従業員の雇用と人材の育成は事業を営む上で欠かせないことです。良い人材を雇用して業務に必要な技能や知識を身につけてもらうことは、企業の業績アップにもつながります。

逆に業績の悪化などやむを得ない事情で人員を削減しなければならない場合もあるかもしれません。
中小企業が抱えるさまざまな雇用問題の解決や人材育成を円滑に行うために助成金を活用するという方法もあります。「助成金」「補助金」という言葉を聞いたことがあっても具体的にどうすれば受給できるのか、そもそもどんな内容の助成金があるのかを知らない方は多いでしょう。企業の健全な運営と労働者の雇用・育成の支援となる助成金についてご紹介いたします。

補助金と助成金の違い

「補助金」「助成金」は、国や自治体からもらえる返済不要な資金です。
それぞれ所轄が異なり、主に「補助金」が「経済産業省」、「助成金」が「厚生労働省」によって運営されています。

助成金は、受給要件を満たしていれば誰でも受け取ることが出来るという資金に対し、補助金は申請を出しても採択審査結果によっては受け取れない場合があります。

つまり助成金は受給できる企業の数に限りはありませんが、補助金は受け取りが出来る企業に上限があるということです。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、経営状況の悪化などによる理由で事業を縮小しなければならない場合に中小企業の事業主が受けられる助成金です。従業員に対して休業や教育訓練または出向などを実施することで雇用を維持した場合に受給できます。
雇用調整助成金を利用すれば、企業の経営が困難な状況に陥ったときでも雇用を維持したまま経営状況の回復を図ることもできるでしょう。同時に従業員の生活も守れるというのも大きなメリットです。1日1人あたり8,205円が受給できます。雇用調整助成金の申請条件は、雇用保険の適用、そして最近3カ月間の月平均の業績が前の年の同期の業績より10%減少していることなどです。

その他にもいくつかの条件があるので、詳しくは問い合わせてみましょう。
業績の低下が10%という、まだ企業ダメージが少ないうちに利用できる制度ですので事業の早期立て直しと従業員の雇用維持に期待できます。(※1)

Check!

「そもそも助成金って何?」「個人事業主でももらえるものなの?」という疑問をお持ちの方はこちら!助成金の制度や仕組みについてわかりやすく解説しています!

助成金とは?対象者や受給条件・申請の方法まで徹底解説

労働移動支援助成金

労働移動支援助成金とは、事業の縮小などやむを得ない事情での従業員の離職に対して支給される助成金です。
自社の従業員が離職する際に再就職支援などを行う場合の「再就職支援コース」、他社で離職される人を早期で受け入れる場合の「早期雇い入れ支援コース」、そして早期の雇用と職業訓練を実施した場合の「人材育成支援コース」があります。

この他にも移籍等によって雇用した従業員に職業訓練をした場合の「移籍人材育成支援コース」に、中途採用の拡大を図った場合の「中途採用拡大コース」など助成金の種類は全部で5つです。 助成対象になる従業員の人数などには限度があります。その他申請の条件や受給できる額などはそれぞれのコースで変わります。「労働移動支援助成金」は従業員にも事業者にもメリットの大きい助成金です。(※2)

平成30年4月1日より労働移動支援助成金の制度の改正が行われました。
改正内容は以下となります。

○再就職支援コース
・委託開始申請分の支給を廃止。
・再就職支援を委託した職業紹介事業者の支援を一度も受けずに再就職が実現した方は助成対象外となりました。

○早期雇い入れ支援コース
・支給対象者に職業訓練を実施した場合、職業訓練に要した費用等の一部を上乗せして助成されます。

○人材育成支援コース
・2018年3月31日をもって廃止予定

○移籍人材育成支援コース
・2018年3月31日をもって廃止予定

○中途採用拡大コース
・「生産性向上助成」を設け、生産性向上の取組結果を重視した助成となるよう見直されました。

より詳しく改正内容を知りたい方は厚生労働省のホームページにてご確認ください。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金とは就職に必要な経験がない、または就職に活用できるような技能や知識を有していないなどの理由で、安定した就職をする機会に恵まれなかった人材をトライアル雇用する際に受けられる助成金です。

