少子高齢化が社会問題になっていますが、この問題の背景には、結婚する年齢が高くなるといういわゆる晩婚化が進んでいることが挙げられます。少子高齢化や晩婚化が進むと、ダブルケア離職が多くなるともいわれており、今後重要な問題になってくることが予測されているのです。
一方で、ダブルケアという用語すら聞いたことがないという人も数多くいます。ソニー生命保険株式会社が実施した調査によると、ダブルケアという言葉の認知度はわずかに18%という低い結果になっているのです。
この記事では、ダブルケアとはどういったものか、さらにダブルケア問題に対して企業はどう対策していくべきなのか、という点を中心にお伝えします。
ダブルケアとは
ダブルケアとはどういった意味があるのでしょうか。
ダブルケアは2つの意味で使われています。ひとつは家庭内において、子育てと介護の同意進行という意味。もうひとつは多重ケアという意味で使われているのです。
育児と介護の同時進行は、少子高齢化、晩婚化により、出産年齢が高まることで発生します。出産年齢が上がったことで、親が年を取り、介護が必要になったときと育児が重なってしまうのです。以前は、育児が一段落してから介護問題が発生することが一般的だったため、育児と介護が重なることはほとんどありませんでした。
多重ケアというのは、たとえば、ひとりで生活しているときは、身の回りのことを自分で行うだけですから何も問題はありません。しかし、子育てをしている場合は子どもへのケア、配偶者がいる場合は配偶者へのケアといったように、同居している家族がいる場合は、自分以外に配慮する状況になります。このように、一人で複数人の介護を行っている状態を多重ケアといいます。
ダブルケアの意味について、育児と介護の同時進行の意味を狭義のダブルケア、多重ケアを広義のダブルケアといい、一般的なダブルケアの意味は、育児と介護の同時進行である狭義のダブルケアで使われているのです。
ダブルケアは今後も増加する!?
内閣府の調査では、育児と介護を同時に行っている人は全国に25万人いると推計されており、今後はますます増えていくと見られています。
ダブルケアは、少子高齢化と晩婚化が原因で発生しています。現在、社会問題になっている少子化は対策こそ少しずつされていますが、まだまだ改善されている状況ではありません。さらに、戦後最も人口が多い世代に団塊世代があり、2025年にはこの世代が75歳をこえる後期高齢者となることが問題視されています。
こうしたことから、ダブルケア介護をする家庭は今後ますます増加してくると予測されているのです。ダブルケアに陥った場合、特に正規雇用で働いている人は、離職せざるを得ない状態になってしまうでしょう。
現在、人手不足が社会問題になっているなか、雇用している従業員を減らすことは会社にとって大きな損失です。ダブルケアを行っている家庭では育児・介護の費用が同時にかかり、経済的負担が大きくのしかかります。ダブルケア世帯で必要となるお金は月8万円以上と推定されており、本来ならお金のためにも働き続けたくても、時間の融通や体力的な理由で離職を選択する社員が多いのです。企業はこういった問題を改善するために雇用制度を見直し、介護離職を選択する人を少しでも減らす必要があります。
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企業では、育児休業制度や介護休業制度を設けていることが一般的になっています。しかし、ダブルケアへの対策を取っている企業はほとんどないでしょう。
ダブルケアは、育児に携わる、介護に携わる、といった単体に携わることに比べてかなり過酷な環境になります。一人でしなければならない育児、いわゆるワンオペ育児や家族だけで介護をしている孤独な介護さえも社会問題になっています。
また、育児や介護は睡眠を満足に取れないことも多いといわれており、仕事との両立によって、精神疾患や過労死につながる可能性もあるのです。
こうしたことから、ダブルケアの対策をしないでいると人手不足に陥る確率はかなり高くなるといえます。
ダブルケアに備えて職場環境を整備しよう
ダブルケアに備えるためには、近年働き方改革で提言されている同一労働同一賃金の制度を導入する方法があります。
この同一労働同一賃金は、非正規雇用でも正規雇用でも、同じ職務内容ならば、賃金を同一にする制度です。この制度を利用すれば、ダブルケアになったときに、一時的に非正規雇用に転換したり、時短勤務に転換したり、さまざまな働き方ができるため、ダブルケアの過酷な状況でも仕事を続けていくことが可能になります。
さらに、両立支援等助成金を受けることで、これからの時代に合わせた職場環境づくりの費用として活用できるのです。
助成金などを利用しながら、ダブルケアに備えた職場環境を
少子高齢化と晩婚化によって起こるダブルケアの問題は、今後も全国的に増加していくと予測されています。少子化にともない、人材不足が社会問題となっている中で、ダブルケアによって、本人の意思に反した離職が起こり、さらなる人材不足が発生するリスクが大きくなっているのです。
現在では、労働者の介護と仕事の両立を支援するための両立支援等助成金などがありますのでこういった制度を利用し、早めに雇用環境の整備に取り組んで、人材不足のリスクを減らしていきましょう。