人材育成に取り組む企業にとって、従業員の知識・技能向上は業務の効率化や競争力強化に直結するテーマです。厚生労働省が主導する人材開発支援助成金は、こうした育成を後押しする制度として注目を集めています。
しかし、「どの講座が助成対象になるのか」「講座選びの何が重要なのか」といった疑問を抱える企業も少なくありません。
そこで、この記事では、人材開発支援助成金における対象講座の要件や活用の具体例について解説します。
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金とは、企業が職務に関連した専門知識・技能の習得のために職業訓練などを行った場合、その訓練費用や賃金の一部を国(厚生労働省)が支援する制度です。
人材不足が深刻化する中、従業員のスキルアップによって生産性向上を図りたい企業にとって、費用負担を軽減しながら訓練・育成が可能になるため、多くの企業に活用されています。
人材開発支援助成金は、対象となる訓練・講座の種類や内容によって、以下の7つのコースに区分されています。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
この記事では、上記のうち人材育成支援コース・教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースについて取り上げます。各コースの支給要件や助成額は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024最新】人材開発支援助成金とは?わかりやすく各コースを解説
【コース別】人材開発支援助成金の対象となる教育訓練・講座の要件とは?

人材開発支援助成金の対象となる教育訓練・講座の要件とは、申請時に満たしておくべき基準のことです。ここでは、4つのコース別に人材開発支援助成金の対象となる教育訓練・講座の要件について解説します。
人材育成支援コースの対象講座
人材育成コースでは、以下の3つの訓練メニューが用意されています。どのメニューに取り組むかで、要件や助成金額などが異なります。
- 人材育成訓練:職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上の訓練(OFF-JT)
- 認定実習併用職業訓練:厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練(OFF-JT+OJT)
- 有期実習型訓練:正社員経験の少ない有期契約労働者などを正社員等に転換するための訓練(OFF-JT+OJT)
以下に、人材育成支援コースの中で、人材育成訓練に該当する対象講座の要件についてまとめました。
| 訓練メニュー | 支給要件 |
|---|---|
| 人材育成訓練 |
|
ここでは、支給要件の概要についてわかりやすくまとめました。詳細については、人材開発支援助成金の公募要領を確認するか、助成金コンサルタントに相談することがおすすめです。
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースでは、以下の3つの制度が用意されています。どの制度に取り組むかで、要件や助成金額などが異なります。
- 教育訓練休暇制度:3年間に5日以上の取得が可能な有給の教育訓練休暇を導入し、実際に適用した事業主に助成
- 長期教育訓練休暇制度:30日以上の長期教育訓練休暇の取得が可能な制度を導入し、実際に適用した事業主に助成
- 教育訓練短時間勤務等制度:30回以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除が可能な制度を導入し、実際に1回以上適用した事業主に助成
教育訓練休暇等付与コースの対象講座の要件は、制度によって異なる場合があります。ここでは、各制度に共通する要件や対象外となる要件についてまとめました。
| 共通要件 | 対象外となる要件 |
|---|---|
|
|
ここでは、支給要件の概要についてわかりやすくまとめました。詳細については、人材開発支援助成金の公募要領を確認するか、助成金コンサルタントに相談することがおすすめです。
人への投資促進コース
人への投資促進コースでは、以下の5つの訓練コースが用意されています。どの訓練に取り組むかで、要件や助成金額などが異なります。
- 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練:高度デジタル人材の育成のための訓練や、海外を含む大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練:IT分野未経験者の即戦力化のための訓練※を実施する事業主に対する助成
- 定額制訓練:労働者の多様な訓練の選択・実施を可能とする「定額制訓練」を利用する事業主に対する助成
- 自発的職業能力開発訓練:労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主に対する助成