雇用する場合はハローワークなどの求人募集によるもの、そして紹介を得ていることが条件になっています。その他、雇用する人材はその業務に対して未経験であることや、原則として3カ月間のトライアル期間が必要です。対象になる従業員の1週間の労働時間に対しても、通常の労働者より下回らないことなども条件のひとつとされています。

トライアル雇用助成金の活用は、経験がないために就職の機会が限られていた人材を発掘、支援することに役立ちます。

事業主にとってはもちろんのこと、雇用される側にとってもチャンスを得られるのは大きなメリットです。トライアル雇用助成金はハローワークなどで申請ができます。即戦力よりより良い人材を育成したいと考えている中小企業に向いています。(※3)

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、派遣労働者のような非正規雇用の従業員に対してキャリアアップの促進を図った中小企業の事業主が受給できる助成金です。キャリアアップ助成金は全部で8コースあります。
正社員などに転換した場合の「正社員コース」、職業訓練を行った場合なら「人材育成コース」そして賃金規定などの見直しには「賃金規定等改定コース」などです。

その他「賃金規定等共通化コース」や「健康診断制度コース」に「諸手当制度共通化コース」、「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」と「短時間労働者労働時間延長コース」があります。 キャリアアップ助成金は従来、3コースでしたが、2017年4月1日からは8コースとさらに充実しました。
また「人材育成コース」は1事業所1年度の限度額が500万円でしたが1000万円と倍です。従業員のキャリアアップにぜひ活用しましょう。人材育成や健康診断などは企業の業績アップや業務の安定にもつながります。(※4)

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は「キャリア形成促進助成金」という名称でしたが2017年4月1日から名称が変更されました。人材開発支援助成金は従業員に対して職業訓練を行う際に事業主などが受けられる助成金のことです。職業訓練にかかる経費や訓練の間の給与などをまかなうことを目的に支給されます。
経費などを気にすることなく業務に必要なキャリア形成が可能です。 人材開発支援助成金には労働生産性につながる「特定訓練コース」とそれ以外の「一般訓練コース」、「キャリア形成支援制度導入コース」に「職業能力検定制度導入コース」があります。

「特定訓練コース」の労働生産性につながるものとは、熟練技能者による若年労働者への技能の継承などを目的にした訓練などです。
人材開発支援助成金は1年度内に1000万円まで受給できます。(※5)

両立支援等助成金

仕事と家庭生活の両立を支援する会社に助成される制度として「両立支援等助成金」があります。実際に育児休業や介護休業をとる社員がいる場合に利用が可能です。
両立支援等助成金は全部で5コースあります。

・出生時両立支援コース
・介護離職防止支援コース
・再雇用者評価処遇コース
・育児休業等支援コース(中小企業対象)
・女性活躍加速化コース

出世時両立支援コースは、男性社員が育児休業を取得しやすい環境作りに取り組み、育児休業を取得させた事業主にたいして最大で72万円が支給されます。

おわりに

中小企業が活用できる助成金の多くは事業の安定を図りながら同時に従業員も守れるというというものが多いです。
こういった助成金の制度を知らないと知っているでは資金繰りに大きな違いがでてくるのでこまめな情報収集をオススメいたします。
ほかにも事業の拡大や安定に役立つ助成金は数多くあるので、まずは労働局または各都道府県の労働局管内支給申請窓口に問い合わせをしてみましょう。

2018年4月1日より改正が行われている助成金制度もございます。
詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。

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黒沢晃
黒沢晃(助成金コンサルタント)
商社にて新卒採用の人事を担当した後、人材コンサルタントとして企業の人事戦略を支援。2016年から中小企業や個人事業主を対象として助成金を活用した経営サポートに従事。現在は年間100社以上をサポートする。