助成金は、特定の条件を満たすことで行政や団体から受け取れる、雇用保険料を財源とした資金で、融資とは異なり返済の必要がありません。助成金の対象となる条件は、採用や研修、設備投資、省エネなど幅広く、労働環境の改善に役立てることができます。

こうした中小企業の味方になる助成金ですが、不正に受給する企業が後を絶ちません。
最近では、日本ボクシング連盟の助成金不正流用問題や、就労事業所「あじさいの輪」で行われた障害者の労働時間を水増しした助成金の不正受給がニュースになりました。

あってはならないことですが、助成金の不正受給をするとどのようなペナルティがあるのでしょうか。

助成金とは

「要件を満たしていれば返済不要の資金が支給される」ということ以外にも、「会社の信用につながる可能性がある」という側面をもっています。
助成金の財源は雇用保険です。そのため、助成金を受給するためには、「労働関係の法令に違反がない」ということが絶対条件になります。つまり、助成金が受給できるということは、労働関係の法令に違反がないと厚生労働省から認められた事業所となり、労働環境が良い会社の証明になるのです。

このように、受給する側にはメリットばかりの助成金ですが、受給申請を始めてから受け取るまで相応の時間と準備は必要になります。
比較的早い助成金でも5~6か月程度、一般的なもので1年半程度。
助成金によって申請から審査、支給決定までの流れは異なりますが、おおよそ審査に半年程度の期間を要します。また、基本的に税金の対象となっており、法人税が課税されるので注意しましょう。ただし、対価として得た収入ではないため、消費税はかかりません。

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助成金不正受給問題

これほど厳格に審査されているにもかかわらず、助成金の不正受給問題は後を絶ちません。
過去にも、キャリアアップ助成金の「人材育成コース」を受給申請した会社が、実際には「職業訓練を行っていなかった」ことが発覚し、経営者が詐欺未遂、有印私文書偽造・行使の疑いで書類送検されたという事例があります。

助成金の不正受給を行った場合(未遂含む)、以後3年間は雇用関係の助成金の申請が一切できなくなってしまいます。また、労働局のホームページで社名を公表、ニュースでも報道
されるため、顧客・取引先・社員・金融機関など、多方面の関係者に不正が知られ、企業としての信頼を失ってしまいます。

以下には、冒頭に紹介した2件の実例と不正受給によって科せられた措置をまとめております。

日本ボクシング連盟

2016年リオデジャネイロ五輪に男子ライト級で出場した成松大介選手(自衛隊)が、15年度にJSCから助成金240万円を受給。日本ボクシング連盟の山根明会長は、この助成金を3等分し助成対象外の別の2選手に80万円ずつ渡すよう不正流用を指示した。
→同連盟の2018年度交付金の全額減額措置。

就労事業所「あじさいの輪」

2016年5~6月、運営する就労継続支援A型事業所で雇っていた障害者の労働時間を水増しして、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」岡山支部に障害者雇用調整金などの給付金を申請。水増し分約176万円を含め、給付金計約6,000万円を不正に受給した。
→詐欺罪に問われたグループ元理事の楠田崇被告(46)に岡山地裁は10日、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。

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助成金の不正受給は重大な違法行為

助成金の不正受給は、あからさまな悪意によるものもありますが、多くは不正行為と理解せず勘違いで行ってしまうことが多いです。
上述したボクシング協会の実例も、自覚なく行われたケースになるでしょう。
しかし、意図はどうあれ、犯罪行為に当たることは変わりません。助成金を不正受給した企業には、以下のような重いペナルティが科されます。

行政上のペナルティ

不正受給が発覚した場合、未遂を含め関係する助成金が不支給になり、その後3年間は雇用関係の助成金は一切申請できなくなります。
また、企業名が公表されるので、社会的な信用も失い、事業経営にあたって大きな影響がでるでしょう。

民事上のペナルティ

助成金支給後に労働局の監査が入り不正受給が発覚した場合、助成金が入金済であっても返還する必要があります。仮に運転資金や設備投資などに使った場合でも、返還義務をまぬがれることはできません。

刑事上のペナルティ

助成金の不正受給は、労働局を騙して不正に金銭の交付を受けたことになるため、刑法上の詐欺罪が適用されます。有罪の場合10年以下の懲役となり、執行猶予がつかず実刑となるケースも少なくありません。

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まとめ

助成金の審査は、必要な添付書類が増えたり審査項目が細かくなったりと、年々厳しさを増しています。それもすべて不正受給を防ぐための対策です。これから先も、不正受給が発覚するたび審査は厳しくなっていくと思います。
上述したように、助成金の不正受給は、懲役を科されるほど重大な違法行為です。
助成金とは何のために使うべき資金なのか、どのような意味をもった制度なのかを正しく理解した上で活用しましょう。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。