厳しい市場競争や急激な社会変化に対応するためには、企業力強化策としての人材育成が欠かせません。しかし、人材育成にかけられる資金が限られているという、悩みを持つ個人事業主も多いようです。人材開発支援助成金はそうした課題に対して、従業員のキャリア形成をバックアップする制度です。返済の義務を負わない助成金の利用により、安心して従業員教育が実施できます。
人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)の活用について、詳しく説明していきます。

人材開発支援助成金とは

<人材開発支援助成金のコース>
人材開発支援助成金の支給対象となるコースには、次のような種類があります。

■特定訓練コース
OJT と Off-JT を組み合わせた訓練、若年労働者に対する訓練、労働生産性の向上に貢献する訓
練など、高い訓練効果が認められる訓練が対象となります。

■一般訓練コース
その他のコース以外の訓練が対象となります。

■教育訓練休暇付与コース
有給教育訓練休暇制度を導入した企業で、労働者がその休暇を取得して訓練を受けた場合に助成されます。

■特別育成訓練コース
労働の期間に定めがある、有期契約労働者などが訓練を受けた場合に助成されます。

申請できる対象者は特定訓練コースでは、中小企業と中小企業以外、事業主団体など幅広く設定されていますが、その他のコースには制限が設けられています。また、コースによって助成金額や助成率が異なるので、注意が必要です。

各コースとも、生産性要件を満たせば助成額が割増しされます。生産性要件は次のように規定されています。
“助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、

  • その3年度前に比べて6%以上伸びていること
  • その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること“

ただし金融機関から、一定の「事業性評価」を得ている必要があります。

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人材開発支援助成金の対象となる職業訓練・人材育成制度

厚生労働省では、平成30年4月1日から新たなキャリア形成施策への助成金制度を開始しました。従来のキャリアアップ助成金人材育成コースなどが統合され、新コースとして整理されています。ここでは個人事業主が対象となる人材開発支援助成金の、それぞれのコースの条件や申請方法について詳しく見ていきましょう。

特定訓練コース

<特定訓練コースの概要>

主な対象 中小企業、中小企業以外、事業主団体等
条件
  • Off-JTにより実施される訓練であること
  • 訓練時間が10時間以上であること
支給額
  • 賃金助成:1時間あたり760円・生産性要件を満たす場合は960円
  • 経費助成:45%・生産性要件を満たす場合は75%
  • 実施助成:1時間あたり665円・生産性要件を満たす場合は840円
受給の手続き方法 1.事業内職業能力開発計画の作成と訓練実施計画届の作成・提出
訓練開始日から起算して1ヵ月前までに訓練カリキュラム等の必要書類を添えて、事業所または事業主団体等の事務所の所在地を管轄する労働局に提出します。
2.支給申請
提出した訓練実施計画に沿った訓練を実施した後、訓練の終了した日の翌日から起算して2ヵ月以内に訓練実施証明など必要な書類を添えて管轄の労働局に支給申請を行います。

一般訓練コース

<一般訓練コースの概要>

主な対象 中小企業、事業主団体等
条件
  • Off-JTにより実施される訓練であること
  • 実訓練時間が20時間以上であること
  • セルフ・キャリアドック(定期的なキャリアコンサルティング)の対象時期を明記して規定すること
支給額
  • 賃金助成:1時間あたり380円・生産性要件を満たす場合は480円
  • 経費助成:30%・生産性要件を満たす場合は45%
訓練経費助成支給限度額
  • 20~100時間未満7万円
  • 100~200時間未満15万円
  • 200時間以上20万円
受給の手続き方法 1.事業内職業能力開発計画の作成と訓練実施計画届の作成・提出
訓練開始日から起算して1ヵ月前までに訓練カリキュラム等の必要書類を添えて、事業所または事業主団体等の事務所の所在地を管轄する労働局に提出します。
2.支給申請
提出した訓練実施計画に沿った訓練を実施した後、訓練の終了した日の翌日から起算して2ヵ月以内に訓練実施証明など必要な書類を添えて管轄の労働局に支給申請を行います。

教育訓練休暇付与コース

<教育訓練休暇付与コースの概要>

主な対象 中小企業
条件 雇用保険に加入している
支給額 制度導入助成として30万円が支給・生産性要件を満たす場合は36万円
受給の手続き方法 1.教育訓練休暇制度導入・適用計画届の申請
必要な書類を添えて教育訓練休暇制度導入・適用計画期間の初日の前日から起算して6ヵ月前~1ヵ月前までに事業所または事業主団体等の事務所の所在地を管轄する労働局に提出します。
2. 支給申請
制度導入・適用計画期間の末日(制度導入日から3年)の翌日から2ヵ月以内に、支給申請書に必要な書類を添え、管轄の労働局に申請を行います。

特別育成訓練コース

<特別育成訓練コースの概要>

主な対象 中小企業
条件
  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備していること
支給額 ●Off-JT分の支給額
賃金助成:1人1時間当たり 760円
経費助成:1人当たり Off-JTの訓練時間数に応じた額
【一般職業訓練、有期実習型訓練】
100時間未満 10万円
100時間以上200時間未満 20万円
200時間以上 30万円
【中長期的キャリア形成訓練】
100時間未満 15万円
100時間以上200時間未満 30万円
200時間以上 50万円
(有期実習型訓練後に正規雇用等に転換された場合)
100時間未満 15万円
100時間以上200時間未満 30万円
200時間以上 50万円

●OJT分の支給額
実施助成:1人1時間当たり 760円

受給の手続き方法 1.訓練計画届の作成・提出
訓練計画届を作成し、 訓練開始日から起算して1ヵ月前までに、管轄労働局長に提出します。
有期実習型訓練(キャリアアップ型)の場合には、キャリアコンサルティングの実施が必要です。
2. 訓練の終了・支給申請
•職業訓練計画実施期間の終了した日の翌日から2ヵ月以内に支給申請書を管轄労働局へ提出します。
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助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

まとめ

人材開発支援助成金を活用することで、事業所にかかる負担を軽減しながら、人材育成教育の実施が可能となります。平成30年から制度の改正があり、7つのコースに編成されましたが、個人事業主が対象となるのはこのうちの4コースです。訓練の実施とともに生産性の向上が認められた事業所には、助成金の加算があります。人材育成施策によって従業員のキャリア形成と同時に、事業への好影響が期待されます。対象となる人材開発支援助成金を活用し、人材育成と事業力の強化を目指してみてはいかがでしょうか。

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弊社担当のご紹介
黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。