少子高齢化による人材不足解消のために新規採用に注力することは欠かせませんが、既存の従業員を教育して、優秀な人材へと育てていくことも非常に重要です。そのためには、従業員の成長に合わせた教育・訓練制度を設けることが必要になります。
しかし、教育・訓練に費用がかかるため、積極的に実施できないという企業も多いのではないでしょうか。こうした従業員の教育・訓練に利用できる助成金に、人材開発支援助成金があります。
そこで、この記事では人材開発支援助成金の概要や各コースの目的、対象事業者、助成額を解説します。
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人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、雇用している従業員に対し、職務に関連した専門的な知識や技能を習得するための訓練を実施した場合に、かかった費用を一部助成する助成金です。
人材開発支援助成金の目的
人材開発支援助成金の目的は、企業が労働者のキャリア形成における段階的かつ体系的な職業能力開発に関する取り組みを促進させることです。
人材育成は企業の成長に欠かせないものであるものの、手間や費用がかかることから中小企業になるほど疎かになりがちです。そのため、人材開発支援助成金により、企業が人材育成に注力できる体制づくりを支援しているのです。
キャリアアップ助成金との違い
人材育成という目的が似ていることから、キャリアアップ助成金と混同される方も多いかもしれません。そこで、以下にキャリアアップ助成金との違いをまとめました。
助成目的 | 助成対象者 | |
---|---|---|
人材開発支援助成金 | 基本的に従業員のスキルアップ | 長期労働かつ週20時間以上の労働を行う雇用保険の被保険者 |
キャリアアップ助成金 | 非正規の労働者を、正規雇用に引き上げる | 有期契約労働者・無期雇用労働者 (パート・アルバイト・契約社員・派遣社員など) |
自社の使用目的を確認したうえで、目的に合った助成金を申請するようにしましょう。


人材開発支援助成金の種類一覧
人材開発支援助成金には以下の7つのコースがあります。ここでは、各コースの概要と助成金額について解説します。
人材育成支援コース
人材育成支援コースは、雇用する被保険者に対して、以下の訓練をした場合に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコースです。
- 人材育成訓練
職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上のOFF-JT訓練 - 認定実習併用職業訓練
厚生労働大臣の認定を受けたOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練 - 有期実習型訓練
有期契約労働者などに対し、正社員化を目指すためのOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
【助成額・助成率】
助成額・助成率を以下にまとめました。
※()内は中小企業以外の助成額・助成率
※出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材育成支援コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材育成支援コースを解説|人材開発支援助成金
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースとは、有給の教育訓練休暇制度等を導入したうえで、労働者がその制度を利用して、訓練を受けた場合に助成されるコースです。
主に以下の3つの取り組みが、教育訓練休暇等付加コースの対象となります。
- 教育訓練休暇制度
被保険者を対象に、3年間に5日以上の取得可能な有給の教育訓練休暇制度を導入し、実際に適用すること(制度導入に対しても30万円が支給される) - 長期教育訓練休暇制度
被保険者を対象に、30日以上の長期教育訓練休暇の取得可能な制度を導入し、実際に適用すること(制度導入に対して20万円が支給される) - 教育訓練短時間勤務等制度
被保険者を対象に、30回以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除が可能な制度を導入し、実際に1回以上適用すること(制度導入に対して20万円が支給される)
【助成額】
教育訓練休暇等付与コースの助成額をまとめました。
支給対象となる制度 | 賃金助成 (1人1時間あたり) |
賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合 | 制度導入・実施助成 (1事業あたり) |
賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合 |
---|---|---|---|---|
教育訓練休暇制度 | – | – | 30万円 | 36万円 |
長期教育訓練休暇制度 | 960円 (760円) |
– (200円) |
20万円 | 24万円 |
教育訓練短時間勤務等制度 | – | – | 20万円 | 24万円 |
※()内は大企業の場合の助成額
人への投資促進コース
人への投資促進コースは、事業主が労働者に対し訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。以下の分野における訓練を行った際に助成されます。
- 【デジタル/成長分野】高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成 - 【IT分野未経験】情報技術分野認定実習併用職業訓練
IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を実施する事業主に対する高率助成(OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練) - 【サブスクリプション】定額制訓練
サブスクリプション型の研修サービスによる訓練への助成 - 【自発的能力開発】自発的職業能力開発訓練
労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成 - 【教育訓練休暇】長期教育訓練休暇等制度
働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主への助成
【助成額】
人への投資促進コースの助成額をまとめました。
※()内は賃金要件または資格等手当要件を満たした場合の助成率・助成額
※出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」
人への投資促進コースの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材育成支援コースを解説|人材開発支援助成金
事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げの事業展開などに伴い、新たな知識や技能を習得させるための訓練を実施した事業主に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコースです。
以下の基本要件をすべて満たす必要があります。
1 | OFF-JT訓練であること | |
---|---|---|
2 | 実訓練時間が10時間以上であること | |
3 | いずれかに当てはまる訓練であること | 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練 |
事業展開は行わないが、事業主において企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練 |
【助成金額・助成率】
事業展開等リスキリング支援コースの助成金額・助成率を、以下にまとめました。
経費助成 | 賃金助成 (1人1時間あたり) |
---|---|
75% (60%) |
960円 (480円) |
※()内は大企業の助成額・助成率
各コースの詳細や最新情報については、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、中小建設事業主などが雇用する労働者に対し建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を支援するコースです。
【助成金額・助成率】
建設労働者認定訓練コースの助成金額・助成率を、以下にまとめました。
要件 | 助成額・助成率 |
---|---|
認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合(経費助成) | 対象経費の1/6 |
建設労働者に対して認定訓練を受講させた場合(賃金助成) | 3,800円 (+1,000円) |
※()内は賃金要件または資格等手当要件を満たした場合に割り増しされる助成額
詳細や最新情報については、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、中小建設事業主などが雇用する労働者の技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支援するコースです。
【助成金額・助成率】
建設労働者技能実習コースの助成金額・助成率を、以下にまとめました。
要件 | 助成額・助成率 | |
---|---|---|
経費助成 | 雇用保険被保険者数20人以下 | 3/4 |
雇用保険被保険者数21人以上 ①35歳未満の労働者 ②35歳以上の労働者 |
①7/10 ②9/20 |
|
中小建設事業主以外の建設事業主が、自らが雇用する女性建設労働者に技能実習を行う場合 | 3/5 | |
賃金助成 | 雇用保険被保険者数20人以下 | 8,550円(9,405円)/1人1日あたり (通学制で1日3時間以上受講した日) ※()内は建設キャリアアップシステム技能者情報登録者の場合 |
雇用保険被保険者数21人以上 | 7,600円(8,360円)/1人1日あたり (通学制で1日3時間以上受講した日) ※()内は建設キャリアアップシステム技能者情報登録者の場合 |
詳細や最新情報については、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)」
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者が業務に従事する際に必要な能力を開発・向上するために、教育訓練を行う施設の設置・運営を行う事業主や事業主団体に対して、その費用を支援するコースです。
なお、令和5年度をもって障害者職業能力開発コースは廃止となり、令和6年4月からは「障害者能力開発助成金」へと移管されました。
申請先も独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構に変更となっているため、注意してください。ただし、令和6年3月31日までに事業計画書や受給資格認定申請にかかる支給などは、これまでどおり労働局にて受付を行っています。
【助成金額・助成率】
助成金額・助成率は取り組み内容によって異なり、以下にまとめています。
種類 | 内容 | 助成金額・助成率 |
---|---|---|
施設や設備の設置・整備・更新 | 障害者職業能力開発訓練事業を行う訓練科目ごとの施設または設備の設置・整備または更新に要した費用 | 3/4 |
初めて助成金の対象となる訓練科目ごとの施設または設備の設置・整備の場合 | 上限5,000万円 | |
