非正規雇用労働者を正社員へ転換し、また、処遇の改善を行い、キャリアアップ助成金を申請する企業は多くあります。助成金は受給条件さえ満たせば受給できますが、その一方で厳しい審査を通過する必要があります。

さらに、キャリアアップ助成金は令和7年4月に改定されたため、申請を検討している企業は改定内容に対応しなければなりません。

そこで、この記事ではキャリアアップ助成金の基本的な情報や審査の受給難易度、改正内容、申請時の注意点をまとめています。申請を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。

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キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、「非正規雇用労働者(アルバイト・パートや契約社員など)のキャリアアップを促進する制度」です。正社員化や処遇改善にかかわる取り組みを実施した事業主が助成されます。

キャリアアップ助成金には、以下の6つのコースがあります。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

自社の人材育成や雇用創出にかかる負担を軽減するために、多くの企業が活用している助成金の一つです。キャリアアップ助成金の基本的な情報については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?コースや申請方法を解説!

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キャリアアップ助成金の審査が厳しい3つの理由

キャリアアップ助成金を受給するには、厳しい審査を通過することが必要です。キャリアアップ助成金は、支給要件を満たしていることを証明できれば受給可能ですが、その審査は徐々に厳しくなってきています。

ここでは、なぜキャリアアップ助成金の審査が厳しいといわれるのか、その3つの理由について解説します。

不正受給防止のため

一時期、キャリアアップ助成金を含め、助成金全般で不正受給する企業が増加しました。
例えば、支給要件を満たせない場合や申請どおりに正社員化・賃金規定の改定などを実施しなかった場合に、虚偽の申請書類を作成して不正受給するようなケースです。

このような不正受給を防止するために審査は厳格化され、より詳細な内容まで確認されるようになりました。

労務管理について詳しく確認されるため

キャリアアップ助成金では、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善が支給要件となっています。こうした取り組みを本当に実施したかどうかを確認するためには、審査において労務管理の実態異を詳しく確認する必要があります。

そのため、キャリアアップ助成金では就業規則の写しや労働条件通知書、賃金帳、出勤簿などの書類の提出が求められますが、書類を提出するには、日常的に適正な労務管理を実施しなければならないため、特に労務管理の体制が整っていない規模が小さい企業等にとっては、審査は厳しいものとなります。

社会的信用を維持するため

助成金は、雇用や労働環境の改善などの支給要件を満たすことで、無償で資金を受けられる制度です。
しかし、その財源は企業が支払っている雇用保険料であるため、不正受給や不適切な受給が続くと、制度を継続することが難しくなります。

社会的信用を維持し公平性や透明性、客観性を確保する目的で審査基準を厳しく設定しているのです。

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キャリアアップ助成金が不支給になる3つのパターン

ここでは、キャリアアップ助成金が不支給になる3つのパターンを紹介します。

法令違反がある

キャリアアップ助成金では、「支給申請の前日から起算して、過去1年以内に労働・社会保険関連の法令に違反したことがある事業主」は不支給になることが明記されており、
期間内にそれらの法令に違反している場合には、キャリアアップ助成金は不支給となります。

不支給とならないためには、以下のような点が最新の労働・社会保険関連法令に順守しているかどうかを確認しましょう。

  • 残業代の算出方法は適正か
  • 残業代の未払いがないか
  • 労働時間、休憩、休日は適正か
  • 年次有給休暇を適切に付与しているか

申請手順や期日を守らない

キャリアアップ助成金では、申請手順や期日が明確に定められています。手順通りかつ期日内に申請しなければ、キャリアアップ助成金は不支給となります。

例えば、支給申請の期間であれば「正社員化した労働者に対して、正社員としての賃金を6か月分支給した日の翌日から起算して2か月以内」と決められています。

この他にもさまざまな申請手順や期日が定められているため、よく確認したうえで申請を行うことが必要です。

申請内容に改ざんがある

キャリアアップ助成金に限らず、すべての助成金において申請内容の虚偽・改ざんは認められません。
申請内容を改ざんして受給した場合には、不正受給として、助成金の返還だけでなく厳しい処分されることがあり、事業継続が難しくなる可能性もあります。

申請内容の改ざんは絶対にやめましょう。

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キャリアアップ助成金の審査を通過するためのポイント

改正内容を満たし、審査に通過するためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは、キャリアアップ助成金の審査を通過するためのポイントを解説します。

