昨今、働き過ぎによる過労死、過労自殺は社会問題であり、大手企業で過労死、過労自殺の話題が出れば、日夜ニュースで連日報道することは珍しくなくなりました。その結果、「働き方改革」の発展へと繋がり、日本における働き方が見直されようとしています。しかし、企業を存続するには競争社会に勝ち残って成り立つことであり、働き方改革を行ったとしても、仕事の厳しさの中でさまざまな問題が発生することも予測できます。

特に問題なのは、従業員の心理状態。心の病が引き起こす“うつ病”や“過度なストレス”は、常に問題視しており、メンタルヘルスが崩壊してしまうと、働き方改革を行ったとしても、過労死や過労自殺を招いてしまう可能性もあります。精神的な健康を保つことで、確実に仕事の効率は上がりますし、企業は、それを支援しなくてはいけません。行政もこのような状況を打破するために、メンタルヘルスを向上する助成金を多種多様用意しています。今回は、メンタルヘルスと働き方改革にまつわる助成金を詳しく紹介します。

メンタルヘルスを「心の病」を指す言葉として用いられることがありますが、正しくは「心の健康状態」を表す言葉です。そのため「メンタルヘルスが高い」「高いメンタルヘルスを維持する」といった言葉の使い方となります。そのため、心の病を改善するためにメンタルヘルスの向上が望まれており、それを企業活動に取り入れて働き方改革を推進する意味でもさまざまな助成金が用意しています。

メンタルヘルスに関する助成金

保健関係助成金
メンタルヘルス関連の助成金の総称を保健関係助成金といいます。運営は労働者健康安全機構という組織で、厚生労働省所管の独立行政法人です。身近なところでは、労災病院の運営を行っているので労働者にとって馴染みの深い機構といっていいでしょう。

「ストレスチェック」実施促進のための助成金

① 概要

2015年12月1日に労働安全衛生法が一部改正、施行しています。これによって従業員数が50人以上の事業所において、従業員のストレスチェックと面接指導などが義務づけられるようになったのです。50人未満の事業所については努力義務となっていますが、「ストレスチェック」実施促進のための助成金は、この50人未満の事業所を対象にしているものです。医師や保健師によるストレスチェック及び、ストレスチェック後の医師による面接指導を実施した場合、事業所がこれらの費用の助成を受けることができます。助成を受けるには、労働保険の適用事業所であることなどいくつかの条件があります。

②支給金

ストレスチェックの実施:従業員1人につき500円
面接指導:1事業所1回について21,500円(上限3回)

職場環境改善計画助成金(Aコース、Bコース、建設現場コース)

職場環境改善計画助成金にはAコース、Bコース、建設現場コースがあります

① Aコース

専門家の指導に基づいて、職場環境の改善計画を作成・実施した場合、専門家の指導費用や機器・設備の購入費用の10万円を上限として助成するものです。※機器・設備代の上限は5万円が上限

② Bコース

都道府県に設置されている、産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づいて、ストレスチェック後の分析結果をふまえ、職場環境改善計画書を作成・実施した場合、機器・設備の購入費用の5万円を上限として助成するものです。

③ 建設現場コース

建設現場コースは建設業の元請け事業者が対象です。都道府県に設置されている、産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づいて、ストレスチェック後の分析結果をふまえ、職場環境改善計画書を作成・実施した場合、1建設現場あたりについて、設機器・設備の購入費用の5万円を上限として助成するものです。
※1事業所ではなく、1建設現場単位での助成となるのが、建設現場コースの特徴です。

心の健康づくり計画助成金

①概要

都道府県に設置している、産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づいて、ストレスチェック後の分析結果をふまえ、職場環境改善計画書を作成・実施した場合の助成金です。

② 支給金

1事業所に10万円が助成します。
※1度限りで、事業所の従業員数に上限はありません。

小規模事業場産業医活動助成金(産業医コース、保健師コース、直接健康相談環境整備コース)

小規模事業場産業医活動助成金には、産業医コース、保健師コース、直接健康相談環境整備コースがあります。それぞれ、従業員数が50人未満の小規模事業所について助成するものです。

① 産業医コース

産業医の要件を持つ医師と、従業員の健康管理等の全て、あるいは一部を行う契約をした場合、そして産業医活動が行われた場合に実費を助成するものです。1事業所あたり10万円を上限として、将来にわたって2回の助成を行います。

② 保健師コース

保健師と、従業員の産業保健活動の全て、あるいは一部を行う契約をした場合、そして産業保健活動が行われた場合に実費を助成するものです。1事業所あたり10万円を上限として、将来にわたって2回の助成を行います。

③直接健康相談環境整備コース

産業医と締結する産業医活動契約、あるいは保健師と締結する産業保健活動契約のいずれかを契約し、従業員が直接健康相談できる環境を整備した場合に助成を行います。1事業所あたり10万円を上限として、将来にわたって2回の助成を行います。

まとめ

従業員のメンタルヘルスの維持は、企業の生産活動には欠かせないものです。働き方改革では、時短などが目玉となっていますが、生産性の向上と時短は相反するようにも見えます。しかし、心の健康を維持することで、反対に効率が良くなり、生産性が上がることが働き方改革の大きな目標でもあるのです。そのためにも従業員のメンタルヘルスの維持や向上は欠かせないものであり、そのためにも助成金を大いに有効活用したいものです

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。