少子高齢化に伴い、労働力不足が社会問題になっています。企業としては、労働力不足に伴い、営業時間を短縮したり、店舗を閉めたりと経営問題に発展しているほどです。そのため、企業としては、新しい人材を確保するだけでなく、今いる従業員の離職を防止する必要があります。
従業員の離職は、転職だけでなく、育児や介護など従業員の本意ではない理由も多くみられます。こうしたことから、育児や介護と仕事を両立させるための制度作りが重要になってきているのです。
他方、会社としては、リソースの都合上、順番に制度を作っていかなければならない場合も多くあります。
こうしたことから、介護制度と育児制度のどちらから取り組むべきか検討している場合もるでしょう。今回は、どちらから取り組むべきか判断するための基準などを中心にお伝えします。
時間的な制約ではなくそれ自体がストレスに
昨年1年間に新たに子どもを持った、介護が始まった人を対象に調査を行った「全国就業実態パネル調査2017」によると、仕事と育児や介護の両立のストレスについて強く感じていたと回答した割合が4割以上になっています。
このように、育児や介護は、仕事をするうえでかなりストレスになっていることが分かります。さらに、育児では子どもの世話のほかに子どもと接する時間が不足しているとストレスの原因について回答しています。
他方、介護については、介護・親の世話のほかに、親・親戚との関係をストレスの原因として挙げているのです。
このようなことから、時間的制約だけでなく、育児や介護については、仕事を一旦離れる必要がある人もいるのでしょう。
育児と介護の対象者が異なる
少子高齢化に伴い、育児と介護をダブルで行っている人もいますが、単独である場合が一般的です。
そのため、対象者から、どちらを優先させるか判断して制度設計を優先させるようにするという考え方があります。
育児に関しては、20代から30代の基本的に若い世代です。この世代は育児休暇が取れない、制度がよくないと会社に不満が生じてしまうと、対象者は退職して次の仕事を探すことになるでしょう。
そのため、比較的辞めるのも判断しやすい世代ともいえましょう。次世代の管理職候補者など実力者が他の会社に流出することは会社にとって損失になるでしょう。
こうしたことから、まだまだ伸び盛りの若手社員の定着を優先させたい場合は、育児制度から取り組んでいくことをおすすめします。
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シニア層を親に持つ従業員は、いわゆるベテラン層である40代50代の社員になります。この層の社員の場合は、介護と仕事の両立ができなくて退職するという面が大きく出ます。
さらに、介護がひと段落して社会復帰しようとしても正規職員として復帰するのは、なかなか難しいのが現状です。
また、従業員としても、長年経験を積んだ職場で復帰したいと考える人も多くいます。会社としても、管理職として活躍していた人やリーダー的なポジションで働ける人が離職してしまうのはとても大きな損失になるでしょう。
同じ実力者を雇用するのは難しいですし、一から育てるのはコストが大きくかかるからです。
こうしたことから、ベテラン層に離職されてしまうと大きな損失になると考える場合は、介護制度から取り組んでいくべきでしょう。
長期的には両方の制度を確立する必要
介護制度と育児制度のどちらを優先させるべきかについての基準となる考え方をお伝えしました。しかし、若手社員は未来の会社を担う存在ですし、ベテラン社員は会社の経営に重要な役割を担っています。そのため、結局はどちらも会社にとっては大事な存在です。そのため、長期的にみれば、どちらの制度も充実させる必要があります。
ゆえに、介護制度を先に取り組むときは、育児制度を次に着手することを念頭に制度設計するなど、留意する必要があるといえるのです。