飲食店の廃業率は1年目で35%、3年目で20%、10年目になると90%にもなると言われています。これは居酒屋を開業する場合も例外ではありません。

居酒屋は、お客様からそれほど料理の腕は求められませんしコンセプトさえ固まってしまえば、言い方が悪いかもしれませんが簡単に始めることができます。

簡単に始められるということは、皆さんにとっても嬉しいことですが、それは競合にとっても嬉しいことなのです。――つまり、非常に激しい競争率の中で始めなければいけません。

――では、失敗しなければどうすればいいのでしょうか?今回は居酒屋の経営失敗談を集めてみましたので、何が失敗の原因だったのか、あるいはどうすれば成功したのかということを分析・検証してみましょう。

失敗談1 – 独りよがりの店作り

多くのお店は、必ず「コンセプト」や「ターゲット」を設計した上で開業します。このコンセプト決めによって、他の店と差別化しその店にしかない価値を作り上げることができるからです。
しかし、このコンセプトを決める時に罠に陥ってしまう場合があります。――ここでは、居酒屋を経営して1年で廃業してしまったAさんの事例をチェックしていきましょう。

Aさんは、「ラグジュアリー」をコンセプトに小汚い居酒屋を嫌う傾向にある女性をターゲットに居酒屋を開業しました。Aさんは10年間板前として修行をしてきたため、料理の腕には自身がありました。

そのため、店の雰囲気を拘って改装し、質の高い料理を提供することで「高級さやラグジュアリーさ」を訴求すれば女性客が集まってくれて、デートで利用してくれるお客様が集まってきてくれると考えたのです。今流行りの「インスタバエ」というやつです。

最初のうちはオープンキャンペーンを行った兼ね合いもあって、Aさんの考えている通り女性客が集まってきてくれました。――しかし次第に客足は遠のいていきます。

食材にも拘っていたので、客足が遠のいてしまうと食材を廃棄しなければならず、これによって急激に経営が傾き始めます。

Aさんは「最初の頃は来てくれていたのに何がいけないんだ」と焦ってしまい、宣伝費や広告費を投下しますが、これがいけなかった。

思ったように客は集まらず、そのまま赤字が続き廃業っを余儀なくされてしまったのです。

何がいけなかったの?

Aさんのお店の場合は、コンセプトを決めるまでは良かったのですが、「オープンしてから来てくれたお客様が継続して来てくれなかった」ことが問題です。

おそらく、お客様としては「ラグジュアリーな居酒屋」という珍妙なコンセプトに魅力を感じて1回は来てみたが、2回目行きたいとは思わないし他人に勧めたいとは思わなかったのでしょう。

――つまり、集まってきてくれたお客様の反応を見て提供する商品を変えてみたり、あるいは価格を変えてみたりする必要があるのです。これはお客様の方を見ずに独りよがりの経営をしてしまうというよくあるパターンです。

お客様が求めるものを提供することを「マーケットイン」といいますが、このマーケットインは「お客様のために…」と心がけていてもできないものです。

どうすれば成功できた?

Aさんの場合は「こういうことしていたらお客様は嬉しいんだろ?ホラホラ…」と言わんばかりに安易な発想だけで経営をしてしまっていたことが問題です。「質が高いものを提供すれば売れる」という考え方ですね。

これは非常に古臭い考え方です。「良いものを作れば売れるから良いものをつくろう」という発送はマーケットインの逆で「プロダクトアウト」と言われています。例えば4Kテレビで大失敗をしたあの家電メーカーもこのプロダクトアウト的な発想でした。4Kテレビの技術がいくらすごくても、世間で多くの人々は「そこまで高画質じゃなくてもいいから安いほうがいいなぁ」と考えていましたね。

それと同じで「どうだ!すごいだろう!買え!」と言わんばかりのマーケティングはモノが不足していた50年前までは一般的な手法でしたが、誰もが充実した生活を送れる現代では流行りません。例えば、都内で一人暮らしをしているお金のない若者に、「ドイツの高級車はすごいんだよ!まずハンドルの重厚感が…」などといくらドイツ車の良さをアピールしても売れないことは安易に想像できますよね?これは独りよがりだからです。この都内で一人暮らしをしている貧乏な若者に対してお金を使ってもらうなら、自動車を売るよりも自転車を売ったほうが良いです。

居酒屋の経営もこれと同じで、そのエリアのお客様が何を求めているのか、その期待に答えるためにはどうすれば良いのかということを綿密に考える必要があります。

Aさんの場合はもっとターゲットを絞り込む必要がありました。――例えば、「背伸びしたいけどバーには入る勇気はない。少しばかり人より稼いでいる26歳のオシャレ好きな独身女性。」これくらいまで細かく絞り込んで良いと思います。

ターゲットが明確になれば、どんな料理が必要なのか、どんな音楽を流せば喜んでもらえるか、どれくらいの価格に設定すればよいか…。というのが明確になります。

失敗談その2 – 働きにくい環境

居酒屋経営では何もお客様の方向だけを向いていれば成功するものではありません。お客様の方向だけを向いて経営することができるのであれば、世のマーケティング担当者はこぞって居酒屋経営に乗り出すことでしょう。

――例えば従業員。従業員は一緒に働く仲間であり、あなたの時間を作ってくれる貴重な存在です。

Bさんは32歳の時に脱サラしてサラリーマン時代に必死になって働いた資金を元手に居酒屋の経営をはじめました。オープンから6ヶ月、これまで奥様と切り盛りしてきましたが、奥様の妊娠を期に、お客様も増えていきていたこともあったので、そのエリアの相場であった1,000円の時給を出してアルバイトを3名雇用することにしました。

