人手不足や業務効率の課題を抱える中小企業にとって、「省力化」「生産性の向上」は欠かせない重要なテーマです。しかし、実際に取り組むにはコスト面での負担がかかります。

こうした中小企業に注目を集めている制度が、2025年度に新設・拡充された「中小企業省力化投資補助金」です。労働生産性の向上を目的とした自動化機器やデジタルツールの導入にかかるコストを軽減します。

そこで、この記事では、中小企業省力化投資補助金の概要や支給要件、補助率・補助上限、申請の流れをわかりやすく解説します。

中小企業省力化投資補助金とは

中小企業省力化投資補助金とは、「中小企業・小規模事業者などが、省力化設備やデジタルツールなどを導入する際に、その費用の一部を補助する制度」です。
全国の中小企業・小規模事業者の多くが抱えている慢性的な人手不足や業務効率化・生産性向上への対応といった共通の課題に対して、即効性のある対策を取るよう後押しすることを目的としています。

2025年度の本制度では、「カタログ注文型」と「一般型」の2種類の申請区分が設けられており、企業はニーズや投資規模に応じて柔軟に選択できます。のちほど、カタログ注文型・一般型の支給要件や補助率を詳しく解説します。

ものづくり補助金との違い

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が革新的な新製品・サービスの開発、販路開拓などの取り組みに必要な設備投資などを支援する制度です。そのため、ものづくり補助金では新製品・サービスの開発などによる「付加価値額の向上」が基本要件として設定されています。一方、中小企業省力化投資補助金は、人手不足対策として省力化機器の導入することによる、「労働生産性の向上」が求められています。

以下に、中小企業省力化投資補助金とものづくり補助金の違いをまとめましたので、参考にしてください。

比較項目 中小企業省力化投資補助金 ものづくり補助金
対象となる投資 省力化・自動化機器の導入 革新的な製品・サービスの開発
対象設備の種類 汎用的な自動化ツールや既製品が中心 専門性・技術性の高い設備も対象
補助上限額 従業員数や申請区分などによって、以下のうちで変動する
200万~1億円
従業員数や申請区分などによって、以下のうちで変動する
750万~2,500万円
交付決定までの期間 カタログ注文型:最短1か月
一般型:約3か月
約3か月
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中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の支給要件・補助率

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)とは、「省力化機器カタログに掲載されている製品を導入し、業務の自動化や省力化に取り組む中小企業・小規模事業主を支援するコース」です。

2025年度に導入された新しい制度で、申請手続きが簡易化されているのが特徴です。業務の自動化や省力化に効果的なロボットやIoT機器、AIツールなどが対象で、「すぐに導入して現場改善に取り組みたい」という企業にとって活用しやすい制度となっています。

支給要件

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の主な支給要件をまとめました。

  • 人手不足の中小企業・小規模事業者などであること
  • 補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3%以上、2回目以降の申請を行う場合は、年平均成長率(CAGR)4%以上向上させる事業計画を策定し、取り組むこと

参考:中小企業省力化投資補助金|資料ダウンロード(カタログ注文型)公募要領

補助率・補助上限額

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の補助率・補助上限額についてまとめました。

従業員数 補助率 補助上限額
5人以下 1/2 200万円(300万円)
6~20人 500万円(750万円)
21人以上 1,000万円(1,500万円)

※()内は大幅な賃上げ要件を満たした場合

大幅な賃上げ要件は、以下の要件を満たした計画を立て、補助事業実施期間終了時点で達成した場合に補助上限額が引き上げられます。

  • 事業場内最低賃金を45円以上増加させること
  • 給与支給総額を6%以上増加させること

ただし、賃上げ目標が未達の場合や実施期間のみ賃上げを実施した場合には、補助額の減額や返還につながる可能性があるため、注意が必要です。

また、対象経費となるのは、省力化製品の設備投資における「製品本体価格」「導入に要する費用(導入経費)」の2つです。
製品本体価格の具体例には、機械装置工具・機器(測定工具・検査工具など)工具・機器と一体として用いられる専用ソフトウェア・情報システムなどが挙げられます。