改正内容を就業規則へ記載し適用すること

まず、大原則であり重要になるのが、改正内容を就業規則に記載し、従業員に適用することです。
就業規則は、会社と労働者に関するルールで、キャリアアップ助成金の要件を満たしているかどうかを確認するうえで前提となるポイントです。

以下の記事で、キャリアアップ助成金に対応した就業規則のポイントと規定例について解説しています。あわせて参考にしてください。
関連記事:【規定例あり】キャリアアップ助成金に対応した就業規則とは?必要事項を解説

キャリアアップ計画書を適切に作成・提出する

助成金を受給するためだけに正社員化や処遇改善を行ってしまうと、思ったよりも負担が大きくなり、企業経営に不利となる可能性があります。

そのため、申請に必要なキャリアアップ計画書を作成する際に、しっかりと自社のキャリアアップについて検討することが理想です。3年~5年という期間の中で、どのようにキャリアアップを推進していくのかを十分に吟味し、準備しましょう。

また、キャリアアップ助成金を受給するためには、対象となる労働者を転換したり、処遇を改善したりする前に労働局(都道府県によってはハローワーク)に提出しなければなりません。早めに作成・提出しましょう。

キャリアアップ計画書の作成方法や記入例については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【記入例あり】キャリアアップ計画書とは?目的や作成方法、提出先までを解説

支給申請期限を厳守する

キャリアアップの取り組みを実施したのちに支給申請を行います。支給申請には期限があり、例えば正社員化コースの場合には、原則として正社員化後6カ月目の賃金を支払った日の翌日から2カ月以内と定められています。

支給申請をする際には、支給申請書だけでなく出勤簿や就業規則などさまざまな書類を提出することが必要です。これらの書類がすべて法律に定められた用件とキャリアアップ助成金の要件を満たしていることが求められます。そのため、支給申請期限前から入念な準備を進めておくことが重要です。

【令和7年度】キャリアアップ助成金の改正内容

キャリアアップ助成金は、令和7年度から適用される改正があります。内容をよく確認したうえで、自社の就業規則や取り組みに反映しましょう。

全コース共通

キャリアアップ助成金を申請する際に作成・提出する必要があるキャリアアップ計画書の取り扱いが、以下のように簡素化されました。

改正前 各コースの取り組み実施日の前日までに管轄の労働局長に提出し、認定を受ける必要があった。
改正後 管轄の労働局長の認定が不要になり、届け出のみで済むようになった。

正社員化コース

正社員化コースでは、支給対象者の範囲・助成額が変更になりました。

改正前 有期→正規:80万円(60万円)
無期→正規:40万円(30万円)

【加算措置/加算額】

  • 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合:28.5万円
  • 母子家庭の母等又は父子家庭の父:9.5万円(有期→正規の場合)
  • 人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正社員転換:9.5万円(一部11万円)(有期→正規の場合)など
改正後 【重点支援対象者】
有期→正規:80万円(60万円)
無期→正規:40万円(30万円)
【重点支援対象者以外】
有期→正規:40万円(30万円)
無期→正規:20万円(15万円)

※()内は大企業の助成額
※出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金が変わります!2025年4月以降の変更点のご案内」

重点支援対象者とは、以下の要件に該当する労働者のことです。

  • 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  • 雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
    ①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下
    ②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
  • 派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者

※雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなされます。

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースでは、「支給区分の新設と助成額の変更」「加算措置の新設」の2点が改正されました。

・支給区分の新設と助成額の変更

改正前
賃金引上げ率 3%以上5%未満 5%以上
5万円(3.3万円) 6.5万円(4.3万円)
改正後
賃金引上げ率 3%以上4%未満 4%以上5%未満 5%以上6%未満 6%以上
助成額 4万円(2.6万円) 5万円(3.3万円) 6.5万円(4.3万円) 7万円(4.6万円)

※()内は大企業の助成額
※出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金が変わります!2025年4月以降の変更点のご案内」

・加算措置の新設
有期雇用労働者などの昇給制度を新たに設けた場合、1事業所当たり1回のみ20万円(大企業:15万円)を加算します。

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まとめ

キャリアアップ助成金を利用することで、企業は自社の従業員のキャリアアップの促進にかかる負担を低減できます。

しかし、キャリアアップ助成金を申請するには、厳しい審査に通過することが必要です。そのため、多くの企業はプロのコンサルタントに申請のサポートを依頼しています。
これからキャリアアップ助成金の申請を検討される場合には、まず以下の無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。