働き方改革による時間外労働の上限規制や、少子高齢化という構造的な問題に伴う労働力人口の減少が深刻化する中、働き方改革によりこれまで以上に労働生産性の向上が求められています。国は対策として2018年に生産性向上特別措置法を制定し、2020年度までの「生産性革命・集中投資期間」に生産性向上に取り組む企業にたいして税制の優遇や、金融支援などが行われることになりました。
労働生産性とは、「労働時間に対してからどれだけの成果が生み出せるか」という概念で、生み出す成果の量と質が高ければ「生産性が高い」ことになります。働き方改革では、長時間労働是正のために「業務の効率化により生産性の向上を目指すこと」を大きな目標としており、労働時間を短縮した上で、これまでと同等以上の生産性が求められているのです。

労働生産性は先進国の中で最低?

働き方改革で掲げている課題は生産性の向上です。日本の生産性は、世界的に見て低いことで知られていますが、他の国と比較するとどの程度なのでしょうか。データに1時間辺りの生産性は、日本が41.3ドルのところ、ドイツ63.4ドル、フランス65.1ドルと、その低さが分かります。

経済協力開発機構(OECD)がまとめた「生産性指標総覧」によれば、日本の生産性は加盟35ヵ国中20位と平均以下の数値。先進7ヵ国の中では最下位となっており、1990年代前半から20年以上という間、この位置に甘んじています。
そんな生産性が低い日本で、特に生産性が低いとされている業種がサービス業。
ある調査によれば、「日本のサービス業の生産性は米国の半分」とのこと。確かに、日本のサービス業は過剰ともいえる水準にあるサービスを提供する一方、見合った対価を得ているとはいえないため、生産性が低いというのもうなずけますね。

また、過剰なのはサービス業だけでなく、国内で製造する商品の品質にもいえることです。「良い品を安く売る」といえば良く聞こえるかもしれませんが、つまるところ日本が提供するサービス・商品の多くは品質と対価が見合っていないということ。
サービス業・製造業など日本の主要分野が弱い状況が生産性の低さにつながっているのは、疑う余地もないでしょう。

特に日本はこれから先、ますます人口が減少していくことが分かっています。深刻な人手不足に直面している日本の企業が目指すべき生産性向上とは、「従業員の労働時間を減らしつつ、企業の付加価値を高める」ことなのです。

一説によれば、日本における生産性の低さの原因は、長期間のデフレによる物価の低さにあるといわれています。上述したように、労働生産性とは時間単位で生み出す成果です。どれだけ大量に成果を生み出しても、その単価が安いのでは生産性を上げるのは難しいでしょう。
こうした理由から、日本における生産性の低さの原因は、品質に見合わない料金の低さにあることは間違いないでしょう。

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ITの導入による生産性の向上

経済産業省中小企業庁が2018年に公表した「2018年版中小企業白書」によれば、ITツールの利活用状況と企業の売上高規模の間には、相関関係があることが推察できる。──つまり、ITツールの導入により売上の向上が期待できるとしています。

IT導入により効果が得られた中小企業は、その理由を「IT導入の目的・目標が明確だった」「専任部署・担当者を設置した」「経営層が陣頭指揮をとった」としており、回答の約3割で上位を占める結果に。次いで、「合わせて業務プロセスを見直した」「段階的にITを導入した」「導入前に現場の意見を聞いた」が約2割となっています。

ITの導入は必ずしも効果があるわけではありません。しかし、ITを導入した一定の企業が、その効果を実感しています。上述した、ITの導入により効果を得られた企業の事例を参考にすれば、ITの導入は生産性向上の大きな鍵といえるでしょう。

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ITツールの利用状況

中小企業白書によると、2018年現在でもマイクロソフトのオフィスですら「十分に活用できていない」と回答した企業が半数以上にのぼります。

筆者自身、昔いた会社ではIT系の仕事をしているにも関わらずエクセルの数式を書ける人間は筆者以外にいないような状況で、驚いたものです。
計算は電卓で行い、エクセルに手打ちをするといったいかにも非効率的な方法で業務を行っていたのです――。

数式を活用すればものの5分で終わるような仕事を3時間かけてやっているのですから、そりゃあ生産性が低いといわれても仕方ありません。
逆にいえば、これらのツールを利用することで中小企業は業績を大きく飛躍させることが可能だともいえます。

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人材開発支援助成金を活用しよう

ITの導入は生産性向上に一定の効果が期待できます。
ITツールを利用するために、ただ設備を導入すればいというわけではなく、使いこなすために様々な知識が必要です。しかし、そういったITスキルを身につけるためのセミナーや研修に参加にはコストがかかりますよね。
――頭も財布のヒモも堅い読者諸君は「そこまでして、導入する価値ある?」と思われるかもしれませんが、考えてみてください。3時間の作業が5分で終わるのです。生産性向上のために、IT導入による業務プロセスの見直しは最重要でしょう。

また、助成金を活用することも可能です。人材開発支援助成金は、こういった社員研修や従業員のキャリア形成に役立てることができる助成金で、OJTやOFFJTの企業の負担を減らすことができます。
こういった助成金を活用して、生産性の向上に役立ててみてはいかがでしょうか?

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。