2017年、飲食店での原則禁煙や違反者への過料を盛り込んだ「健康増進法改正案」が厚生労働省でまとめられ、2018年7月に参院本会議で可決、成立しました。

受動喫煙対策強化を目的とした本法案により、事務所や飲食店など不特定多数の人間が使用する施設は、原則として屋内禁煙となり、学校や病院、行政機関は敷地内禁煙となります。一方、現状では個人経営の小規模飲食店などは例外として認められており、未だ全面禁煙には至っていないのが現状です。

世界の受動喫煙対策

たばこの煙は人体に有害というのは周知の事実でしょう。依存性が高く個人ではやめることが難しいため、病院で医師の指導のもと禁煙を試みる禁煙外来を利用する方もいらっしゃるのではないでしょうか。昭和の時代には路上喫煙が当たり前だったものの、現在はごく一部の喫煙室や喫煙スペースでのみ喫煙が認められており、喫煙者を含めタバコを取り巻く環境は時代とともに大きく変化しました。

喫煙者はもちろん、受動喫煙により非喫煙者にもタバコの影響があるため、健康被害として大きな問題となっているのは皆さんご存知でしょう。これは日本国内に限った話ではなく、世界的に見ても全面禁煙化が進んでいます。

しかし、日本の受動喫煙対策は世界的に見るとかなり遅れており、世界保健機構(WHO)の国際基準には及んでいないのが現状です。事実、外国人観光客の中には建物内が禁煙になっていないことに驚く人も少なくありません。
受動喫煙対策に関わる直近の問題として、東京五輪があります。

IOCとWHOは、たばこのないオリンピックを目指すことに合意しており、2010年以来会場や屋内施設が禁煙の都市でオリンピック・パラリンピックは開催されてきました。もちろん2020年の東京五輪でも受動喫煙対策は求められており、政府はオリンピック・パラリンピック開催年である2020年4月までに全面施行することを決めたのです。

飲食店の分煙・禁煙化

こうした流れから、飲食店にも禁煙が求められています。しかし、WHOが求める全面禁煙には至っておらず、受動喫煙対策は現状分煙という形で進んでいます。

全面禁煙が進まない理由として、飲食店側の「経営に打撃を与える」という言い分が挙げられます。

様々な議論がなされた結果、「資本金5,000万円以下、客席面積が100平方メートル以下などの条件を満たす場合を例外と認め、『喫煙可能』などと掲示すれば喫煙OK」ということで落ち着きました。一方、オリンピック・パラリンピックが開催される東京都では、飲食店の面積には関係なく原則禁煙とする「受動喫煙防止条例」が制定されました。一部例外があるものの、この条例により都内の8割以上の飲食店で喫煙ができなくなる見込みです。

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個人経営店にも補助金給付

現実問題として、「レストランや居酒屋などの飲食店が禁煙になったら、売上が落ちるのではないか」といいう声があるもの事実です。確かに、受動喫煙対策は大きな課題ですが、禁煙により地域経済に悪い影響があるのなら、内容を見直す必要があるでしょう。

そこで、国や一部の自治体では、分煙に取り組む事業者への支援として補助金制度を設けました。この補助金制度は、受動喫煙防止対策の推進を目的に、喫煙室の設置などに取組む中小企業事業主に対し補助金を給付する制度です。

そして、2018年8月、個人経営の飲食店にも喫煙室補助金の給付を決め、今年度内に補助を始めることを決めました。従来の制度では、個人経営の店の場合、喫煙室設置費の補助は従業員を雇っていることが条件だったのですが、今回従業員の雇用という条件を撤廃した形となります。

補助金制度を利用して、喫煙室を設置

WHOが制定する4段階の規準では、日本の受動喫煙対策は最低レベルです。今回の改正健康増進法が施行されても、1段階上がるだけで世界的に見ればまだまだ十分とはいい難いのが実情です。とはいえ、日本国内の分煙・禁煙の流れは、特に東京五輪を迎える東京を中心に、急速に進んでいます。

資金的に喫煙室を設けるのが難しいという中小企業には、上述した補助金制度を利用しましょう。喫煙室、禁煙席、屋外喫煙所で、それぞれ異なる分煙ポイントをクリアすることで、100万円を上限に、費用の3分の2まで助成されます。
補助金を受給することで、無理なく分煙を実現しましょう。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。