昨今はどの業界でも人手不足が叫ばれて久しいですが、特に厳しいといわれている業界の一つが建設業界です。建設業界の仕事は、1社だけで仕事をすることはほとんどありません。多くの場合、元請け業者、下請け業者が存在しています。大きなプロジェクトでは下請け業者の下にさらに業者がいる多重構造になっていることも多く、正社員のほかに日雇い労働者を雇い入れることもあります。しかしながら、少子高齢化の影響で建設業界の中心を担う中小の業者では人手を確保することが難しくなっています。
そこで国から 建設労働者の雇用や訓練にかかる経費の一部を助成してもらえる、建設労働者確保育成助成金について詳しくみていきましょう。
目次
建設労働者確保育成助成金とは
建設労働者確保育成助成金とは、中小の建設事業者や中小の建設事業者の団体などが、建設労働者の雇用環境の改善や建設労働者の技能向上ために育成の取り組みを行った場合に助成を受けることができる制度です。
助成金のコースは全部で13あり、事業主が職業訓練の認定を受けている場合に利用できるものや、労働者に技能実習を受講させた場合に利用できるもの、 若い人や女性にとって魅力的な職場づくりをした場合に利用できるコースなどがあります(※1)。
認定訓練助成を受給するための要件や金額は?
具体的に国から助成金を受け取るための要件や支給金額をみていきましょう。
まずは認定を受けた事業者が労働者の職業訓練を行った場合に受けられる「認定訓練コース(経費助成)」です。このコースでは、事業者が広域団体認定訓練助成金の支給または認定訓練助成事業費補助金の交付対象となっていることが条件となっています。つまり、建設労働者確保育成助成金を受けるためには、あらかじめ広域団体認定訓練助成金の支給または認定訓練助成事業費補助金の交付対象となっておく必要があるということです。 助成の対象となる職業訓練の内容も助成を受けるために必須のポイントです。
訓練は、職業能力開発促進法の指定された条項に書かれている職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を受けさせる場合に限られています。経理事務や営業販売に関する訓練などは、建設業との関連が低いので認定訓練助成の対象とはなりません。助成額は、「広域団体認定訓練助成金の支給又は認定訓練助成事業費補助金の交付を受けて都道府県が行う助成により助成対象経費とされた額の6分の1に相当する額」となっています。
認定訓練助成金はかかった経費の3分の1が助成されるものです(※2)が、
建設労働者確保育成助成金では、すでに助成を受けた経費のうち6分の1が上乗せで助成を受けられるということです。 手続きはその職業訓練を実施しようとする日の1カ月前までに必要書類一式を事業所のある所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに提出してください(※3)。
なお、認定訓練コースには経費助成のほか賃金助成コースもあります。どちらがいいか判断に迷う場合は、計画書を作る前に労働局やハローワークに相談してみましょう。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説技能実習助成を受給するための要件や金額は?
次に技能実習コースをみていきましょう。
このコースにも経費助成と賃金助成の2種類があります。技能実習助成金を受給できる建設事業者は(1)または(2)のいずれかの要件を満たす必要があります。
(1)直接雇用の従業員のいる中小建設事業者または中小建設事業者で技能実習の受講者の3分の2以上が下請けの建設事業者に雇用されている建設労働者であること。
(2)雇用している建設労働者(雇用保険に加入させていること)の所定の労働時間内に技能実習を受講させて、その期間の所定労働時間に労働した場合に支払われる通常の賃金に加えて、上乗せの賃金を支払った場合。
また、残業時間内や休日に技能実習を受けさせた場合も対象になります。
経費助成の場合は、直接雇用し、雇用保険に加入している従業員が20人以上かどうかによって助成額が変わります。従業員が20人以下の事業主の場合は、基準により算定した合計額の4分の3、21人以上の場合は5分の3となっています。また、事業主自らが雇用する女性建設労働者に技能実習を行う場合は20分の9です。なお、一つの技能実習についての金額は、一人あたり10万円が上限となっています。 賃金助成の場合も経費助成の場合と同様、従業員の人数によって助成額が決まっています。20人以下の場合は、受講させた労働者一人について7600円に実際に受講した日数を掛け合わせた金額です。21人以上の場合は一日あたりの金額は6650円となっています。いずれの場合も一つの技能実習について20日分が限度です。
経費助成と賃金助成の支給上限額は、1事業所・1つの年度内について合計500万円が上限となっています。
手続きは雇用保険が適用されている事業者ごとに技能実習を実施する2カ月前から1週間前までに必要書類一式を、受講者が所属している事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに提出します。
建設労働者確保育成助成金を利用するときの注意点
建設労働者確保育成助成金の受給にむけて、要件に合致する建設事業対象者であるかどうかを確認しましょう。いくら建設労働者の職業訓練や技能訓練、職場環境の整備などを行っても、条件に合致しない場合は助成を受けることはできません。
また、いずれの助成金も後払いです。訓練や実習を終了した日の翌日から2カ月以内に必要書類を整えて、支給申請書を提出します。支給を受けるためには、事前に計画書の提出が必要ですので、不足のないように書類を整えましょう。
役所に提出する書類には必ず申請期限があります。一日でも遅れると受け付けられませんので、期限に間に合うように早めの行動を心がけてください。提出した書類は5年間の保存義務があります。税務調査などが入った際にもすぐに取り出すことのできるよう、整理して保管しておくことが必要です。
他にも 支給要件の確認のために訓練の実施状況や労働者の雇用状況などについて、実地での確認が行われることがあります。不正受給を防止するための確認ですので協力しない場合は助成金が支給されないことがあります。
建設労働確保育成助成金には他にもさまざまなコースがありますので自社が対象になるかどうかや、申請手続きについて分からないことがあれば最寄りの都道府県労働局やハローワークに問い合わせをしてみましょう。
おわりに
建設労働者確保育成助成金の制度の活用をすることで建設事業経営を発展させることが可能です。経営のかたわらで助成金の書類作成や条件の確認なんて大変という場合は、助成金申請代行サービスを実施している専門家に委託するのも一つの手だと思います。
ぜひ事業にあった助成金を探してみてください。
建設労働者確保育成助成金は、平成30年4月1日より「建設事業主等に対する助成金」として目的別に統合され、若年者及び女性労働者の入職・定着の促進を図るため助成率の見直しが行われました。