3名のアルバイト君は最初のうちはよく働いてくれていたのですが、次第に慣れてくるとバイト中にスマートフォンをいじったりするようになってきてしまいました。これに対してBさんはひどく叱責してしまい、これが原因でアルバイトが2名やめることになってしまいます。「仕方ない。やる気のないやつはどうせこの先も役に立たない」と新たにアルバイトを雇用します。

しかしまた同じことの繰り返し…、慣れてくると業務中にスマートフォンをいじったり、サボったりするのです。「いかにお客様がいないからといって、業務時間中にそれはいけない。」と度々叱責を繰り返していました。

Bさんは思います。「お金をもらって雇われているのに、なんで必死になって働いてくれないんだ――。繁盛店で働けているのはありがたいことじゃないか。俺から経営のノウハウを吸収しようとか思わないのか?」

――その後も繰り返し雇っては辞めて雇っては辞めてを繰り返し、「働きにくい」と評判を悪くしたBさんの店は、繁盛しているにも関わらず廃業してしまうことになりました。

何がいけなかったの?

Bさんは、「金を払っているのだから全力で働いて当然だ」と言わんばかりの態度で、あるいは自分の当たり前を押し付けるかのごとく従業員を指導していました。――しかし、考えてみてください。従業員に支払っている時給はたったの1,000円なのです。

労働者というのは消費者と同じで、色々なことを考えながら働いています。例えば、時給2,000円の割の良いアルバイトなら、勤務時間中にスマホをいじることなく、Bさんの指導に従ったでしょう。しかし時給1,000円そこそこ…そんなアルバイトはいくらでもあります。もしかしたら、Bさんの隣の店舗では、時給1,200円を出しているかもしれません。同じ居酒屋のアルバイトで、時給1,000円でスマホもイジれないのなら時給1,200円でスマホをイジれるアルバイト先を選ぶほうが利口です。

どうすれば成功できた?

経営者というのは、「給料を支払っているから」ということを良いことに色々な要求を通そうとしますが、そんなことをしていては人は離れていってしまいます。

さらにBさんは「ここにいれば経営のノウハウを学べる」なんて自惚れてしまっていますが、世の中そんな意識の高い人間ばかりではありません。それなりの生活を送れればいい…そう考える人が大半なのです。

「そういうハングリー精神を持っていないやつが悪い。皆もっと貪欲に学んで成長するべき」などと従業員の成長を期待する方もいらっしゃいますが、それは経営者の甘えです。

厳しい社会を走り抜けてきた読者などは「バカばっかりで困るよ――。」なんて思われるかもしれないが、愚痴をこぼしている暇があったらそのバカをうまく使う方法を考えるほうが懸命です。いかに従業員が無能でも、結果を出さなければならないのは、皆さんなのですから――。

マネジメントは料理と一緒で、食材の長所短所を活かして最高品質のものをお客様に提供できるほうが優れていると言えます。時給1,000円までしか出せないのなら、時給1,000円分の働きをする人間しか集まりません。優秀で皆さんの思い通りになる従業員を雇用したければもっと高い時給を出すしかないのです。それができないなら、ある程度のサボりは我慢するしかありません。

失敗談3 – 取引先との関係

飲食店では、その店が儲かっているかどうかを測る指標があります。「FL比率」と呼ばれるものがこれにあたります。FLとは、Food(食材)とLabor(労働者)のことを指します。
FL比率とは、材料費と人件費が売上に対してどれくらいの比率かということかを表す指標です。これがだいたい60%程度で推移していればまぁまぁ。50%程度であれば儲かっていると言われています。

この中でも食材費は仕入先によって大きく変動するため、良い仕入先を見つけるためにはそれなりに努力をする必要があります。

Cさんはオープンから3ヶ月で繁盛店を作り上げ、その後も売上を20万円ずつ伸ばす繁盛店でした。――しかし、とある居酒屋経営者の会合に参加した時に、なぜか自分の店の利益が極端に少ないことがわかりました。

Cさんは近所の居酒屋の経営者仲間に相談したところ、どうも仕入額が高いことがわかりました。これを機にもっと良い取引先を見つけようと色々な方法で調査をして良い仕入先に問い合わせてみるのですが、「新規店舗」ということでなかなか取引をしてもらえません。

そのため、高い仕入先を変わらず使い続けざるを得なかったのですが、他の人から話を聞けば聞くほど仕入れ値が高いことを知ることになり、腹が立ってしまったCさんは取引先と度々揉めることになりました。

これによって取引先のネットワーク各所に悪い評判が広がってしまうことになり、新しく取引をするためにさらに不利な状況になってしまいました。

何がいけなかったの?

取引先との関係は、信頼の積み重ねです。

オープン当初というのは、信頼も何もないため、どうしても不利な状況での取引開始になります。先輩経営者に助けてもらいながらなんとか信頼を得ることもできますが、普通は信頼を勝ち取るまでには我慢をしなければなりません。

仕入先、外注先のネットワーク構築は皆さんが想像しているよりも大変です。そして、経営状況に大きく関わってきます。

特に材料については、仕入れることができなければ商売ができなくなってしまいますから、できる限りトラブルは避け、関係構築を努めることが大切です。

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