査によれば、平均給与はほぼ横ばいという結果が出ています。

政府に求められるのは、企業が無理なく継続的に賃金を上げていくための環境整備です。どれだけ景気が拡大していても、経営者が不安を感じ賃上げに躊躇してしまうのでは、流れはどこかで停滞してしまうでしょう。
同時に非正規雇用など、低賃金で雇える労働力に頼らず済むように、経営改革が望まれます。

現場が安心して働ける環境を整えてこそ生産性は向上し、ひいては企業も抵抗なく賃上げに踏み切れるようになるのではないでしょうか。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。