- 長期教育訓練休暇等制度:働きながら訓練を受講するための長期休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主への助成の拡充
支給要件・申請期間などの詳細については、人材開発支援助成金の公募要領を確認するか、助成金コンサルタントへの相談がおすすめです。
事業展開等リスキリング支援コース
以下に、事業展開等リスキリング支援コースの対象講座の要件についてまとめました。
- 職務に関連した専門的な知識・技能の習得をさせるための「職務関連訓練」であること
- 訓練時間数が10時間以上であること
- 職業訓練実施計画届出に基づき行われる訓練であること
- 【事業内訓練】講師要件を満たす指導者の指導のもとで行われるものであること
- 【事業外訓練】教育訓練機関要件を満たす期間で行われるものであること
- 訓練の実施方法が、「通学制」、「同時双方向型の通信訓練」、「eラーニング」「通信制」「定額制」のいずれかであり、①または②のいずれかに該当すること
①【通学制または同時双方向型の通信訓練】1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上であること
②【eラーニングおよび通信制】1コースあたりの標準学習時間が10時間以上であること、または1コースあたりの標準学習期間が1か月以上であること
③【定額制】各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、10時間上であること
ここでは、支給要件の概要についてわかりやすくまとめました。詳細については、人材開発支援助成金の公募要領を確認するか、助成金コンサルタントに相談することがおすすめです。
「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!
助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説人材開発支援助成金で対象となる教育訓練・講座の具体例

人材開発支援助成金では、従業員の業務遂行能力の向上に直結するスキルや知識を習得するための教育訓練が対象となります。訓練方法は、外部研修・社内研修・オンライン講座など多様で、業種にかかわらず幅広い企業が活用可能です。
助成金の対象となる可能性がある主な教育訓練の分野を、以下にまとめました。
■対象となりやすいスキル・知識の例
- ビジネス基礎:管理者研修、リーダーシップ研修、問題解決研修
- デジタル・DX関連:Excel・データ分析、ITリテラシー、業務システム操作研修
- 専門技能の向上:製造工程の改善研修、設備メンテナンス研修
- 営業・マーケティング:提案営業研修、顧客管理(CRM)研修
- 資格取得支援:IT資格(MOS、情報処理)、国家資格取得セミナー
- 新技術の習得:AIツール活用、RPA導入研修
企業で実施する社内研修プログラムも対象となる場合があり、必ずしも外部研修を受講する必要はありません。重要なのは、教育訓練が「従業員のスキルアップにつながる体系的な内容」であることです。
【業種別】具体的な活用例
人材開発支援助成金は業種を問わず利用でき、市場環境や人材課題に応じた幅広い訓練が対象となります。以下は業種別の具体的な活用例です。
| 製造業 |
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|---|---|
| 小売業・サービス業 |
|
| IT・情報通信業 |
|
人材開発支援助成金の申請の流れ
人材開発支援助成金の申請の流れは、以下のとおりです。
- 研修内容・対象者を決定し、助成要件を確認する
- 研修開始日の原則1か月前までに「訓練計画届」を提出する
- 計画どおりに研修を実施し、出席簿・証憑類を保管しておく
- 研修終了日の翌日から2か月以内に「支給申請」を提出する
- 審査で支給が確定次第、助成金が指定口座へ振り込まれる
人材開発支援助成金は、研修前後に必要な書類提出があるため、スケジュール管理が重要です。とくに「訓練計画届」は研修開始前に必ず提出する必要があり、怠ると助成金の支給対象外となる可能性があります。
必要書類の提出期限が厳格なため、研修前から余裕を持って準備することが大切です。適切なスケジュール管理と事前準備が、スムーズな受給につながります。
関連記事:【記入例あり】人材開発支援助成金の申請書類一覧!注意点もまとめて解説
まとめ
この記事では、人材開発支援助成金における対象講座の定義と選び方、活用のポイントについて解説しました。
人材開発支援助成金は幅広い教育訓練に活用でき、生産性向上や人材育成を効率的に進められる制度です。自社の課題に合った講座を選ぶことで、より高い効果が期待できます。
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