参考:中小企業省力化投資補助金|資料ダウンロード(カタログ注文型)公募要領

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中小企業省力化投資補助金(一般型)の支給要件・補助率

中小企業省力化投資補助金(一般型)とは、「企業独自の課題や業務内容に合わせた省力化・自動化機器を導入する際に、その費用の一部を補助する制度」です。

単純な省力化にとどまらず、生産性の向上や業務効率化、さらには人手不足の根本的な解消を目的とした機器・システム導入が対象となります。
一般型では、カタログに登録された機器に限らず、自社に最適な設備を選定して導入計画を立てられるため、より自社に適した設備投資が可能です。

支給要件

中小企業省力化投資補助金(一般型)の主な支給要件をまとめました。

  • 人手不足の中小企業・小規模事業者などであること
  • 事業計画期間において毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)4.0%以上向上させる事業計画を策定し、取り組むこと
  • 事業計画期間終了時点において、給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させる事業計画を策定し、目標値を達成すること
  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準とすること
  • 従業員数21名以上の場合、交付申請時までに「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表すること

参考:中小企業省力化投資補助金|資料ダウンロード(一般型)公募要領

補助率・補助上限額

中小企業省力化投資補助金(一般型)の補助率・補助上限額についてまとめました。

従業員数 補助率 補助上限額
5人以下
  • 補助金額が1,500万円まで
    中小企業:1/2(2/3)
    小規模事業者・再生事業者:2/3
  • 補助金額が1,500万円を超える場合
    1/3
750万円(1,000万円)
6~20人 1,500万円(2,000万円)
21~50人 3,000万円(4,000万円)
51~100人 5,000万円(6,500万円)
101人以上 8,000万円(1億円)

※()内は特例適用時の補助率・補助上限額

特例措置は、以下の2つの取り組みが定められています。

補助上限額引き上げの特例要件(大幅な賃上げ)
  • 給与支給総額の年平均6.0%以上増加させること
  • 事業場内最低賃金を50円以上増加させること
補助率引き上げの特例要件(最低賃金引き上げ) 2023年10月~2024年9月の期間のうち3か月間において、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上であること

参考:中小企業省力化投資補助金|資料ダウンロード(一般型)公募要領

一般型の対象経費には、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権などの関連経費、外注費、クラウドサービス利用費などが挙げられます。

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中小企業省力化投資補助金を申請する流れ

中小企業省力化投資補助金における申請の流れを、以下にまとめました。

  1. 電子認証システムのアカウント「GビズID」を取得する
  2. 申請書類を揃えたうえで、「GビズID」から応募申請を行う
  3. 補助金交付採択後、発注先となる事業者を選定する
  4. 「GビズID」から交付申請を行う
  5. 補助事業を実施する
  6. 事業完了後、実績報告を行う
  7. 実績報告に基づき、補助金額が確定する
  8. 補助金の支払い請求後、補助金が交付される
  9. 終了後5年間において、毎会計年度終了後、事業実施効果報告を行う

中小企業省力化投資補助金は、電子申請システムでのみ受け付けています。そのため、事前に「GビズID」アカウントを取得する必要がありますが、アカウント取得にも時間がかかる可能性があります。時間に余裕をもって、できる限り早く取得しておきましょう。

まとめ

この記事では、中小企業省力化投資補助金の概要や支給要件、補助率・補助上限額、申請の流れを解説しました。

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業・小規模事業者などの省力化・自動化を支援する制度です。
カタログ注文型であれば、シンプルかつスピーディーに機器・システムを導入できますし、一般型であれば、自社の課題に適した機器・システムの導入が可能です。よく公募要領を確認したうえで、自社に適したコースを選びましょう。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。