訓練科目ごとの施設または設備の更新の場合 | 上限1,000万円 | |
運営費 | 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者などを対象とする障害者職業能力開発訓練 | 1人あたり4/5 |
上記以外の障害者対象とする障害者職業能力開発訓練 | 1人あたり3/4 | |
重度障害者などが就職した場合 | 1人あたり10万円 |
詳細や最新情報については、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)」
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説人材開発支援助成金の申請方法・申請書類
ここでは、人材開発支援助成金の申請方法や申請書類について解説します。
申請方法
人材開発支援助成金の申請から受給までの流れや申請方法をまとめました。
- 労働者の訓練計画を作成
- 訓練計画の実施1ヶ月前までに、訓練実施計画届や申請生類を労働局へ提出
- 提出した訓練計画に沿って、訓練を実施
- 訓練が終了した2ヶ月以内に支給申請書を労働局へ提出
- 助成金支給または不支給の決定
また、令和5年6月から雇用関係助成金ポータルでの電子申請が可能になりました。電子申請する場合には、事前に「GビズID」の取得が必要です。
申請書類
申請書類は、各コースによって異なるため、ここでは人材育成支援コースの申請書類一覧をまとめました。ただし、人材育成支援コースの取り組み内容によって不要な提出物もあるため、確認が必要です。
1.計画届(変更届)を提出する場合 | 2.支給申請を行う場合 |
---|---|
職業訓練実施計画届 | 支給申請書 |
訓練実施計画届 | 支給申請書の別添 (有期契約労働者等を対象とした訓練の実施状況) |
通信制訓練実施計画書 | 賃金助成及びOJT実施助成の内訳 |
職業訓練実施計画変更届 | 経費助成の内訳 |
訓練実施計画変更届 | 一般教育訓練等の受講証明書・受講修了証明書 |
訓練別の対象者一覧 | OFF-JT実施状況報告書 |
OFF-JT部内講師要件確認書 | 訓練実施結果報告書 |
OFF-JT部外講師要件確認書 | eラーニング訓練実施結果報告書 |
事前確認書 | 通信制訓練実施結果報告書 |
事業所確認票 | OJT実施状況報告書(OJT訓練日誌) (認定実習併用職業訓練・有期実習型訓練) |
有期実習型訓練に係る訓練カリキュラム | 支給申請承諾書(訓練実施者) |
認定実習併用職業訓練に係るOJTカリキュラム | 育児休業中訓練の受講に関する申立書 |
有期実習型訓練に係る事前確認書 | 賃金要件等確認シート |
以下の記事で、人材育成支援コースや教育訓練休暇等付与コース、建設労働者技能実習コースにおける申請書類を詳しく解説しています。申請時にご活用ください。
関連記事:【記入例あり】人材開発支援助成金の申請書類一覧!注意点もまとめて解説


人材開発支援助成金を申請する際の注意点
ここでは、人材開発支援助成金を申請する際の注意点を解説します。
訓練経費の対象になっているかよく確認する
人材開発支援助成金では、各コースや取り組み内容によって対象となる訓練と対象外の訓練の範囲が定められています。
さらに令和6年11月5日から、訓練経費の負担の取り扱いが明確化されました。具体的には「訓練などにかかった経費を支給申請までに申請事業主がすべて負担していること」が求められています。
つまり、実施済みの訓練に係る経費の全額または一部について、教育訓練機関などから返金・減額される場合には、人材開発支援助成金の対象にはならないということです。
特に、以下の場合においても支給対象経費に該当しないため、注意しましょう。
- 教育訓練機関などから申請事業主への入金額と助成金支給額の合計が、訓練経費と同額の場合
- 教育訓練機関などから、訓練に関連する広告宣伝業務の対価として金銭を受け取った場合
- その他、訓練に付随して教育訓練機関などと締結した契約にもとづき金銭を受け取った場合
詳細は、厚生労働省が発表している最新のお知らせをご覧ください。
申請手続きへの理解を深める
人材開発支援助成金は、取り組み内容によりコースが細かく分類されており、申請手続きもそれぞれ異なります。そのため、申請手続きに時間や手間がかかることが多くあります。
スムーズに申請手続きを進めるには、申請手続きへの理解を深めて各提出物の種類や期限について把握し、管理することが大切です。
「はじめて助成金を活用する」「助成金申請にかかる手間や時間を削減したい」といった場合には、助成金コンサルタントに取得サポートを依頼すると良いでしょう。
関連記事:助成金の申請代行業者の選び方は?費用相場やメリットを解説
生産性要件は廃止されている
これまで人材開発支援助成金では、労働生産性を向上させた事業者に対して、助成額または助成率の割り増しを行う「生産性要件」が適用されてきましたが、2023年3月31日に廃止されました。
また新たな加算制度として、労働者の賃上げを行う「賃金要件」や資格等手当を支払う「資格等手当要件」が適用されています。
まとめ
日本では人口減少に伴い、企業では優秀な人材確保が急務となっています。また、在職している従業員のスキルや知識の教育・訓練が欠かせません。
人材開発支援助成金を利用することで、こうしたスキル向上にかかる費用の負担を低減できます。さまざまなコースがあるため、自社の取り組みが当てはまるコースを選ぶ必要があります。
そのため、人材開発支援助成金の申請はプロの助成金コンサルティング業者に相談することがおすすめです。助成金・補助金の申請を検討される場合、まずは無料診断を試してみてはいかがでしょうか。
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